97―最初の宿泊地
「おお・・・!見えてきたぞ。あれだ!!」
王都を出発して、辺りがすっかり辺りがすっかり夕焼け色に染まった頃、向こうの方にレンガ造りの門が見えてきた。
「ファイセアさん、あれが?」
「ああ。あれが今夜の宿泊地。商人の街、ディーブスだ。」
ふぅ~!
やっと着いたぁ・・・!
お昼ご飯と数回の休憩以外ずっと歩きっぱなしだったから疲れたぁ~。
たった半日くらい歩いたくらいでこんなクタクタになったらこの先ヤバいなぁ。
まだまだだいぶ先があるってのに・・・。
「思ってたより苦じゃない道のりでしたね。」
「またまたぁ~。休憩する度に“もうムリですぅ~!!”って根を上げてたくせにwww。」
「うっ・・・!」
「子どもの足じゃ弱音を吐いてしまうのも仕方ないですよ。逆にここまでよく頑張ったな、ソレット。」
「ノイエフさん・・・!見ましたかヒバナ様!!これが労わりの心というモノですよッッッ!!!」
「ソウナンダ~。オボエトコ~。」
「絶対覚えませんねその口ぶりッッッ!!!」
なんかこのパーティの構図も、徐々にはっきりしてきた感じだなぁ~。
あたしとファイセアさんがまとめ役で、他の三人がドタバタ担当。
ここに来るまでも、あの子らワイワイガヤガヤやってたし。
賑やかになってきた分、段々楽しくなってきたぞ!
「ん?妙だな・・・。」
街の門に差し掛かったところで、ファイセアさんが上を向いて呟いた。
「どうかしたんですか?」
「門の上に兵士がいる・・・。」
見上げると、確かに門の壁に数人の兵士が立っていた。
「それがどうかしたんですか?」
「ここは危険地帯ではない。それ故に余程の有事がない限り兵士に守らせることなどないのだ。」
余程の有事・・・。
「何かあったって、ことでしょうか・・・?」
「まだ分からん。とにかくここで、足を休めよう。」
◇◇◇
街の中に入ってみると、移動式の屋台がたくさん並んでいて、呼び込みとお店に来た人達でかなりごった返していた。
「随分賑やかですね、ここ・・・。」
「ディーブスは王国中の行商人が一堂に会する商業都市だからな。」
「でもこんなに人がいっぱいいたんじゃ、宿なんてとても確保できないんじゃないの?」
「案ずるなヒバナ殿。王府関係者しか泊まれん宿がある。今夜はそこに泊る。」
へぇ~そんなのがあるんだ。
なら大丈夫か。
しっかし、王国のお偉いさんの肩書ってやっぱすごいのな。
こぉんなに人がいっぱいいる街でも難なく泊まれるホテルがあるなんて・・・。
案外、捨てたモンじゃないのかも♪
そんなことを考えてる内に、あたし達は今夜泊まる宿屋に着いた。
3階建ての、ちょっとした屋敷みたいな豪勢な外観だった。
「ようこそお越し下さいました、アサヒ様。それに御一行の方々。」
宿屋に入ると、フロントのホテルマンがお辞儀しながら丁寧に挨拶してきた。
「へっ?あたし?」
「はい。お話は伺っております。今夜はごゆっくり、おくつろぎくださいませ。」
あっ、あはは・・・。
参ったなぁ~!
なんかめちゃくちゃ上客みたいになってるし・・・!
「すまん、宿の者。尋ねたいことがあるのだが。」
「なんでしょうか?」
「何故門に見張りの兵士がいるのだ?もしや何かあったのか?」
「ええ、実は・・・。」
ファイセアさんの質問に、フロントの人は言いづらそうにして答えた。
「先週から、禍犬種に乗った痩鬼種のグループが目撃されてまして・・・現在街に厳戒態勢が敷かれておりまして・・・。」
おっ、痩鬼種!?
こんな人里近くに出んの!?
「あっ、あのヒバナ様?禍犬種って何ですか?」
「禍犬種っていうのはねぇ~馬くらいあるでっ~かい犬でぇ、人間を捕まえて・・・バリバリ食べちゃうんだよぉ~!!」
「ひっ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
「ヒバナ脅かし過ぎ。」
ニタニタしながらソレットを怖がらせるヒバナの頭に、あたしはチョップを食らわした。
「あっ、アサヒお姉様ぁ~・・・。」
「そんな顔してもダメですぅ。怖がらしたそっちが悪いんだから。」
「はっはっは!!ソレット、そんなに怖がることはないぞ。禍犬種なんぞ、所詮は低位の魔物だからな。」
「そっ、そうなのですか?」
「ああ。奴らなんぞ、上位種である“禍狼種”と比べるまでもないからな!」
ソレットを慰めるファイセアさんに、あたしはドキっとした。
だってあたし、飼ってるもん・・・。
禍犬種の上位種を、2頭・・・。
「だが妙だな・・・。奴らがこんな人里近くにまで降りて来るなど・・・。」
「幸いにも、人が襲われたとの報告は入ってませんが、被害を防ぐために彼等が活発になる夜間は街の外に出ることは禁じられています。」
「分かった。よく留意するようにしよう。」
「よろしくお願いします・・・。では、お部屋の方ですが・・・。」
「絶対私達で2人部屋ですよね!!アサヒお姉様♡♡♡」
リリー・・・それフラグだってば・・・。
「ファイセア様とノイエフ様は2人部屋。アサヒ様達は3人部屋ですね。」
ほ~らやっぱり。
「ちょっ、何なのよそれ!?ねぇアンタ!私とアサヒお姉様を一緒の部屋にしなさいよ!!」
「そっ、それでは・・・ソレット様が・・・。」
「この子だったら1人部屋になっても全然寂しくなんかないだろから大丈夫だって!!」
「ひどいですぅ~ヒバナ様!こんないたいけな子どもを一人きりにするなんてぇ~!!」
「アンタ王宮じゃいつも一人部屋だったじゃない!!」
「だから心細いのはもうイヤなんですぅ~!!お願いしますアサヒ様!わたくしも一緒の部屋にして下さい!!」
なぁ~んかわざとらしいけど・・・。
リリーと一緒だったら、事案になりそうだし・・・。
「うん、いいよ。一緒に泊ろ。」
「そっ、そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ソレットが後ろを向いてしてやったりな顔でガッツポーズを見せた時、ただ単にリリーに嫌がらせしたかっただけだと気づいたが、特に何も言わなかった。
だって・・・リリーの方がよっぽどキケンだもん・・・。
◇◇◇
夕刻の森の、陽が一切射さない洞窟で、痩鬼種どもが、冥府の言葉で何やら相談事をしていた。
{なぁ、ホントにやるのか?}
{ああ。ここ一週間走り回ったが、何の収穫もねぇ。このままじゃ、頭にブチ殺されるのがオチだ。}
{だがよぉ、人間の街に潜り込むなんてやっぱり無謀なんじゃねぇか?}
{でもやるしかねぇだろ!テメェは頭に首飛ばされて、犬どものエサになりてぇのか?}
{・・・・・・・。分かったやるよ。やりゃいいんだろ!!}
{決まりだ。じゃあまずはここから一番近い、ディーブスって街だ。そこに入り込む。人間が邪魔してきても構うな。殺せ。}
街を襲うことが決まった痩鬼種は、奥に繋いでいる禍犬種のところまで急いで向かった。
{しかしよぉ、俺達は一体何を探してるんだ?}
{頭も詳しくは教えてくれなかったが、これだけは言ってた。“それを持ってる奴と会えばすぐに分かる”ってよ。}




