表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】吸血鬼の救世主に転生した陽キャ女子が異世界で無双代行する話。  作者: ハニィビィ=さくらんぼ
第三章 : 耳飾りの旅
94/514

94―せめてもの姉心

食事会がお開きとなり、ノイエフさんは酔ってほとんど眠りこけたファイセアさんをおぶって自宅へと帰って行った。


テーブルに突っ伏して寝ていたソレットは、宴会が終わったことを察知して起きると、眠気まなこを擦りながら自分で部屋へと戻った。


残されたあたしは、使用人がゴチャゴチャになったテーブルの後片付けをしないで済むように、魔能で一瞬で広間を掃除すると、同じく残されたリリーを部屋まで送ることにした。


「んんっ・・・。ミラ・・・お姉様・・・♡」


肩を貸したリリーの口元から、ほのかにお酒の匂いがした。


「ほぉら!せめて、自分の足で立ちなさい・・・よねッ!」


「ンハ~イ・・・♡」


ホントに分かってんのかなぁ・・・この子?


とにかくあたしは、お酒でぐでんぐでんになったリリーをどうにか立たせると、一緒に彼女の部屋へと向かった。


「確か・・・あたしの部屋の、斜め向かい、だったよな・・・。」


リリーを支えながら、廊下を歩いて階段を上るには中々にしんどかった。


おまけにこの子、歩いてる途中にあたしの頬っぺたに顔をスリスリしてくるし・・・。


酔ってるとはいえ、いつも以上に甘えが激しくなってる気がする・・・。


まぁでも、あたしは別にヤじゃないからいいんだけど・・・。


そしてあたしは、どうにかリリーを引きずりながら彼女の部屋へと無事到着した。


「あはは・・・。相変わらずすごい写真の数だなぁ・・・。」


部屋に入ったあたしは、ベッドの傍や化粧台の鏡をはじめとして、所狭しと飾られた写真に苦笑いした。


いっつも思うけど、来る度に飾ってるんだとしたら、どんだけ時間がかかってるんだろう?


そんなことを考えながら、あたしはリリーをベッドに寝かすと、そっとブランケットをかけてやった。


「おやすみ、リリー。」


静かにリリーに呼びかけて、部屋を後にしようとしたその時だった。


「・・お姉・・・・。・・・が・・たの・・・。」


彼女が何やら寝言を呟いており、その内容が気になったあたしは、リリーの顔に耳を近づけた。


「ミラ、お姉様・・・。記憶、戻ったの、ですね・・・。嬉しい・・・。」


その言葉を聞いた瞬間、あたしの心がズキっとした。


食事会の席で、あたしが酔っ払って本物のミラみたくなった時に、リリーはポカンとしてビックリしていたけど、とっても嬉しくもあったんだ。


まるであたしが、記憶を失う前のミラに戻ってくれたみたいな気がして・・・。


だけど、どれだけ以前と同じみたくなっても、ミラの記憶が戻ることはない。


そもそもあたしは、この子が好きだった・・・いや、今も好きな本物のミラじゃないのだから・・・。


はぁ・・・。


こういうシチュエーションがある度に、あたしはリリーを・・・みんなを騙している事実を突きつけられて、罪悪感で自分がイヤでイヤで仕方がなくなっちゃう・・・。


・・・・・・・。


・・・・・・・。


ここにいたら、いつまでもブルーになるだけだし、早いトコ自分の部屋に帰ろ・・・。


「むにゃ・・・。」


ん?


「ミラお姉様・・・。これからも、ずっと・・・ずぅ~と一緒、ですからね・・・。」


ッッッ!!


・・・・・・・。


あたしは、リリーのベッドの中に潜り込んだ。


ベッドの中は、リリーの体温の温もりで満たされていて、とても暖かく心地よかった。


「ん・・・?ミラ、お姉様・・・?」


「あっ、ゴメン。起こしちゃった?ねっ、たまには一緒に寝よ?」


「本当・・・ですか?嬉しい・・・!」


リリーは喜びながら、あたしの胸に顔を埋めてきた。


「リリー。」


「はい・・・?」


「あたし、これから何があっても、リリーの傍、絶対離れないから。たとえもし離れたって、絶対・・・絶対リリーのトコに戻ってくるから。」


「・・・・・・・。分かりました!約束、ですよ?」


「うん!任せてッ。」


そうだ。


どんなに罪悪感を感じたって、どんなに自分がイヤになったって、もう本物のミラが帰ってくることはない。


だったらあたしは、自分に責任を感じてリリーを哀れに思うより、本物のミラと同じか、もしくはそれ以上に甘えて来るリリーに負けないくらい、この子に甘えよう。


それがあたしが・・・。


()()()()()()()()()あたしがこの子にしてあげられる、せめてもの“姉”としての役目、なんだから・・・。


だから今日は、この子と一緒に寝てあげよう。


まずはそこから始めてみるかっ。


おっと、そうだ。


「あの、さ・・・。」


「はい・・・?」


「寝てる時に、いかがわしいこと、できればしないでネ・・・。」


「えへへ・・・♡ハ~イ♡♡♡」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ