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【完結】吸血鬼の救世主に転生した陽キャ女子が異世界で無双代行する話。  作者: ハニィビィ=さくらんぼ
第一章 : 救世主の復活
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8―今までにない幸福

「もうすぐです、ミラ・・・さん。そろそろ拠点に着く頃と思います。」


おっ、何とか夜明けまでに着く事ができてよかったっ。


「分かった!早く行って、グレースちゃんのケガ診てもらわなくちゃ。」


「あの、それなんですが・・・」


「ん、どした?」


「もう下ろしてもらって大丈夫、です。」


「ちょっ、ダメだって!あんなにひどかったんだから。」


「いえ実は。もう治ってるみたいなんですけど・・・」


「え?ちょっ、ちょっと待ってね!一旦下ろすから。」


・・・・・・・。


ホントだぁ・・・


すっかり治っちゃってる・・・


「でもどうしてなんだろう・・・吸血鬼ってやっぱ傷の治り早いの?」


「強さや年齢ごとに違って、私はまだそんなにはないはずなんですが・・・あっ!」


「なっ、何?」


「ミラ様の体温には吸血鬼の再生力を飛躍させる効果があるって聞いたことあります。私ずっとミラ様におぶさってたので、それで。」


「そ、ソウナノ・・・?」


「はい。」


なんかもうあたし、何でもアリになってきたんだけど・・・


魔能は使い放題で威力は桁外れ。


攻撃は全く効かない。


まして体温で仲間の傷治せるなんて・・・


もうこの世界であたしって向かうとこ敵なしなんじゃないの?


あれ、でも・・・


・・・・・・・。


・・・・・・・。


じゃあどうして、あの子は死んじゃったんだろ?


こんなにバカ強くて、すごい能力をいっぱい持ってるはずなのに・・・


「・・様?ミラ様?」


「んっ?」


「どうかしたのですか?」


「えっ、いやいや別に。と、とりあえず、もうグレースちゃんは大丈夫ってことなんだよね。」


「はい!治して頂けてありがとうございますっ。」


「別にあたしはなんもしてないってば〜じゃあ早く行こっ。あたしもうお腹ペコペコだよぉ。」


「そうですね。急ぎましょ・・・」


ボォン!!


「うおっ!?」


「きゃあ!?」


ズザザァ!!


「みっ、ミラ様!!ご無事ですか!?」


「だっ、大丈夫!グレースちゃんは?」


「私は大丈夫です!一体何が・・・?」


「多分だけど・・・攻撃された!!」


「そっ、そんな!」


やっと味方がいるところまで来たってのに、なんでこうなんのよぉ!?


でも今はグレースちゃんを守ることに集中しないと・・・


「どっ、どこから?」


「分かんない。グレースちゃんはとにかくあたしの後ろに・・・」


ヒュッ!!


まっ、また来た!!


ッッッ!?


マズッ、このまま行ったらグレースちゃんに当たる!!


「くっ・・・」


ドォン!!


「みっ、ミラ様!!?」


パラパラ・・・


「ふぅ。やっと当たったか。一回目ミスったけど、何とかなっ・・・え、ええ!?」


「ちょ、ちょっとアンタ!!女子に火の玉ぶつけるなんてどういう神経してんの!?」


「おいおい、あんなんまともに食らって無傷なんてふざけてるだろ・・・こりゃ一筋縄にゃいかないみたいだな。」


何なんだろ、コイツ?


声からして男だけどフード被ってて顔が分かんない・・・」


「だが、どいつだろうがこっから先を通すワケにはいかねぇな!!」


バッ!


フードをめくった?


ッッッ!?


こっ、コイツ・・・


「この先にはオレにとって大事なヤツらがいっぱいいるんだ!通りたかったらオレを殺してからにしろ!!」


紅い目に牙!


吸血鬼だ!!


「ちょ、ちょっと待って!!」


「あ!?何だよ!?」


「あたし達もアンタと同じなの!だから手を出さないで!!」


「その目に牙・・・まっ、まさか・・・な、仲間か?」


なっ、何とか分かってくれたみたいで良かった。


「そっ、そうなの!!たがら攻撃すんのは止めて!」


「ん、んん・・・」


あれ、なんか腑に落ちないみたいだけど・・・


「一体どうなってんだよ今日は?さっきもたくさん避難して来たし・・・」


え?それって・・・


「私たちの他にも来た人がいるんですか!?」


「おっ、おう。なんか向こうの収容所から逃げてきたって。」


「そっ、そうなのですか。良かった・・・」


グレースちゃんのお父さん達、無事着けたんだ。


「おい、どうした?」


「あっ、兄貴。なんかコイツ等ここに避難してきたみたいで・・・」


「そうか・・・どうも今夜は避難民が多いな。まぁいいや。とにかくついて来い。食事を用意す・・・ッッッ!?」


「ん、兄貴?」


「あっ、あの・・・何か?」


「おい・・・ウソ、だろ・・・だって、あの人は・・・」


「兄貴、コイツ知ってんの?」


「いやだが間違いない。あの時、エスティレーナ平原の防衛戦でオレらの加勢に来てくれたから分かる・・・」


ガシッ!!


ひゃっ!?


「どっ、どうしたんだよ兄貴!?急に手握って・・・」


「生きていてくれてたんですね!ミラ殿!!」


え?


まさかこの人、ミラ(あたし)と知り合い?


「あなたが人間にやられたって聞いた時、オレ等はどれほど・・・でも・・・こうして・・・また・・・会えて・・・」


こっ、この人今にも泣き出しそうなんですけど・・・


それにめっちゃ手握ってくるし・・・


男の人にこんなに強く握手されたの初めてだから、なんか・・・


めっちゃ・・・ドキドキする・・・


「兄貴、ってことはコイツが・・・」


「コイツとか言うな!オレ等の最後の希望に向かって。すいませんミラ殿、弟が失礼働いて。」


あっ、やっぱりこの二人兄弟なんだ。


どことなく似てる気がしてたから。


「べっ、別に気にしてないってぇ〜さっきも間違えて攻撃されちゃったけどさ。」


「攻撃・・・された・・・?」


あっ、地雷踏んだかも・・・


「ねっ、ネザビぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」


「ちょっ、ちょちょ!兄貴!?」


「お前を今すぐ細切れにしてやらぁ〜!!」


やめたげてやめたげて!!


その人根はすごくいいヤツだからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!




◇◇◇




「なるほど。甦った際に記憶が・・・」


なっ、何とか話ができるとこまで落ち着いてよかったぁ〜


マジで剣抜いて斬ろうとした時は焦っちゃったよ・・・


「では、オレの事も覚えておいででは・・・」


「はい。すいません・・・」


「いえ!そうお気になさらずっ。またこうしてミラ殿とお会いすることが叶っただけでも大変喜ばしいことです!」


ホントみんな優しくしてくれて嬉しいなぁ。


ミラ(あたし)ってやっぱ、吸血鬼の仲間からすごく大事にされてたんだな・・・


「ではっ、改めて自己紹介させてもらいます。オレがこの拠点の防衛責任をさせてもらっている、アドレと申します!で、こっちは弟で門番のネザビです。ほら!挨拶しないかっ。」


「ねっ、ネザビです!さっきは本当すいませんでしたッッッ!!」


「いやいやもういいって!門番としてすごく責任感があってとっても良かったよ。」


「わっ、我々の救世主たるミラ様にそのように言って頂けるなんて、光栄です!!」


「えへへ。ありがとっ。」


なんか、この子ってよく話したら真っ直ぐなカンジがして好きだな。


「じゃあ、あたしからも。ミラです。で、こっちはグレースちゃん。収容所から逃げた後で会ったの。」


「グレースです。どうぞ、お見知りおきを。」


「それで、さっきも行ったとおりあたしが逃したグループの中にグレースちゃんのお父さんがいたってことなんだけど・・・」


「分かりました。では拠点内までご案内します。」


「お願いします!」


ブォン・・・バァン!


地面が!?


これって、石段?


「これが拠点への入り口になります。普段は魔能で隠してるんですが。いざと言う時のために向こうの洞窟にダミーも用意してます。」


徹底してんなぁ。


「どうぞ、お降り下さい。」


カツン・・・カツン・・・カツン・・・


なんかジメっとしてるなここ。


でもなんか雰囲気出てていいかも。


まさに吸血鬼の隠れ家ってカンジで♪


「あとちょっとで中に着きます。」


そういえば、先の方が明るくなってきたような・・・


「あれ、アドレさん?」


どしたんだろ?急に立ち止まっちゃって。


「少しここで待ってもらえますか。」


え、なになに?


もしかして、下でなんかあった!?


「よぉアドレ、どうしたよ?」


下で声がする。


なんか無事みたい・・・


じゃあ、一体・・・?


「いやちょっと。みんな聞いてくれ!ビックリするようなことがあったんだよ!!」


え!?


ちょっとちょっと!!


まさかこれって、サプライズ!?


待って待ってあたしこういうの慣れてないからどうしたらいいの!!?


「またネザビがバカやったとかじゃないよな?」


う〜ん、ちょっと当たってるぅ。


「そんなんじゃないって!ビックリするけどすごく嬉しいことなんだよ!!じゃあどうぞ!来て下さい!」


うわ!マジか!?


どっ、どうしよどうしよ!!?


めっちゃ出づらいけど、ここで出なくてもヘンだし・・・


う〜ん・・・


ええい!もうどうにもなっちゃっえ!!


ダッ!


はっ・・・


何、ここ・・・


岩の壁に家があって、青く、光ってる・・・?


きれい・・・


「そっ、そんなまさか・・・」


「こっ・・・これって・・・夢じゃ・・・」


あっ、そうだった・・・


「いや、みんな!私の言った通りだったろ。ミラ様が・・・救血の乙女が甦りになられたんだ!!」


この人さっきの。


じゃあ、この人が・・・


「ッッッ!!とっ、父さん!!」


「ぐっ、グレース!!」


グレースちゃん・・・お父さんと、もう一回、会えた・・・


「良かった!本当に無事で良かったグレース!」


「ミラ様が、私を助けてくれたの・・・」


「なっ、なんと!ミラ様!私たちだけでなく、娘まで助けてくれて本当にありがとうございます!!」


「いえいえそんな・・・あたしはただ、当たり前のことをしただけで・・・」


パチパチパチ・・・


ん?


アドレさん?


「みんな!今日は今までにないくらい幸福な日だ!ミラ様が戻ってきてくれて、収容所から仲間を助け出したぞ!!」


パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!!


え、ええ!?


「いいぞぉ!ミラ様!!」


「さすが吸血鬼(オレ達)の救世主!!」


「戻ってきてくれて、ありがとう!!」


やっ、止めてよぉ恥ずかしいからぁ〜


でも、なんか・・・


・・・・・・・。


・・・・・・・。


こんなに嬉しい気分になったのは初めてだな。

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