512―月明けに目覚める
むくっと起きると、みんなほとんど半泣きになってあたしのことを見ていた。
「みんな・・・ただいま。」
「たっ、ただいまじゃないよぉ~ミラぁ~!!どれだけ心配したと思ってるの!?急に倒れたと思ったら、中々起きないし・・・!!」
「へ?あたし、どんくらい眠ってたグレースちゃん?」
「2時間34分41秒です。」
「ヒューゴ君すんごい正確に測ってるやん・・・。」
「もうこのままお目覚めになられないと思い、肝が冷えましたぞよぉ~!!」
「ローランドさんガチ泣きじゃん・・・。」
「私はミラお姉様は必ず目を覚ますと信じてましたよ!!だって・・・太ももに・・・ミラお姉様の頬の温もりを・・・確かに・・・♡♡♡」
「リリーは涙じゃなく、なんかヘンな汗かいちゃってるね・・・。」
全くみんな・・・。
揃いも揃って・・・。
やっぱオチオチ日本になんか帰れないなぁ・・・。
「おいおいお前ら。ミラは力を失った反動でぶっ倒れたかもしれねぇんだぞ?だからもうちょっとは安静にさせておけ。現にほらぁ!その髪!!」
「髪?髪がどしたのラリーちゃん?」
「ほれ、見てみ。」
出された鏡に写ったあたしの髪はプラチナブロンドじゃなくて、日本人っぽい黒色になっていた。
「そっか。あたし・・・もう調定者じゃないんだ。」
「黒髪の本体も十分カッコイイ。」
「え~そう?プラチナブロンドのメッシュになってるドッペルちゃんの方がよっぽどカッコイイよぉ?」
ドッペルちゃんは顔を赤くして手をモジモジさせた。
純情かよカワイイな。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「終わったね。全部・・・。」
「はい。」
「ですな!!」
「やっぱりミラお姉様は最強で素敵です!!」
「本体は天下一。」
「私達を・・・吸血鬼を見事救ってくれました。ラトヴァールの女王として、感謝を。」
「ちょっ・・・!!おだてても今のあたしじゃなんにも出ないぞぅ~!?」
気持ち良く笑ってると、ルイギさんが「ゴホン!」と咳払いした。
「あっ、すいません。ちょ~っと気持ちデカくなっちゃいましたね・・・。」
「勝利に酔うのは結構。しかしお前には、まだまだやらねばならぬことが山積みであろう?」
だよね・・・。
こっから人間達と良好な関係を築いてくために先頭に立って働かなきゃならないし、敗戦国のアドニサカ魔政国の処遇についても考えなきゃならない。
戦争を終わらすことと同じくらいに、その傷跡を直していくのは大切なんだ。
だけど・・・。
「まぁ・・・何とかなりますよ。」
「楽観的だな。」
「だってこんなに、いい夜明けを迎えられたんですから。」
「なに?」
「そうでしょルイギさん?吸血鬼にとっては夜は朝。だったらこんなに気持ちのいい朝は今までにないでしょ?ほら。あんなに綺麗な朝日が昇ってるんですから。」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「そうだな。この先のことは分からぬが、景気の良い朝だ。」
「でしょう~♪そいじゃみんな!!」
よっこいしょっと立って、あたしはみんなの方に顔を向けた。
「帰ろ?今後のことはひとまず置いといて!まずは凱旋タイムと戦勝パーティーとしゃれこもう!!」




