489―最終決戦⑦・一般逆転の涙
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「殺せ。」
「「「ヒギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」」」
アクメルの分身たちは、鼓膜が破れそうになるほどの甲高い叫び声を上げてそれぞれ散っていった。
「くっ・・・!全意喪失!!」
ヒューゴ君が自分に向かってきた分身の動きを封じようと精神魔能を発動した。
だけど向こうは止まることなく、突っ込んでいく。
「精神魔能に対する耐性が本体と同じだと!?」
驚くヒューゴ君に分身は右手をブレード状に変化させて斬りかかった。
寸前で回避したけど、ヒューゴ君の立ってた場所に大きな亀裂が走った。
あの切り口・・・まさか・・・!?!?
「突進するしか能のない木偶など恐れるに足らぬわ!!」
ソル・ヴェナが口からビームを吐いて分身を吹っ飛ばそうとする。
すると分身は、ビームの軌道が見えてるかのように綺麗に避けた。
「何!?コイツ・・・獣のような振る舞いなクセに知恵があるのか!?!?」
ソル・ヴェナに向かってった分身も右手をブレードにして、ソル・ヴェナは上に生えてる片方の腕でガードのポーズを取る。
「ダメ!!そのブレードは・・・!!!」
ソル・ヴェナの左腕の一本がブレードによって斬り飛ばされた。
「馬鹿、な・・・!?腕が・・・再生できんッッッ!!!」
やっぱりそうだ!!
あのブレード・・・絶空斬の効果が付与されてるッッッ!!!
本物のアクメルと同じように、共醒状態になってない仲間が食らったら、下手すれば命はないッッッ!!!
「ちっ!っざっけんなよクソったれ!!」
ラリーちゃんは分身と激しく斬り合いをして、それに勝って首を斬った。
ところが分身は、10秒もない内に首を生やして反撃を始める。
絶対回復まで備えてるなんて・・・。
他にもグレースちゃん、リリー、ローランドさん、トヴィリン、リセ、エリガラードの、あたしが提案した作戦に乗った全員が、アクメルの分身たちによって苦戦を強いられてしまっている。
このままじゃ・・・みんな・・・。
「どうしたミラ?早くどうにかしないと、お仲間が殺されちゃうよ?」
アクメルがふざけた態度であたしを挑発してくる。
みんなを助けるためには、まとめて消滅させるしかない。
そのためには、救済神の涙を使うしかない。
でも他の相手ならともかく、アクメルの分身が相手となると・・・。
だってコイツ等は、本体と同威力の魔能が使える。
ということは、あたしが救済神の涙を使ったところで、コイツ等は黒禍で防いじゃう・・・。
実際アクメルは、エボルでの戦いの時にそうやって逃げたみたいだし。
だったら、憤怒よ我にで威力を爆上げして・・・ッッッ!!!
あたしの脳裏に、あの時のトラウマが甦る。
怒りに我を忘れて、何の罪もない人達を殺してしまったトラウマが・・・。
ダメだ。
絶対にダメ。
また憤怒よ我にに手を出してしまったら、同じことを繰り返してしまう・・・。
決めたはずでしょ?
もう二度と誰も殺さないって。
怒りじゃない。
あくまでも使命感に。
みんなを守るために、アクメルを倒さなくちゃ。
救血の乙女・ミラには、できないことなんてないんだろ?
だったら・・・捻り出せ。
このどん詰まりの状況を逆転できる方法を・・・!!
考えろ!!
考えろッッッ!!!
◇◇◇
「どうしたミラ?ひょっとして諦めた?」
下を向いて黙ったままのミラを、アクメルは嘲笑った。
しかし次の瞬間、ミラは覚悟を決めたと言わんばかりの眼光をアクメルに向けた。
「天級第一位・憤怒よ我に・救済神の涙ッッッ!!!」
次の瞬間、ミラの形態が変化し、眩い光に包まれる。
ミラが編み出した、一発逆転の奥の手。
それは・・・史上初の天級第一位魔能の同時発動。
憤怒よ我には天級第一位魔能であるが、発動効果はあくまでも他の魔能にバフをかけること。
別の、それも当該魔能と同位の魔能と併用して発動すれば、効果対象は併用した魔能に全振りされるため、発動者が自我を失うことはない。
よって、使用すべき魔能の効果範囲を絞ることが可能となる。
ミラは第二次ミラ討伐戦の参事を繰り返さないために、威力が高められた救済神の涙の効果範囲を、空中城塞跡地の半径500mに限定した。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」
最上位である天級第一魔能の同時発動による激しい反動がミラを襲う。
だがそれに見合うだけの成果はあり、ミラは同胞に差し向けられたアクメルの分身を全滅させ、アクメル自身もミラの放った攻撃から身を守るべく、最大出力の黒禍を発動したことにより、6割の魔力量を消費することになってしまった。
これで両者の勝負は、数の点だけ挙げればミラの方に天秤が傾いた。




