487―最終決戦⑤・1Lと15秒の賭け
アクメルが下向きに両手を広げると、二つの黒いボールが出現した。
「絶空玉・無弾。」
両手それぞれのボールから、更に細かいのが無限に飛び出してくる。
「脈動の叡智者!!」
あたしはそれを、先読みの魔能を使って剣で次々弾いていく。
おかげで一発も当たらずに済んでるけど、無限湧きしてくるせいでアクメルに中々近づくことができない。
空中城塞での戦いでもそうだったけど、そう簡単にコイツから血を吸えそうにはないな・・・。
アクメルの不老不死に不可欠な時間操作の魔能を奪えば、コイツは一気に押し寄せてくる寿命によって死ぬ。
だけどそのためには当然、コイツの首に噛み付いて、血を飲む必要がある。
問題はそれだけじゃない。
カギとなるのは・・・量と時間。
なんかで知ったけど、人間の総血液量はおよそ5L。
その5分の1。
要するに1L以上の血を失えば、死んでしまうと。
アクメルから全ての魔能を奪う必要はない。
肝心の時間操作の魔能だけ奪えばいいんだ。
だから最高でも1Lの血だけ吸えば十分だ。
だけど時間がネックだ。
カリアード君の血を吸った時のことを思い出す・・・。
人ひとりから全ての血を吸おうと思えば、最短でも1分の時間がかかる。
つまりアクメルを殺すには、あたしが奴の首筋に10秒以上噛み付かなければならない。
最初はそんなにハードルが高いことだとは思わなかった。
だけどコイツとやり合って痛いほど身に染みた。
コイツの間合いに入るには、かなり難易度が高い。
ましてや間合いに入った後で首に噛み付こうともなれば・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
一回のミスも許されない。
最悪向こうに作戦がバレて、あたしに魔能を奪われないような対策を打たれるかもしれない。
アクメルのことだ。
それくらいのことはできてしまうだろう・・・。
あたし一人じゃこの作戦をやり遂げることなんか不可能だ。
とっても悔しいけど・・・。
だけど・・・みんなでならできるッッッ!!!
「どうしたどうした?防ぐだけで精一杯じゃないか。まぁそれも、いつまで持つことやら。」
アクメルがすごくムカつく態度で煽ってくる。
よっぽど自信があるんだな。
「アンタこそいいの!?あたしばっかにかまけてさぁ!!」
「なに?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「スドラ!!頼んだッッッ!!!」
「ッッッ!!!」
「闇へと堕ちろッッッ!!!」
背後に回ったスドラが口からレーザーを吐いて、アクメルの首を吹っ飛ばした。
攻撃が止んだ!!
今だッッッ!!!
血を吸うのに、要るのは首筋だけ。
あたしがヒューゴ君に伝えた作戦。
それは・・・。
あたしを囮に他のみんなでアクメルの視界を奪うッッッ!!!
一番手はスドラだ。
頼むから・・・この一回で終わってッッッ!!!
そう強く願ってる内に、あたしの牙はアクメルの首の、すぐそこまで迫った。




