465―空中城塞攻略⑫・三戦
実際中に入ってみて、一番に驚いたのは空中城塞・・・外と中の比率がおかしすぎる!!
明らか外観の建物に収まりきらないほどに、内部構造が複雑で広い・・・。
「ミラ様。この建物、空間魔能の一種で圧縮空間になっているようです。」
「ああ一目で分かるよ・・・。」
一体どこをどう探したらいいか・・・。
バラバラに行動すんのは当然だけどリスクが高い。
敵は少なくとも、あと3人。
アクメル、ソール、ノイエフ。
それぞれに分かれて敵・・・特にラスボスであるアクメルとかち合ったら、それこそ一巻の終わりだ。
アイツはあたしと同じ❝調定者❞。
アイツとまともに戦えんのは、正直あたししかいない・・・。
となると・・・。
「とりあえず上を目指そう!アクメル達もきっとそこら辺にいると思うから。」
無難な考えに至ったあたし達は、正面の他よりも幅が広い階段を上りだした。
その間あたし達は、軍蟻種とかに遭遇することはなかった。
やはり連中は外の守りに徹しているのか。
となると、中までたどり着いた侵入者を相手すんのはやっぱり・・・。
「ミラッッッ!!!」
そう思った次の瞬間、物理攻撃無効のあたしの顔に何かが当たった。
これは・・・矢?
ってことは・・・!?
「安心しろ。ただの挨拶だ。」
「やっぱりアンタか・・・。裁弓雄ッッッ!!!」
左側に伸びた通路から、弓を持ったノイエフが『コツ・・・コツ・・・。』っとブーツを鳴らしてゆっくり歩いてきた。
「よくここまで入ってきたな。目障りな吸血鬼ども。」
あたしは身構えた。
一時的とはいえ、コイツは第二次ミラ討伐戦で一回あたしを殺したことがある。
油断はできない。
それもあるし、何よりコイツは・・・ファイセアさんとアルーチェさんの仇!!
絶対見過ごすワケには・・・え?
戦う気満々だったあたしを制止するかのように、グレースちゃんが前に立った。
「ここは私に任せて、みんなは先に。」
「ちょっ!?グレースちゃん何言って・・・!!ここは全員でやるべきじゃ・・・。」
「大厄災まで残された時間はもうあまり残ってない。コイツは私は引き受けるからミラ達は行って。」
「でもグレースちゃん!!そいつ強いよ!?一人だけ残すワケには・・・!!」
「私だって十分強くなったよ?その証拠に、400年以上も故郷を奪ってきたコイツより強いヤツ、倒したんだから。見くびってもらったら困るよ?」
自信あり気な笑みをこっちに向けてくるグレースちゃんに応えるために、あたしも腹を括った。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「絶対勝ってよ?先行って始めとくから。」
「うん!じゃあ、また後で。」
グレースちゃんにノイエフのことを任せることにして、あたし達は再び先を急ぐことにした。
◇◇◇
「随分と苛立つことを言ってくれたな。まるで俺が、お前より弱いみたいに。」
「実際弱いでしょ?あなた第二次ミラ討伐戦、私に倒されかけたじゃない?あの時は横槍が入ったけど私・・・その邪魔をしたキイル、倒したんだよ?」
「知っている。それで吸血鬼の国の王になったこともな。ミラの力を間借りしただけで、粋がるなよ?」
「だったら試してみなよ?あなたとやり合うのもこれで3度目だし、いい加減決着を着けないとね。」
「上等だ。ミラとお前に殺された仲間達の仇・・・ここで必ず討ってやる。」
グレースとノイエフは静かに見合った。
暫しの沈黙の後、両者素早い速度で同時に弓を撃つ。
グレースの血の矢とノイエフの魔能の矢が、華麗とも呼べる真っ直ぐな軌跡を描き、激突した。




