462―空中城塞攻略⑨・叡武
エリガラードとソル・ヴェナ達、一体どこから湧いて出たんだ!?
それよりなんでリセが仲間に!?
正体不明の竜種ってなんだ!?
情報量が多すぎだわッッッ!!!
「リリー!!一旦切るわ!何かあったらまた連絡ちょうだい!!」
リリーとの通信をガチャ切りして、あたしはエリガラードに鬼電ならぬ鬼念話をした。
「もしもしエリガラード!?一体何がどうなってんのさ!?!?」
(その元気な様・・・まだ首は繋がっているようですね?)
「余計な一言はええねん!!なしてここに居んの!?つ~かなんでリセや知らないヤツまで一緒なの!?」
(知らない・・・ですか。本人が聞いたら落ち込むでしょうね。いや、無理もありませんか・・・。)
「どゆこと?」
(とりあえずソル・ヴェナをそちらに向かわせます。その方が話が早いでしょう。では。)
「はぇっ!?ちょっ、もしもし!?もしも~し!?!?」
切りやがった・・・。
ソル・ヴェナのそっちに向かわせるって、どういう意味なのさ?
「どうやらわたくしの城に、更なる不埒者が来たようですね?」
はっ・・・!
そうだった!!
今は目の前のキネウラに集中しなきゃ!!
「みたいですね。願ったり叶ったりです。」
ヒューゴ君がキネウラの神経を逆撫でする発言をかました。
「所詮は髪色と力のおこぼれを頂戴した程度・・・粋がらないで下さい。」
キネウラが鎌の持ち手を『ドン!!』っと地面に叩きつけると、大量の軍蟻種が天井や壁、地面からボコボコ這い出てきた。
そして、アリにされた魔能士残り7人も、標的をヒューゴ君に変えた。
「力の差で一気に押し切るつもりですか?いいでしょう。あなたを仕留める前に、風通しを良くするとしましょうか。」
キネウラがパチンと指を鳴らすと、ヒューゴ君に向かってアリ達が一斉攻撃を開始した。
「地級第一位・先ゆく連撃者・七散。」
ヒューゴ君の動きが一気に早くなったと思ったら、剣でアリにされた魔能士7人の首を一気に刎ねていた。
「上手くいきましたね。」
「あっ、あなた!!今のどうやって・・・!?」
「7連撃それぞれを、7人の敵に分散させたのです。」
「7連撃を・・・分散・・・?」
困惑しているキネウラにヒューゴ君は説明を続けた。
「❝先ゆく連撃❞は自信の体内時間を加速させ、相手に連撃を浴びせる魔能。つまり敵の身体に、連撃を浴びせるための軌道を描いてそれに沿って攻撃すること・・・。その軌道を複数の敵、それも急所を繋ぐようにして作成するとどうなるか・・・。同時に等しい速度で複数の敵の各個撃破ができるという原理です。」
ひとしきり説明し終わった後、ヒューゴ君はあたしの方をチラッと見て・・・
「哀れな人間の介錯を、ミラ様にさせることはできませんから・・・。」
ヒューゴ君、あたしのことを気遣って・・・。
しかし、あたしが持ってるはずなのに、あたしですら思いつかなかった使い方を考え付くなんて・・・。
やっぱヒューゴ君・・・応用力半端ねぇ!!!
「ですが、まだ道は開けてませんね。」
ヒューゴ君は右手を横顔に、人差し指をこめかみに当てる形で当てた。
「天級第五位・死の幻・真迫。」
その瞬間、キネウラが呼び出した軍蟻種が、全部地面にへたった。
でもちょっと待てよ。
❝死の幻❞って、疑似的な死を与える魔能じゃなかったか?
でも見た感じ、働きアリ全部・・・本当に死んでるように見えんだけど・・・。
「さすがはミラ様から与えられた力。今までできなかった魔能の対象を寸分の狂い無く絞ることができ、真に迫った死をイメージさせることで、本当に死なせてしまうとは・・・。」
つまりヒューゴ君・・・相手に具体的すぎる死をイメージさせたことで、本物の死ってヤツを与えてしまったらしい。
前に目隠しされた男が、熱したアイロンだと言われてスプーンを当てられたら、本当に火傷してしまった話を聞いたのを思い出した。
いわゆる❝プラシーボ効果❞というヤツだ。
それくらい生き物の錯覚の力はすごい。
それを異世界独自のゴリッゴリのファンタジーで再現されるなんて・・・。
頭がキレる人にものすっごいパワーを与えるとこうなるのね~・・・。
「スゴイ!!」を通り越して「怖っ!!」ってなったわ。
あはは・・・。




