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【完結】吸血鬼の救世主に転生した陽キャ女子が異世界で無双代行する話。  作者: ハニィビィ=さくらんぼ
最終章:無双代行の結末
461/514

461―オルテストの戦い㉔・空中城塞へ

パッと気付くと、スドラとエリガラード達は街の門を抜けた先にある中央街道に転移されていた。


「スドラ様!!エリガラード様!!皆さんッッッ!!!」


手に分厚い書物を抱えたトヴィリンが、皆の方に目に薄っすら涙を抱えて駆け寄ってくる。


「ああ、良かったぁ・・・。皆さん無事で・・・。」


「心配をかけました。あなた達二人も、大変だったみたいで。」


トヴィリンの後ろで身を潜めるリセに、エリガラードは視線を移す。


「勘違いするな。妾が貴様らと手を組むのは・・・」


「❝アクメル(あの男)を倒すまで。❞ですよね?勿論そのつもりです。その後は、いくらでも相手になってあげますよ?」


「我らが勝つのは目に見えておるがな。でもまぁ、ともに戦場で支え合った仲だ。ミラ(我が兄弟)ならいくらか寛大な決着を望むだろう。」


「妾も此度のことで生への未練ができたのでな。そうなることを願おう。」


鋭い眼光で睨み合った後、スドラはトヴィリンに目をやった。


「お前が新しい所有者か・・・。」


「リセさんが、❝自分はそんな物に興味がないからもらっておけ。❞って・・・。」


「ほう・・・。若人に贈り物など、随分と粋なマネをするではないか。」


「深い意味はない。要らぬ物を押し付けただけだ。」


「なるほどぉ?」


ニヤニヤするスドラにリセはムッとした表情をした。


「それで!?これからどうするつもりだ?朽鬼(きゅうき)どもは妾の魔能で全て灰になった。残った魔能士でも片付けるか?」


「いや。オルテスト(ここ)は最早捨て置いてもいいでしょう。」


「何?敵国の首都を野放しにするというのか?」


「この国の政権を担っていた魔首十客(ましゅじっかく)は、全員私達が閉じ込められた異空間で死にました。奥の手だった黎明の開手(ひらきて)の2人も敗死。相手がこれ以上の手駒を用意しているとは考えられません。認めるのは癪ですが、例の2人は私、スドラ、そしてリセ・・・❝始まりの戦い。❞と❝第一次アルスワルド大戦❞を生き残った者達ですら苦戦したのです。何よりオルテストには・・・二度目であり、真の幻想大厄災ファンタズマ・カタストロフィを起こせるだけの魔能の気配を一切感じない。つまりあの男は、最初からここのことなど重視していなかった・・・ということです。」


「エリガラード。ではやはり・・・。」


・・・・・・・。


・・・・・・・。


「私達も向かうべきです。❝空中城塞・ヒメールシタデル❞へ。」


エリガラードの言葉を受け取り、その場にいた全員が覚悟を決めた。


「だがエリガラードよ。空中城塞があるのはアドニサカ魔政国の最西端。今から早駆けで向かっても一日は要すぞ!」


「そこが唯一の問題です。どうしたものか・・・。」


・・・・・・・。


・・・・・・・。


「あっ、あの・・・!!」


「どうしましたか?トヴィリン。」


「この本の中に、一瞬で軍を遠くに行かせられる門が入ってるかもしれません!!」


トヴィリンは急いで魔導書のページをめくって、その門とやらを探し始めた。


「あっ、ありました!!❝遠行きの大門・パルティアーノ❞!!これならここから空中城塞に行けるかもしれません!!」


「トヴィリン!今すぐそれを出して下さい!できますか!?」


「やってみますッッッ!!!」


トヴィリンがページに手をかざして念じると、高さ10mほどの、扉の代わりに鏡が張られた門が、オルテストの中央街道に姿を現した。


「皆さん!!全員門のガラスの前に立って下さい!!」


トヴィリンを先頭に、皆が門のガラスの前に立つと、とある光景が映された。


それは・・・無数の軍蟻種(ハーレンメイル)で埋め尽くされた、ヒメールシタデル城下だった。


「エリガラード様・・・。」


少し不安な表情でトヴィリンはエリガラードの方を振り返る。


・・・・・・・。


・・・・・・・。


「行きましょう。全てに決着を着けに。」


トヴィリンは大きく頷き、先陣を切って門をくぐった。


それに続いて、エリガラード、スドラ、リセ、森精人(エルフ)軍、岩削人(ドワーフ)軍、児鬼種(ゴブリン)軍、魔族軍が一斉に門に向かって飛び込んだ。





◇◇◇





(ミラお姉様!!)


外で戦ってるリリーからいきなり通信が入った。


「なに!?悪いけど今取り込み中なんだわ!!」


(その・・・アドニサカの首都に向かわせていた別動隊が、リセと正体不明の竜種(ドラゴレイス)とともに瞬間移動してきましたッッッ!!!)


・・・・・・・。


・・・・・・・。


は?


え?


おいおい。


あたし等の知らない間に、一体何があったんだよ?

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