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【完結】吸血鬼の救世主に転生した陽キャ女子が異世界で無双代行する話。  作者: ハニィビィ=さくらんぼ
最終章:無双代行の結末
422/514

422―蹂躙、しかして救世主現る。

我がスドラであることと、今目の前に広がるこの惨状・・・。


ここは・・・太古に起きたとされる竜種(ドラゴレイス)森精人(エルフ)の大戦の只中だというのか!?


かつてこの世界は、我々竜種(ドラゴレイス)の手中だった。


そこへ森精人(エルフ)司魔人(ウィザード)という、滅びた別の世界からの来訪者が現れ、奴等を異端だと見なし、排斥・・・この場合は駆逐と言うべきか。


それに動き出した竜種(ドラゴレイス)と、それに抗う森精人(エルフ)達により、戦が巻き起こった。


❝始まりの戦い❞。


知られた名は・・・❝竜精(りゅうせい)大戦❞。


そして竜種(ドラゴレイス)を率いていたのは、全ての竜の王・・・。


界王竜(かいおうりゅう)・スドラ❞。


ということは、これはかの竜の記憶か?


何故我は、そのような物を見ている?


当惑する我の背後から、我・・・いや、スドラの命を受けた同族達が、我先にと森精人(エルフ)軍に襲い掛かった。


地を割り、稲妻を降らし、炎を巻き起こし、竜種(ドラゴレイス)森精人(エルフ)を蹂躙し尽くした。


それはさながら、巨躯を持つ獣が、地を這う小虫を蹴散らす様に似ていた。


「此度の戦いも、竜種(我ら)の勝ちのようですな!!」


「そうだな。いずれ奴等を最後の一匹まで殺し尽くす日も近いやもしれんなぁ?」


心苦しさとは裏腹に、口から笑みが零れる感触が確かにする。


叶うならば、今すぐ奴等にこの虐殺を止めさせたい。


しかし、これはあくまで記憶。


即ち遠い過去に起きたこと。


今の我には、どうすることもできぬ。


ただ事の顛末を、見送るしかない・・・。


クソッッッ!!!


このような惨憺たる光景を見せたりして、一体何が望みだ!?!?


「ッッッ!!!スドラ様!!あれは・・・!!」


傍らで控える配下の者が、突如として慌てたのでスドラは視線を下にやった。


見ると先程まで優勢だった竜種(ドラゴレイス)達が、悉く斃されている。


奴等の相手をしているのは・・・たった一人の、森精人(エルフ)だった。


弧を描きながら空を駆け、己よりも遥かな巨体を持ち、無慈悲たる竜を屠るその姿には、そこはかとない美を感じた。


あの森精人(エルフ)・・・まさか・・・!?


「これは面白い。」


「スドラ様?」


「耳長虫にあれほどまでの力を持つ者がいたとは・・・。どれ。我が直接出向いてやろう。」


「スドラ様ッッッ!!!」


配下に全く耳を傾けず、スドラは地上へと降り立っていった。


さすがは他の同族を上回るほどの、山のような身体だ。


地上に降りただけで地響きがする。


()()で敵の総大将と出くわすとはね。運がいいのか悪いのか・・・。」


「これが今日初めて戦場に出向いた者の芸当か?洒落も大概にした方が身のためだぞ?」


「生憎、俺は洒落が苦手でね。笑えない冗談を言っては親をよく怒らせたよ。」


飄々と自嘲するこの男に、我は好感を持てた。


それはスドラも一緒だったか・・・いやまさかな。


「不本意だが、興味がそそられる奴だ。虫の名など気にしたことはないが特別だ。貴様の名だけ知っておいてやる。」


・・・・・・・。


・・・・・・・。


「俺はヴァリエル。覚えていてくれると嬉しいね。竜の王様?」


真ん中で束ねた()()()()()()()()の長髪を風になびかせ、若き森精人(エルフ)の男は名乗った。

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