321―第二次ミラ討伐戦㉜・力欲
殺す。
必ず殺す。
あたしの大切な友達、仲間を大勢殺したコイツ等のことは、絶対に許さない。
だけどそのためにはどうしても必要なモノがある。
そう。
力だ。
今のあたしの実力では、コイツ等を皆殺しにするのは少し難しいだろう。
確実に。
100%の確率でコイツ等を殺せるだけの力を手に入れないと。
違う、欲しい。
何が何でも。
でもどうしたらいいか・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
いや。
いるじゃないか。
ちょうどいいのが。
「おい。そこの鎧。」
あたしが鎧を着こんだエスプに話しかけると、奴はそれに反応した。
「何だ?」
「ウチの大事な友達、ずいぶんと世話してくれたみたいじゃんか?全部知ってんだよ。」
「だったらどうした?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「まずはアンタから。たっぷりお礼してやるよ。」
鎧のせいで顔は見えなかったけど、どうやらエスプは笑ってるようだった。
「ほら?どうした?そんな鎧脱いでとっととかかって来いよ?アンタの好きな強いヤツが目の前にいんぞ?」
「くっ・・・。くくっ・・・。ふははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
兜でくぐもったエスプの笑いが辺りに響いた。
「よかろう!!格下の相手にはウンザリしていたからな!!“救血の乙女・ミラ”!!お前に拙者の全てをぶつけるとしようッッッ!!!天級第二位・狂昂する命ッッッ!!!」
エスプが詠唱した途端、奴の鎧は一瞬でバラけ、中から傷だらけで腰身の一枚だけを着たエスプが現れた。
「っしゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!やってやるぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!ミラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
エスプは“強者敬殺と彫られたダガーナイフを振りかざしてこっちに向かってきた。
バカなヤツ。
まんまと引っかかった。
「ッッッ!!!ミラから離れろ!!エスプぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」
ジョルドがあたしの作戦に気付いたようで声を張り上げてエスプを制止した。
でももう遅い。
エスプのダガーナイフはあたしの鎖骨辺りに当たった。
傷を全く付けずに・・・。
「ああっ!?何だよこりゃ!?!?」
「こんなモン?アンタの本気ってのは?じゃあこっちは5割の力でいかせてもらうわ。」
そう言うとあたしは、エスプの横っ面を思いっきりグーパンを入れ、奴を吹っ飛ばした。
「ぐふぅ・・・!?」
「まだまだ行くよぉ!!」
宙を舞っているエスプの胸倉を掴むと、身体中をボコボコに殴り続けた。
「ごふっ・・・!?ごほっ・・・!?ぐぎゃ・・・!?」
殴られる度にエスプは苦しそうな声を出したけど、あたしは何だかそれが面白くって笑いを堪えるのに必死だった。
「ごふっ・・・!ぶふっ・・・!」
血を吹きながらエスプの頭はだらんと後ろに垂れた。
「あらら。みっともない姿になっちゃって~♪」
「こっ・・・!!!クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
絶叫しながらエスプはダガーナイフであたしの顔を斬ろうとしたけど、あたしはそれを歯で止めて刃を噛み砕いた。
「鉄くさっ。」
「あっ・・・!!ああっ・・・!!」
ダガーナイフを噛み砕いたあたしにエスプは恐怖に歪んだ表情を見せた。
あたしはエスプの顔に自分の顔を、ほぼゼロ距離かってくらい近づけた。
「アンタのその魔能、天級だけど効果は自分の戦闘力を生きてる間高まり続けるってのでしょ?つまりアンタの戦い方は、ダガーを使っての単純な斬りつけ。つまり物理攻撃が効かないあたしには意味ないってワケ。アンタはあたしと戦うことをずっと楽しみにしてた。だけど最初から同じ土俵に立つことするできなかったってこと。どう?悔しい?」
「ひっ・・・!!ひぃ・・・!!」
恐怖に歪むエスプに対し、あたしはさっきとは違い低い声でこう言った。
「あたしの仲間を傷つけたお前の魔能、あたしのために有効活用させてもらう。」
あたしはエスプの首筋に牙を突き立てると、奴の血をジュルジュルと吸い始めた。
「やっ、止め・・・!!許・・・して・・・!!」
足をバタバタとさせて必死に抵抗するエスプだったが、段々力が無くなっていき、ついにはだらんと動かなくなった。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「まずっ。」
あたしは全身真っ青になったエスプの死体を放り投げて、後ろにいる他の奴らを睨みつけた。
「よし。次はテメェらな?」




