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【完結】吸血鬼の救世主に転生した陽キャ女子が異世界で無双代行する話。  作者: ハニィビィ=さくらんぼ
第五章 : 救世主と英雄
306/514

306―第二次ミラ討伐戦⑰・同舟

敬殺雄(けいさつゆう)・エスプ=ドーレア=イゴス”って、確かトヴィリンやリセと同じく、黎明の開手(ひらきて)に新しく入った人間・・・。


何でそんな奴が、私達のところに?


まっ、まさか・・・!!!


私の脳裏に、恐ろしい考えが浮かび、視界がグラついて息遣いも荒くなる。


「貴様、ミラをどうした?」


ソル・ヴェナ様は、私がこの男に一番聞きたい質問を先にした。


・・・・・・・。


・・・・・・・。


「死んだ。」


エスプの口から出たのは、最も恐れていた答え・・・。


ミラ様が・・・死んだ・・・?


そっ、そんな・・・。


「ミラ・・・様・・・。」


グラついていた視界が一気にグニャリと曲がり、私は一気に足の力を無くし、その場で倒れそうになった。


「お前の申すことに嘘偽りはないようだな。でもまだ、()()()()()()()のだろう?」


ソル・ヴェナ様がエスプに投げかけた問いを聞いた瞬間、失っていた足の力を取り戻すことができて、どうにか踏ん張ることができた。


「何故そう思う?」


「もしお前達がミラを完全に殺すことができたのなら、我らの相手などせず早々に立ち去っていればいいもの・・・。しかしお前達はまだこの国に留まっている。それはつまり、ミラを殺すことはできた。しかし奴の脅威が、完全に過ぎ去った・・・ということではないのであろう?」


「その通りだ。」


エスプはソル・ヴェナ様の洞察力に関心したような声色で答えた。


「導主様の力によって、ミラをどうにか()()()()()()()()には保っている。だがひとたびそれが破られれば・・・ミラは息を吹き返すことだろう。」


つまりミラ様には、まだ復活の兆しがあるということ・・・。


これは・・・今までにない朗報だ!!


私の心の奥底から、戦う意思が再びみなぎってきた。


「しかしよく見抜いたな。」


「当然だ。我が兄弟(はらから)が、貴様らの如き矮小な寄せ集めに負けることなど、天と地が逆転しようが起きまいて。」


ソル・ヴェナ様は最初から分かってたんだ。


ミラ様が、黎明の開手(コイツ等)なんかに敵うはずがないって・・・。


それだけあの方のことを信じてるんだ。


友として・・・仲間として・・・。


「それで?先程貴様は、この我と手合わせしたいと言っていたが・・・二言はないな?」


「ああ。竜種(ドラゴレイス)と戦う機会など、おそらく生涯かけても巡らぬだろうからな。むしろ胸の高鳴りが止まらんよ。」


・・・・・・・。


・・・・・・・。


「いいだろう。我も人間と戦うのは久方振りだ。この時代の人間(貴様ら)がどれほどの技量を持っているか興味が湧いた。」


「感謝する。ではその吸血鬼の娘から離れて、早速始めるとしよう。」


「よかろう。」


ソル・ヴェナ様がエスプの申し出に異議を全く出さなかったことに、私は慌てた。


「まっ、待って下さい!!私も一緒に・・・!!」


「グレース!!」


ソル・ヴェナ様は私の名前を強く呼んだ後、私に向かって耳打ちをしてきた。


「この人間の実力・・・先程戦った魔獣使いとは比較にならんだろう。この戦いでは、お前を守ってやれる自信はない。」


「だから・・・置いていけってことですか・・・!?」


ソル・ヴェナ様は無言で頷いた。


・・・・・・・。


・・・・・・・。


「嫌です・・・。」


「グレース・・・。」


「ソル・ヴェナ様を置いていくなんて絶対に嫌!!あなたはミラ様の大切なご友人です!!だから・・・誰かが一緒に居てあげないといけないんですッッッ!!!」


ここから離れることを断固として拒否する私に、ソル・ヴェナ様は困惑した表情を浮かべた。


その時だった。


「なら君の役割、僕達で代わってあげようか?」


ハッと上を見上げると、二つの人影が屋根から飛び降りてスタっと私達の前に降り立った。


「アウレル様!!ローランド様!!」


「グレースはミラ様に似て、中々強情だな!!強固な意思を持つのは美徳!さりとて時には、誰かに役者を譲る心構えも必要だぞ!?」


「ローランド様・・・。」


「ソル・ヴェナ様を守りたいと思うのは君だけじゃないよ?だって彼はミラ様・・・僕達の大切な人なんだからね。」


「アウレル様・・・。」


二人に説得され、私は決心を固めることができた。


「アウレル様、ローランド様・・・。ソル・ヴェナ様を・・・どうかよろしくお願いしますッッッ!!!」


深々と頭を下げる私に、二人は大きく頷いた。


そして私は、早々にその場を後にするのだった。


3人の無事を心から願って・・・。





◇◇◇





「お前達に果たして我と同じ舟に乗るだけの力があるのかな?」


「見くびらないでくれまいか!?ソル・ヴェナ殿!!」


「そうですとも。あなたが兄弟と慕うお方の臣下の実力・・・とくとご覧下さい!!」


素晴らしい意気込みを見せ、吸血鬼の救世主最強の近衛兵の二人は、目の前の敵に向け、己の血から作った武器を構えるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 洞察力は予言並みの精度か。 竜種と戦うことを嬉しく思ってる人vs竜種&アウレル&ローランドの戦い。 熾烈だなこりゃあ。
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