30―ステラフォルト陥落戦③
「これで・・・これで、アイツをッッッ!!!」
「うわああああああああああああああああああッッッッッッッッッ!!!!・・・・・・・。なぁ〜んちゃって♪」
「えっ?」
カチ・・・カチ・・・カチ・・・
「何?時計の・・・音?」
カチッ!!
◇◇◇
「天級第五位・フォーリング・プロミ・・・」
ドスッッッ!!!
「うっ・・・!!かはぁ!!?」
ドサッ・・・
「ごほっ!ごほっ!あんな大声出したのいつぶりかなぁ〜?フリだったとはいえ、喉に結構キタなぁ〜。」
「はっ・・・はっ・・・はっ・・・」
「あはっ!その顔、“どうして!?何で撃つ前に戻ってるの!?”とかなんとか思ってるでしょ〜♪それはね、ボクがこの世界の時間を丸ごと30秒前に戻したからなんだよっ!」
「ひゅー・・・ひゅー・・・」
「天級第三位魔能・世界刻限叛逆。時を統べるボクが編み出した魔能の中で最高峰の代物さ!!見て分かった通り、この魔能の威力は絶大だよ!何せ、救血の乙女を倒すのにものすごく役立ったんだから♡」
「ッッッ!!くっ・・・あっ・・・ああ・・・!!」
ザシュッ!!
「ぐあっ・・・!!?あ゛あ゛あ゛あ゛・・・!!」
「心臓に剣ブン投げられてんのにまだ何かしようってんだから君も相当諦めが悪いよね〜。でもさすがに利き腕斬り落としたからもう何もできないか・・・」
「はっ・・・はっ・・・」
「そういえば、君のだぁいスキなミラも殺される寸前まで戦おうとしたから、君らってホントよく似てるよね〜♪まっ、あっちはそん時に近づいたボクの仲間殺したから、それに比べて君はまだまだってことかっ!」
「はっ・・・み・・・ミラ、おねえ、さま・・・」
「それじゃあね。あっちで愛しのミラお姉様と仲良くやるんだよ!」
◇◇◇
「・・・ラ様!ミラ様ッッッ!!」
「あれ・・・?ヒューゴ、君?」
「ミラ殿!!しっかりしろ!何があった!?」
「イヴラヒムさん?どうして、ここに?」
「ステラフォルトの方で唯ならぬ魔能の発動を感じて大急ぎで来たのだ。それよりミラ殿こそ、リリーナと一緒ではなかったのか!?」
「はっ!そうだ!!リリーナちゃん、あたしをここで眠らせて一人で、向かったんだ・・・!!」
「なに!?アイツ、単騎で乗り込んだのですか!!?」
「ヒューゴ君!!急いであたし達も行かないと、リリーナちゃんが・・・!!」
ブォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!
ブォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!
「ッッッ!!この音は、ステラフォルトの城笛!!」
「ヒューゴ君ッッッ!!」
「はいッッッ!!直ちに参りましょう!!!」
◇◇◇
タッ、タッ、タッ、タッ、タッ・・・!!!
「こっ、これは!?」
「はぁ〜い!下賤な吸血鬼軍の皆さんこぉ〜んにぃちわぁ〜!!ボクは黎明の開手のルゼア・デニウイド・ヴァーキリーでぇ〜す♪」
「黎明の、開手、だと!?何故そんな大物がここに!!?」
「いや〜たまたま仕事でこの近くに来たらどうも君たちがよからぬことを企んでいるらしいから、せっかくなんで君たちを殲滅するための軍でお出迎えにしにきたってワケ。裏門からってなのがちょっと失礼だったらかな?」
「りっ、リリーナちゃんは・・・リリーナちゃんはどうしたのッッッ!!?」
「ああ、あの子?一人で先に来たから、ボクが直々にもてなしてあげたよ!あっ、今一緒にいるから会わせるよ♪ほらっ!」
「「「ッッッ!!!」」」
「・・・・・・・。リリーナ、ちゃん・・・?」
「まぁ残念なことに首だけになっちゃったからもうお話することはできないけどね、ははっ。」
ポイッ!
ゴロゴロゴロ・・・
「リリーナ・・・」
「なっ、なんて、ことを・・・」
「リリーナ、ちゃん・・・リリぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!」
「「ミラ様(殿)!!」」
「リリー!!お願い!!返事をしてッッッ!!!お願いだから目を開けてッッッ!!!待ってて!今治すから!!全回復ッッッ!!!」
・・・・・・・。
「なんで・・・?なんで治らないの・・・?もう一度・・・全回復ッッッ!!!」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「どうして・・・どうして魔能が効かないの・・・?全回復!!全回復!!全回復ッッッ!!!治れッッッ!!!治れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!」
「もう〜何やってんだよぉ〜。首に回復魔能かけてもムダに決まってんじゃ〜ん!」
「はぁ・・・!はぁ・・・!・・・・・・・。」
「あっちゃ〜!君もしかしてこの子のファンかなんか?いや、救血の乙女に格好似せてるから一緒に好きにだけになっただけか。だとしたら悪いコトしちゃったね。ゴメンゴメン!」
「・・・・・・・。」
「あり?だんまり?そんなにショックだった?だとしたら安心して!君の尊敬するお二人さんのいるところまで、ボクがすぐに送ってあげるからさ!」
「・・・が、やったの?」
「ん〜?なんだってぇ〜?」
「アンタがやったの、コレ?」
「そうだよ!まぁ大したヤツじゃなかったけどね♪」
「許さない・・・」
「なに?」
「絶対に、許さない・・・殺す。お前を必ず、殺す・・・」
「殺すって、君ただの吸血鬼でしょ?そんな君になぁにができるのかな?」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」
ドォンッッッ!!!
「うっ!?」
「みっ、ミラ殿!?」
「こっ、この尋常じゃない気配・・・イヴラヒム様!!急いで兵を出来るだけ遠くに逃して下さいッッッ!!!」
「ヒューゴ!どうしたというのだ!?」
「ミラ様は、アレを使う気ですッッッ!!」
「まっ、まさか・・・!!全軍急いで退避するのだッッッッッッ!!!!」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「ルゼア様!!早くお逃げ下さい!!アイツ、ただの吸血鬼じゃありませんッッッ!!!ルゼア様ッッッ!!!」
「こっ、この気配・・・。そんな・・・。アイツは確かに・・・みんなで・・・殺したはずなのに・・・」
ゴォォォォォォォォォォォォォォォ・・・!!!!
◇◇◇
「それでは今日の鍛錬はこれで終わりましょう。」
「アーさん、ちょっといいかな?」
「何でしょうか?」
「スクロールに書いてる魔能一覧にさ、なんかバチくそカッコいいのがあったんだけど。」
「どれですか?」
「これなんだけど・・・」
「ッッッ!!こっ、これは・・・」
「ねぇ!これってどんな効果あんの?何だったらここでちょっと使ってみてもいい!?」
「いけませんッッッ!!!絶対になりませんッッッッッッ!!!!」
「ちょ!?なになになになに!?痛いって!そんなキツくホールドしないでって!!」
「ああこれはッ!申し訳ございません・・・」
「もう〜何をそんなに慌ててんのさ〜?」
「その魔能は、かつてミラ様が幻想・大厄災を生き延び、地底深くに潜んでいた、“冥府の王”と呼ばれた大悪鬼の血を吸って手に入れた魔能です。これを一度発動すれば、地上のありとあらゆる物を焼き尽くしてしまいます。」
「そっ、そんなに物騒なの、コレぇ?」
「ええ!ミラ様は、以前怒りに囚われこの魔能を一回だけ行使したことがありました。その結果、当時一大勢力を築いていた人間の大国を、たった二時間で滅ぼしました。」
「にっ、二時間!!?」
「ですからこの魔能だけは、何があっても絶対に使わないで下さい!!」
「あったり前だよッッッ!!誰が好き好んでこんなエゲツない技使うんスかッッッ!!」
◇◇◇
ゴォォォォォォォォォォォォォォォ・・・!!!
「ミラ様!どうか怒りを鎮めて下さい!!このままではあなたは、地上を焼き尽くすまで止まりませんッッッ!!!」
「もういいよ、それで。」
「なっ・・・?」
「もうどうなったっていいんだもん。あたしも、みんなも・・・」
「ミラ様・・・」
タッ、タッ、タッ、タッ・・・!!
「ミラ様ッッッ!!」
「ッッッ!!グレース殿!来てはいけない!!急いで逃げるんだッッッ!!!」
「ミラ、様・・・?」
キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!
「みっ、ミラ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
◇◇◇
んっ、何この魔能!?
めっちゃカッコいい名前じゃん!!
あ〜これの使い方すごく気になるぅ〜!
明日アーさんに聞いてみるかっ。
でもちょっとなんか厨二クサイかも・・・
これ口に出すの中々勇気いるなぁ〜
う〜ん・・・
口に出すだけなら多分問題ないから今の内にフレーズに免疫付けとくかっ!
おっ、オホン!
では、言わせて頂きます!
せ〜の!!
◇◇◇
「天級第一位・冥王の降臨。」
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!
その夜、人間軍が誇る鉄壁の要塞・ステラフォルトは、途轍もない怨嗟によって生み出された、全てを焼き尽くして拡がり続ける黒き炎に呑み込まれたのだった。




