295―第二次ミラ討伐戦⑥・発輝
キイルが放った雷を帯びた3本の竜巻があたしに真っ直ぐ向かってくる。
炎魔能でアレを消そうにも、ここはもはや彼女の魔能でスコール状態だ。
だったら・・・。
風には風で対抗するしかないッッッ!!!
「地級第一位・風刃の猛進!!」
風の刃を纏ったおかげで、キイルが差し向けてきた雷入りの竜巻は打ち消されていく。
あたしはそのまま自分を守りつつ、風を発生させているキイルに突進した。
「うおりゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
「天級第四位・風神の大息♪」
キイルが手をかざすと、風の刃のシールドでも防ぎ切ることができない巨大な風の渦が、あたしに向かって発射された。
「ぐはぁ・・・!!!」
あたしが吹き飛ばされた直後、キイルは間髪入れることなく指を鳴らした。
次の瞬間、横殴りに降り続ける雨が、まるで石の塊のように固くなり、弾丸の如く降り注いだ。
「天級第三位・降り穿つ雨弾♪」
「くっ・・・!!球形防壁ッッッ!!!」
寸でのところで防壁魔能を展開させたが、降り続ける無数の雨の弾丸で、防壁はいつまで持つか分からない。
「これくらいの・・・ことでぇ・・・!!!」
ヒビ割れしたところを修復しながら何とか耐えようとするあたし。
しかし、外部からの激しい衝撃で、突然防壁は破られてしまった。
「なっ・・・!?ジョルドッッッ!!!」
ジョルドが防壁を破ってあたしを殴り殺そうと向かってきた。
なんで!?
なんでこんな雨の弾が降る中動けんの!?!?
その答えは、キイルにあった。
手先を微かに動かしてる・・・。
そうか!!
雨の軌道は向こうで微調整できるんだッッッ!!!
なんて器用なマネができるヤツ・・・!!!
天候を変えるだけでなく、それらを自由自在にコントロールできるキイルのスキルの高さに、あたしは激しい憤りを覚えた。
と、次の瞬間。
あたしの足にどっからか伸びた鞭が絡みついて、動きを封じられた。
「なっ・・・!?!?」
鞭の伸びた先を見ると、あたしの動きを封じたのはエスプだった。
「今だ!!やれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
ハッと上を見ると、拳を振り上げたジョルドと、冥府の炎の剣を持ったリセが、あたしに向かって真っ逆さまに落ちてくる。
「天級第三位・地を砕きし戟打!!」
「天級第五位・冥炎円月薙ぎ!!」
どっちも天級魔能!!
当たったら・・・死ぬッッッ!!!
あたしは急いで鞭を斬って脱出したが、避け切れなくて背中に大きな斬り傷を負い、背骨も砕けてしまった。
「がぁぁ・・・!!!」
激痛を必死に堪えるあたしに、エスプ、ジョルド、リセ、キイルがゆっくりと近づいてきた。
「はぁ・・・!!はぁ・・・!!はぁ・・・!!」
「お前ももはやこれまでだ、ミラ。」
「中々に戦い甲斐があったぞ。」
「あの世で父上に詫びることだな!」
「よく頑張ったわね♪エラいエラい!!」
4人が口々に思ってることを言ってくる。
「はぁ・・・!!はぁ・・・!!アンタ達さぁ・・・なんか勝った気でいるみたいだけど、そんな態度取られるとこっちもムカつくんだよねぇ~・・・。」
「ほう・・・。となれば、お前にこの窮地を乗り越える算段はついている、ということだな。」
「あったり前じゃん。あたしを誰だと思ってんの?」
背中の傷を治したあたしは、カッと目を見開いて、4人の顔を見た。
ただならぬオーラを感じて、後ずさる4人。
「天級第二位・脈動の叡智者。」
その瞬間、あたしに4人のことが手に取るように分かった。
「救世主舐めんな。」
4人の行動パターンを全て見切ったあたしは、まず一太刀目でエスプの頬をブッ飛ばし、続くパラーネオの光が付与された二太刀目でリセの胴体を真っ二つにし、更に三太刀目でキイルの両腕を折り、そのままジョルドと激しい打ち合いを開始した。
「くそッッッ!!!くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
一気に三人も撃破され、反撃しようにも手の内を全て読まれて全く拳を打ち込めず、ジョルドは激憤の叫びを上げた。
やっぱりそうだ。
あたしは、この世界屈指のチートキャラ。
吸血鬼の救世主。
救血の乙女・ミラだ!!
あたしなんかにかかったら、こんな寄せ集めの最強キャラ達なんか敵じゃない!!
コイツさせ倒せば、後はNo.2のソールとリーダーのアクメルの二人だけ!
イケる・・・!!
この戦い・・・あたしの勝ちだッッッ!!!
あたしの勝ち・・・
「天級第三位・叛因果の絶矢。」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「え・・・?」
胸に違和感を感じた直後、激しい痛みが襲ってきて、下を向くと・・・心臓に藍色に光る矢が刺さっていた。
あたしがゆっくり後ろを振り向くと・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「なん、で・・・?ノイ、エフ・・・。」
そこには、同じく藍色に光る弓を構えていたノイエフが、すごく満足した笑みを浮かべながら立っていた。




