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【完結】吸血鬼の救世主に転生した陽キャ女子が異世界で無双代行する話。  作者: ハニィビィ=さくらんぼ
第五章 : 救世主と英雄
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291―第二次ミラ討伐戦②・打堅

ソル・ヴェナを逃がして、一人で黎明の開手(ひらきて)に挑むことになったあたし。


「どうした?誰からでもいいよ。何ならまとめてかかってきたって・・・」


「いや、それはやめておく。」


「は?」


「正直なところ、僕達はまだ、生き返ったお前の実力を正確には見極められていない。戦った者がいないからね。」


「へぇそう。そこのリセだったら分かんじゃないの?今のあたしがどんだけ強いか。」


あたしが視線をチラッと向けると、人間の身体に受肉したリセは眉間にシワを寄せて睨みつけた。


「マースミレンでのお前とリセの戦いなら当然知っている。だけど僕としては、実際にこの目で見ないと納得できない。」


「“百聞は一見に如かず。”ってヤツね。中々いい性格してんじゃん。」


「ありがとう。」


あたしの評価に、アクメルはペコリと頭を少し下げた。


「で、どうすんの?リーダーさん。誰を()()()にする?」


「嫌な言い方はやめてくれよ。ただ、そうだな・・・。ジョルド、エスプ。小手調べ、頼んだ。」


「分かりました、導主様。」


「有難きご采配、感謝いたします!!」


アクメルの指示の下、二人の男があたしの前に出てきた。


一人は薄着で、いかにも肉弾戦が得意そうな若い男。


そしてもう一人は正反対の、全身フルアーマーな奴。


アルーチェさんとトヴィリンから仕入れた情報で、誰なのか見当は付いている。


地撼雄(ぢかんゆう)・ジョルド=ネイヴ=リスティ”と“敬殺雄(けいさつゆう)・エスプ=ドーレア=イゴス”。


ジョルドの能力は知っている。


何せアルーチェさんと同じ、前回のミラ討伐戦の生き残りだから。


でもエスプの能力は知らない。


トヴィリンとリセと一緒に新しく加入したメンバーだから。


となると、まず戦うべきは・・・。


・・・・・・・。


・・・・・・・。


「こっちか!!」


考え終えたあたしは、エスプの頭に斬れない剣を叩き込んだ。


剣と鎧がぶつかった瞬間、大きな衝撃波が生まれたが、エスプはビクともしなかった。


「なっ・・・!?」


「くっ、くくっ・・・!」


「なんかおかしいか?」


「これが伝説の吸血鬼の一撃・・・!!中々に、響く。素晴らしい!!」


どうやらエスプは、あたしから貰った一撃に快感しているみたいだ。


コイツ、戦闘狂キャラかよ・・・。


イヤな気分になっていると、エスプの鎧から剣の柄が伸びてきて、奴はそれを手に取ると、なんと鎧から剣を取り出して、あたしの首目がけてそれを横薙ぎした。


だけど魔能も何も付与されてない一撃だから、当然刎ねれるワケなんかなく、逆に剣の方が折れた。


「素の攻撃が効かんとは聞いてたが、まさか拙者の扱う武具の中で業物(わざもの)の内に数えられる一振りを逆に砕いてみせるとは・・・!救血の乙女・ミラよ。貴様こそ、拙者が探し求めていた強者ッッッ!!!」


あたしの実力を知って、エスプはかなり興奮してるみたいだった。


「殺し甲斐がある?何ならもっとやってみろよ。」


「いいとも。拙者が強者から奪ってきた獲物の全てを貴様に捧げよう!!」


燃えてきたエスプは、鎧からたくさんの武器を取り出した。


剣、斧、双剣、槍・・・。


だけどただの攻撃だから、使う度にバキバキ折れていく。


それでもまだまだストックは減らない。


コイツ、今までどんだけの人を殺してきたっていうんだよ・・・。


エスプが鎧から()()()を出せば出すほど、あたしは奴の所業にウンザリした。


だけどこれで、奴の実力は何となく分かってきた。


次はもっと強く殴れば、コイツをブチのめせるかもしれない。


「そんじゃもう一回、あたしも行かせてもらうとす・・・」


「そうはさせるか!!」


ハッとして後ろを見ると、ジョルドが拳を振り上げて向かってきたので、あたしは咄嗟に横に避けた。


だけど、少しタイミングが合わず、奴の一撃が顔をかすめ、あたしの左の眉がザックリ切れた。


「痛っ・・・!!」


あたしの身体に傷を付けるなんて・・・。


今のは間違いなく、天級(ヘヴン)の魔能!!


「ジョルド!!邪魔をするな!!ミラは拙者の獲物だぞッッッ!!!」


「いつまで遊んでるつもりだエスプ。導主様の手を煩わせるな。」


「貴様・・・!!偉そうに・・・!!」


楽しみを邪魔されて、エスプは怒り心頭といった具合だった。


「ここから先は俺がやる。お前は俺の後に続け。」


「大した威勢だけど、アンタだったら、あたしを殺せんの?」


ジョルドを挑発しつつ、あたしは顔に受けた傷を全回復(フル・ヒーリング)で治した。


「気になるなら試してみるか?」


ジョルドが両腕を地面に向かって伸ばすと、地面から伸びた何かが、彼の両腕にまとわり付いた。


天級(ヘヴン)第四位・砕破の連拳(シャッター・フィスト)!!」


ジョルドは一気に間合いを詰めて来て、ほとんど目で追えない連打を浴びせてきた。


あたしはそれらを目で必死に追いながら、何とか剣でガードする。


だけどジョルドが腕に纏ってるモノの力が尋常じゃなく、逆にあたしの剣が折れそうになる。


マズい!!


こんな攻撃をもし心臓に打ち込まれたりなんかしたら、あたしは死ぬ・・・!!


「中々いい見切りだ!!だがこれは防げるか!?」


ジョルドは腕に纏っていたモノを、今度は足に纏い出した。


天級(ヘヴン)第四位・地砕きの蹴打グランドクラッシュ・ブート!!」


ジョルドはあたしの顔面を蹴り殴ろうとしてきたので、あたしは腕でガードしたが、二の腕からバキボキと腕が粉々になる音が聞こえ、あたしは思いっきり吹っ飛ばされた。


「ぐっ・・・!!ああっ・・・!!」


腕に全然力が入んない・・・。


それにめちゃくちゃ痛い・・・!!


こりゃ完全に骨イッてる。


「腕は飛ばなかったな。相変わらず頑丈だな。」


ミラ討伐戦の生き残りとは聞いてたけど、まさかこれほど実力とは・・・。


黎明の開手、ジョルド=ネイヴ=リスティ。


大地を流れる“地波(ぢば)”というエネルギーを身体に纏うことで強力な攻撃を繰り出すことができる。


その一撃はまさに・・・“地を()るがす”ほど・・・。


アルーチェさんから前情報は聞いてたけど、これは、予想以上だな・・・。


「どうしたミラ?俺が怖くなったか?」


「いや。アンタは確かに強い。だけど知ってるよね?あたし・・・まだまだ本気じゃないよ?」


鋭い眼光を向けるあたしに、ジョルドは一瞬ながらたじろいだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] うーん慎重だ。 初手は2vs1かぁ。 第1回戦さぁどうなる?
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