269―待望の癒し
戦いが終わって、イスラドの王宮に戻ったあたし達はすぐに緊急会議を始めた。
「スマテトがそのようなことを?」
「はい。どうやらアイツ等が内戦終結を急いでたのは、どうやら近い内にやるらしい黎明の開手とアドニサカ魔政国のあたしへの何らかの作戦に加担したかったのが理由みたいで・・・。」
大公様に全てを話したあたしは何だか申し訳なかった。
だって元を辿ったらあたしが遠因でこんなゴタゴタが起こっちゃったのだから・・・。
ソニアさんにも、だいぶ迷惑をかけてしまったと思う・・・。
「それで、摂政は他に何か話されたのですか!?」
「残念ながら彼自身、向こうからあまり関心、というより信用されてなかったみたいで、作戦が行われる日時や場所、人員については教えてもらえなかったみたいです。」
慌てて聞くアウヴァさんに、ヒューゴ君が代わりに説明してくれた。
「そうか・・・。」
「あの・・・なんか、すいません・・・。あたしが原因みたいになったりして・・・。」
「君が謝る必要なんかないさミラ。むしろ感謝したいくらいだ。君達が来てくれたおかげで長いこと続いていたこの国の内戦も、ようやく終わったのだから。まずはこの戦いに勝利したことを喜ぼうじゃないか!」
元気ハツラツに言ってくれる大公様のおかげで、少しだけ気分が前向きになれた。
そうだ。
不透明な先のことでくよくよしたってどうしようもない。
まずは勝ったことを喜ばなくちゃ。
「よし!!そうと決まれば今宵の勝利を祝って宴でも開くか!」
「それはいいですね陛下!!」
「宴・・・ですか?」
「ああ!すぐ準備するから、君達は湯にでも浸かって、今日の疲れを癒すといい。」
大公様はそう言って奥に引っ込んでった。
ついに・・・この時が来た!!
異世界初の・・・温泉でのバカンス!!
嬉しくてたまらなくなったあたしは、解散後急いで部屋に戻って、バスセットを用意して、王宮内の温泉に向かった。
「えっ~と女湯は・・・おっ!あった♪」
暖簾をくぐって脱衣場でバスタオルを身体に巻いて、いよいよ浴場に足を踏み入れた。
「うっひょ~!!広ぇ~!!」
中はスーパー銭湯並みに広く、大理石で造られた大小様々なお風呂があった。
「さぁ~てまずはどれから入ろうかなぁ~?おっ!!ここ露天もあんじゃん!!よ~し♪まずはあそこから入ろう~っと♪」
ガラス戸を開けて、あたしは露天風呂スペースに入った。
飛び込んできたのは、海の街の大パノラマ!!
小山の上から海や港、周辺の街並みが一望できて、ものすごく最高だった!!
だけど一個だけ、だけどもとっても引っかかるものが目に飛び込んできた。
「あっ・・・♡お待ちしておりましたミラお姉様♡♡♡」
浴槽の縁に座りながらお湯で髪をとかすリリーがいた。
あろうことか全裸・・・胸丸出しで・・・。
「何、してんの・・・?」
「何してるって、ミラお姉様が来るまでくつろいでたんですよぉ♡でも中々来られないから、何だか私・・・湯あたりしてしまったみたいですぅ♡よろしければしてくれませんか?カ・イ・ホ・ウ♡♡♡」
あたしの肩に両手を置いて、リリーはわざとらしく荒くした息を顔に吹きかけてきた。
もしかしてだけど・・・誘惑しようとしてる?
胸当たってる当たってる!!
「そんなにしんどいなら、出る・・・?」
「イヤです!!やっとミラお姉様来てくれたのに上がるなんて!!ほらほらミラお姉様!!バスタオル脱いで一緒に入りましょうよ!!」
「ちょっ、止め・・・離せぇ!!!」
あたしからバスタオルをひん剥くと、リリーは強引にあたしを浴槽に入れた。
「うふふ♡♡♡ミラお姉様の肌・・・とってもスベスベぇ♡♡♡」
あたしのくっつきながら、リリーは露わになったあたしの肌をいやらしい手付きで撫でてきた。
頬っぺを胸にくっつけながら・・・。
ヤバいよこの子絶対この場であたしをどうにかしようとしてるよ!!
「もう・・・我慢できないわぁ・・・。」
「は?」
「ミラお姉様、してもいいですか?」
「何を・・・?」
「キ・ス・・・♡♡♡」
「はぁ!?!?」
驚くのも束の間、リリーはエッロい顔をしながらあたしの唇を奪おうとしてきた。
だっ、誰か!!
助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!
ガチャ・・・。
「ッッッ!!!」
ドアが開いたからハッと見ると、バスタオルを身体に巻いたソニアさんが不思議そうな顔をして立っていた。
「何をなさっているのですか?」
「えっ~と・・・!!これはぁ・・・。」
「間に合ったみたいですね。」
「え?」
「ヒューちゃんから言われたんです。リリーが女湯でミラ様を待ち伏せしていると。だから助けてやってくれって。ですので私もご一緒します。よろしいですね?」
たっ、助かったぁ~・・・。
ヒューゴ君ナイス!!
「ちっ・・・!」
折角の計画がご破算になったことで、リリーは悔しそうに舌打ちをした。




