23―妹以上〇〇未満?
ゴトッ、ゴトッ、ガタンッッッ!!
「んああっ!?」
あれ、止まった?
「んふぁあ〜〜〜!」
あまりに長いからいつの間にか寝ちゃってたけど、ここどこなんだろぉ・・・
「ーーーーーーー。」
ん、外の方からセドヴィグさんの声が聞こえる。
誰かと、なんか話してるみたいだけど・・・
ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
えっ、何この音!?
なんかが、開くような・・・
ゴトッ、ゴトッ・・・
あっ、また動き出した。
これもしかして、どっかの中に入った?
馬車が下にくだってるような感じがするってことは地下、かな?
「ん・・・ミラ、様?」
「あっ、グレースちゃん起きた?」
「到着、したのでしょうか?」
「なんかそれっぽい。どっかの地下に入ったみたいだし。」
「地下、ですか?」
「うん。」
でも一体どこなんだろここ?
窓がないから外の様子わかんないんだよね。
ギギィ!!
あっ、また止まった。
「皆さん!到着しましたので、どうぞ降りて下さい。」
やっぱそうなんだ。
ホント長かったなぁ〜
時計ないから何時か知らないけど、かれこれ一日半は場所乗ってた気がする。
ああ〜腰が痛い〜!
エコノミー症候群にならなきゃいいけどな〜
吸血鬼がそんなもんにかかるかどうか知らんけど。
「皆さんようこそ!吸血鬼南方本部街へ!!」
「おっ、おお〜〜〜!!」
すごい!
地下に街がある!!
軍の本部って聞いてたからてっきりコンクリ作りの廊下が広がってんのかなって思ってたけど、まんまファンタジー世界でみる地下都市じゃん!!
「ではナオ様達は、この厩舎の下にある入管所で避難民手続きを行なって下さい。それが済みましたら、居住区域の方にご案内されると思いますので。」
「はい。ありがとうございます。」
「それではミラ様とグレース様はこちらに。」
あたしらは向こうなんだ。
「じゃあ行ってくるからね。」
「またね、ミラお姉ちゃん!」
「近い内にまた遊びに行くから待っててね。」
「うん!!」
◇◇◇
「おいアレ見ろ、禍狼種だぞ。」
「あんな強え魔獣を二頭も連れてるなんてどこのお偉いさんだよ?」
周りの人達あたしらの方見てめっちゃヒソヒソ喋ってる・・・
この子らデカいから目立つんだよなぁ・・・
「ミラ様、やはり白丸と茶々助は厩舎の方達に任せた方が良かったのでは?」
「そういうワケにはいかないでしょ〜?この子らまだあたし以外にあんま懐かないんだからさぁ・・・」
でもこうなるんだったら、やっぱどっかに預けてもらった方が良かったかも・・・
この子らにも他の人の言うこともちゃんと聞くように躾けなくちゃな。
もっとあたし以外の人と遊ばせたりして一緒にしたら懐いたりして?
「ミラ様、グレース様、着きました。こちらです。」
「ここは?」
「南方の執将様がいる館です。元はこの街の主人が住んでいたのですが。」
「元はこの街の主人?そういえばセドヴィグさん、この街って元々は何だったのですか?」
「この街は、昔は人間と岩削人達の交易都市で、廃棄されていたものを我々が見つけたんです。これだけ広大な地下都市なら人間に見つからず、大勢の避難民を受け入れることができますからね。」
「へぇ〜そうなんだぁ。」
だからこんなに立派な石造りの建物がいっぱいあるのか。
確かにこれだけ面積広かったらたくさんの人が避難しに来れるからな〜
「では参りましょう。執将様がお待ちです。」
「あっ、でもこの子達は?」
「私が見ててますよ。」
「いいのグレースちゃん?」
「彼らはミラ様の次に私に心を開いているように見えますから、心配なさらないで下さい。」
「そう?そういうことならちょっとお願いね。ホントごめんねグレースちゃん、結構なこと任せちゃって・・・」
「いえいえ!彼らとより深く交流する良い機会ですよ。」
「そっか・・・じゃああたしは行ってくるから。いい?グレースちゃんの言うことしっかり聞いてるんだよっ!」
「バウ!」
「ウォン!」
コツ、コツ、コツ・・・
「・・・・・・・。ふぅ。さてと、待っている間に何かお話でも、する・・・?」
「「グウ?」」
◇◇◇
「ここが執将様のお部屋です。私は先に今回の難民救出とミラ様の件についてご報告するので、ここでお待ちになって下さい。」
「あっ、はいっ。分かりました!」
バタン・・・
緊張するなぁ・・・
軍のお偉いさんってどういう人なんだろ〜?
多分大丈夫だと思うけど、気難しいのだったらヤだなぁ。
それにしても、この屋敷ホントにキレイな内装してんなぁ〜
あたし子どもの頃こういうところに住むのちょっと憧れてたんだよね。
言ったらここにお部屋とか用意してくれんのかな?
いや、それはさすがに悪いか。
いくらなんでもそんな厚かましいマネするワケには・・・
「だから放っておいてっていってるでしょ!!」
ん、なんだなんだ?
向こうの廊下から聞こえたけど・・・
「放っておけるはずないでしょう!!今のあなたは悲しみのあまりまともじゃなくなりつつありますッッッ!!!」
「私は本気よ!さっきも言った通り、敵のところには私一人で行く。私から・・・私からあの方を奪ったアイツらをたくさん殺してやるッッッ!!!」
「そのような愚かな行為をとても容認することはできません!最悪、あなたまで死ぬことになるのですよ!?」
「だったら私はそれでもいいわ。だって・・・だってもう一度、あの方に、会えるんだからッッッッッ!!!!」
なっ、なんかタダ事じゃない雰囲気だな・・・
ここはやっぱ止めるのが正解だよね?
よっ、よぅし!
火に油にならないように、ここはそぉっと・・・
「あっ、あのさ・・・ちょっといい?」
「何よ!?関係ないのは引っ、込ん、で、て・・・」
あっ、よく見ると可愛い女の子。
グレースちゃんと同い年くらいかな?
もう一人はやっぱ男の子だね。
見た目中学生くらいだけどなんか賢そうだな〜
いかにも勉強できそうってカンジ。
「よっ、良かったらあたし相談に乗るよ?一回落ち着いて何があったか話してくれない?」
「こっ、これは、一体、どういう、だ・・・なっ、何故、あなた、様が・・・」
ああやっぱそういうリアクション取っちゃうか〜
「うっ、うん。多分、というか絶対知ってると思うけど、みっ、あたし、ミラです。ここはあたし、救血の乙女に免じてさ、機嫌直してくれないかなぁ?自分で言うのもなんだけど、へへっ。」
「うっ、嬉しい・・・わたっ、私に会うために、生き返って、くれたん、ですね・・・」
へっ?私に会いに?
「あっ、いやちょっとさ、追々と話したいことがあるから一旦ちょっと聞いて・・・」
「うっ、うう・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんんんんんんんん!!!!」
ガバッ!!
ドタンッ!!
「あいたッ!!?」
「うわぁぁぁぁぁん!!会いたかったよぉぉぉぉぉぉぉ!!ミラお姉様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
おっ、お姉様!?
この子まさか・・・
あたしの、妹!?
「ちょっ、ごめん・・・!あたし実は、記憶が無くなってて、あなたが誰なのか、覚えてなくて・・・!」
「私のことを覚えておいででないのですか!?私です!リリーナですッ!あなたの妹にして、最愛の恋人の名前をお忘れになってしまったのですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
こっ、恋人!?
今この子『恋人』つった!?
えっ・・・
ちょっ、ちょっと待って!
お姉様・・・
恋人・・・
・・・・・・・。
・・・・・・・。
ミラってば、とんでもないことに手ぇ染めちゃってたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?




