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【完結】吸血鬼の救世主に転生した陽キャ女子が異世界で無双代行する話。  作者: ハニィビィ=さくらんぼ
第四章 : 朽蝕の救済
188/514

188―王と救世主

夜になり、あたしは明かりがついた王宮の廊下をトコトコと歩いていた。


クーデター騒動が終結し、王様が心配するイーニッドさんの今後も決まったことで、あたし達は協和三条約が締結されたお祝いパーティーで大いにどんちゃん騒ぎした。


だけどあたしは、この間みたいに悪酔いしたくなかったから「外の空気でも吸ってちょっと酔い覚まししてくる。」といって途中で抜けてきた。


そういえば王様も途中で抜けたけど、どこ行ったんだろ?


まぁあんなおじいちゃん目前な人が、こんな時間まで若者ら(吸血鬼のみんなは年上だろうけど・・・。)に囲まれて、お酒飲みながらわきゃわきゃするのはさすがに疲れたんだろう・・・。


そんなお父さんに比べて、イーニッドさんは元気だったな~・・・!


リリーやグレースちゃんと一緒になって「フゥ~!!!」なんて言ってたし。


確かイーニッドさん、歳はまだ19だとか言ってたっけ・・・。


いくらこの国の成人が14だからといって、あんな若い頃からお酒ぐっびぐび飲んだりして・・・。


「体壊さなきゃいいんだけど・・・。」


あんなん見たら王様でなくても心配するっちゅうねん・・・。


「ん?あれ?」


イーニッドさんの体を心配に思いながら廊下を歩いてると、王宮の中庭に置いてあるオシャレっぽいベンチに座り、妙に黄昏てる王様を見つけた。


あたしはその姿が妙にほっとけなくなり、階段を降りて下の中庭に早歩きで向かった。


「王様・・・?」


「おお、ミラ。其方も中座してきたのか。」


「まぁ~そんなところです。隣、いいですか?」


「ああ、構わんぞ。」


「では、失礼します。」


王様の横でちょこんと座ったあたしは、「ふぅ~・・・。」と落ち着いたため息をした。


「なんかリラックスできますね~ここ。」


「其方もそう思うか。余も疲れている時は、良くここに来て気を落ち着かせておる。」


「やっぱそうですよね!いや~あの料理とお酒の量は半端ないですって。あたしも一息つきたくて途中で抜けてきたんです。」


「はっは。ご老体にあの量は、中々に堪える。」


お互い一緒の気持ちだったことを知って、あたし達は春の夜空に昇る月が照らすベンチに座って笑い合った。


・・・・・・・。


・・・・・・・。


「其方は・・・誠に凄い器量の持ち主だな。」


「え、どうしたんですか?突然改まって。」


「此度の反乱の際、其方は動揺することなく、己の手の者ばかりではなく、親密な間柄である王国の者にも冷静に采配を取ったではないか。余は突然のことで、激しく当惑してしまった・・・。情けない限りである。」


「あっ、あたしだって!あの時はとってもビックリしたんですから!!ただ、“あたしがどうにかしなきゃ!”って必死になってただけで・・・。」


「だが其方の采配によって、王都の安寧は保たれた。それだけでなく、其方は我が娘の歩む道も示してくれた・・・。其方はやはり、多くの者の導きとなる星の元に生まれたのであろうな。」


「そっ、そんなことないですって!!だってあたしは・・・。」


その先を言いかけた時、あたしは咄嗟に口をつぐんだ。


あたしは、あくまでミラの代役。


だから彼女みたく、人の上に立ってあれこれ言うことが上手いワケなんかなく、今回のことはとても運が良かっただけと思っている。


だから自分より遥かに目上の人から、こんなにベタ褒めされると何だか自分のことが少しイヤになってくる。


まるで、本物のミラの手柄を横取りしてるみたいで・・・。


「どうしたのだ?」


黙ったままのあたしを心配してか、王様がふいに声をかけてきた。


「え!?いっ、いえ!何でもございませんっ。」


「そうか。ならいいのだが・・・。しかし、改めて思うと夢にも思わんだな。まさか余が、あの救血の乙女と、こうして同じ星の下で話す機会が来ようとは・・・。」


「やっぱ・・・実感湧かないですか?」


「そう、だな・・・。幼少の頃、初めて其方のことを知った時、余は“吸血鬼に惨たらしい所業を重ねてきた我らに対する神罰が下った”のだと、それはもう恐れたものだ。同胞を救うべく、戦場を駆け、傲り高ぶった人間どもを蹂躙する吸血鬼達の救世主・・・。余は、自分が王位に就いた時、この吸血鬼の救世主と事を構えるのは御免だと思っていた。だがいざ王位を継ぐと、余は我が父である先王の思想に染まった諸侯に圧され、救血の乙女たる其方の血を求めるようになった。しかし、其方が一度死した後、甦ったという報せを受け、“かの者は人の域どころか、この世の理からも逸脱した存在。我が王国に最早勝ち目なし。”とついぞ諦めてしまった・・・。」


「王様・・・。」


そっか。


この人はあたしが、人間と吸血鬼とが平和に暮らせる世界を作るにはどうしたらいいかって考えるずっと前から、かなり大きなジレンマを抱えていたんだ・・・。


「だが・・・余は其方という者を大きく誤解していたようだ。」


「え?」


「其方は我が王国に罰を与えるべく遣わされた存在なのではなく、己の目に留まる者ならあらゆる蟠りを度外視し、助けに向かう優しく、それでいて強い信念の持ち主だということを、余は思い知らされた。だから余は本気で思った。其方の優しさに応えるべく、今までの諍いなど余所にやって、吸血鬼達と平和な世を築いていきたいと・・・!!」


王様はそう言って、ベンチから立ち上がると、あたしに向かって膝を付いた。


「改めて乞おう、救血の乙女。ミラよ。これまでの我らの行ないを、どうか許してほしい・・・!吸血鬼と人間・・・双方に安寧をもたらす世を作るべく、余は身命を賭すとここに約束しようッッッ!!!」


あたしはベンチから立ち上がって、跪く王様の横について一緒になって座り込むと、彼の手を取って握手した。


「こちらこそ、喜んでご協力します!ただし、あんま無理しないで下さいね♪」


あたしの言葉に王様が目をうるうるさせるのを見て、あたしはちょっと申し訳なくなってはにかみながらこめかみをポリポリかいた。


(ミラ様!急いでお戻り下さい!!)


「ヒューゴ君どしたの?そんなに慌てて・・・。」


(ミラ様がご退室した後にリリーとグレースが飲み比べを始めたのですが勝負は着かず、ならば次は“どちらがミラ様に相応しい美貌を持っているのか”という談になって、酔った勢いで二人は服を脱ぎ始めたのですッッッ!!!)


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?ちょっとあたしが席外した間に何でそんな状況になってんの!?」


(私にだって分かりませんよ!ああ!!もう下着まで脱ぎ始め・・・)


「ちょちょ!ちょっ!!今からそっち戻るからヒューゴ君は二人を足止めしといて!!」


(精神魔能の使用は!?)


「許可するッッッ!!!」


ヒューゴ君との通信を切ると、あたしは急いでパーティー会場に戻ることにした。


「ミラ、どうしたのだ?」


「ごめんなさい!!ちょっと戻んなきゃいけなくなったんでこれで失礼しますッッッ!!!」


王様が怪訝な顔をして見送るのを気にせず、あたしはダッシュで走り出した。


もう~あの二人はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!


当分お酒禁止だな!!


マジでッッッ!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり王様は本気だねぇ… これまでに相当な葛藤があったんだろう。 そしてトラブルメーカーが増えたな() まぁ…要警戒()
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