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【完結】吸血鬼の救世主に転生した陽キャ女子が異世界で無双代行する話。  作者: ハニィビィ=さくらんぼ
第一章 : 救世主の復活
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18―難民救出作戦③

「ミラ様!全員の準備が整いました!!」


「ありがとっ!こっちも準備オッケーだよ。」


「みっ、ミラ様、もっ、もしかしてその動物って・・・」


「えっ、禍狼種(ワガルフ)だけど?」


「かっ、飼い慣らしているのですか!?」


「ああそっか。セドヴィグさん気失ってたから覚えてないんだ。この子茶色い毛並みの子が傷だらけのセドヴィグさんを見つけてくれたんだよっ。」


「そっ、そうだったのですか。」


まあ、そん時にてっきり茶々助が襲っちゃったって勘違いしちゃったんだけどネ・・・


「しかしミラ殿、何故白丸と茶々助をここに?」


「うん、ちょっと考えたんだけど、この子らに連れて行かれたみんなのところまで案内してもらうってのはどう?」


「彼等に、ですか?」


「一緒に狩りして分かっただけど、この子らってめちゃくちゃ鼻が効くんだよね。だからこの子らに任せれば連れて行かれた難民たちの居場所も一発で見つけることができるかなって思って。」


「確かに禍狼種(ワガルフ)の嗅覚の良さは魔獣の中でもトップクラスですから、たとえ100km先まで離れていても容易に見つけられることができると思います。」


「で、セドヴィグさん、何か難民たちか、その人達を連れ去った連中の匂いのついた物って持ってないかな?」


「もっ、申し訳ありませんミラ様。手がかりになりそうな物は何も・・・」


そっか〜


確かに戦ってる最中で必死なのに、そんな物手に入れるのってできないか・・・


「バウッ!」


「ん、どうしたの?」


「スンスン・・・スン、スン」


きゅ、急にどうしたんだろ?


セドヴィグさんの服なんか嗅ぎ出したらして・・・


「ガウッ!ガウッ!」


「はっ、白丸?」


「アウッ!ハフッ。」


「茶々助も、そっちがどうかしたの?」


「もしかして、セドヴィグ殿の服についた微かな匂いを嗅ぎ分けたのでは?」


「ウソっ!?そっ、そっちにみんないるの?」


「バウッ!」


「ガウッ!」


なんか知らんけど、「そうだよ。」って言ってる気がする。


どんだけ嗅覚いいのこの子たち・・・?


「バウッ!アウッ!」


「ガウッ!」


今度はナニ?


背中を見ながらドタドタしだしたんだけど?


「もしかして、“乗れ”ってこと?」


「「ガウッ!!」」


ちょっ、ちょっと待って!


この子らに乗って行ったら他のみんなは一緒に行けなくなっちゃうじゃん!!


敵が何人いるか分かんないのに少人数で行ったらどうなるか・・・


「ミラ殿、行ってきて下さい。」


「アーさん?」


「向こうが何人で、どれほどの実力を持った者かどうかも分からないので、本当はお一人にさせる訳には参りませんが、オレはこの拠点の防衛責任者としてここを守る役目があります。ですのでオレはやはり残ることにします。」


「オレも残ります!ぶっちゃけ兄貴一人じゃカバーできるかどうかも分かんないですし!」


「何言ってんだよ!そんな一丁前な態度なクセして、イザって時はしょっちゅうオレが助けるハメになんのにさぁ。」


「そっ、そんなこたぁねぇだろ!オレだってやる時はやるよ!!」


「へぇ、じゃオレがお前をピンチから出来事、一個ずつ列挙してもいいんだぜ?」


「やっ、やめろよぉそういうことすんの!!あ〜もう分かったよ!兄貴と比べたらオレなんかまだまだ至らない未熟モンですよッッッ!!」


「ほぉ、偉く聞き分けがよくなったじゃないか。ですので、ミラ殿、ここはオレ達に任せて早く行って下さい!」


「アーさん・・・わざわざ準備してもらったのに、余計な手間かけさせちゃって、ごめんなさい。」


「謝らないで下さい。これならば敵が攻めんだ時にいつでも戦えます!まっ、来ないに越したことはないのですけどねっ。」


「ミラ様、ならば私も残って皆様のお手伝いを。」


「いや、グレース殿はミラ殿のお側にいてやってくれ。」


「でっ、ですが・・・」


「グレースさんほど頼りになる人はいませんからね。オレらの分まで、しっかりミラ様を守ってあげて下さいっ!」


「ネザミさん・・・ありがとうございます。必ずっ!」


「ありがと、二人とも。よし、じゃグレースちゃんはあたしと白丸に。ソウリンさんセドヴィグさんは茶々助に乗って!」


「「「はいッッッ!!!」」」


「ミラ殿ッ!吉報を心よりお待ちしております。」


「任せて!!絶対みんな助けてみせるから!」


よ〜し!!それじゃあ出発しますかっ。


でもどうやってこの子らを出したらいいんだろ?


ストレートに「案内して。」って言えばいいのかな?


「白丸、茶々助。連れ去られたみんなのところまで連れて行って!」


「ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」


「アオォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」


うわっ、遠吠えしたと思ったら急に走り出した。


って、ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッ!!!!


めっちゃ速ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?


まるでバイクに乗ってるみたいだよぉ〜!!


こっ、こんなコトならヘルメットと酔い止め用意しとくんだったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


そんなモノ無いんだけどねぇ〜〜〜!!


「ミラ殿、どうか、ご武運を。」




◇◇◇




「なぁ、ちょっとここらで休憩しないか?」


「そうだな。馬も疲れた様子だし。」


「それでいいか、旦那?」


「ふん、好きにしろ。」


「ホント、可愛くねぇガキ・・・」




◇◇◇




パキッ・・・パキッ、パキッ


「あとどれくらいなんだ?」


「そうだなぁ、この地図によると・・・あと一日ちょっとでアドニサカの領土に着くんじゃないか?」


「まだそんなかかんのかよぉ〜もう退屈で堪ったモンじゃねぇっての!」


「確かになぁ、見渡す限り森と草原だけだかんなぁ。」


「早く貰うモンもらって朝まで酒と女でドンチャンやりてぇよぉ〜」


「ん〜〜〜」


「おい、どったよ?」


「いや、捕まえた吸血鬼、一匹くらい()()()()()()いいのかと思って。」


「何言ってだよお前!?アイツらモンスターで、さらに女はガキばっかじゃんかよ!!お前まさかソッチの趣味なんか持ってんじゃねぇだろぉなぁ!?」


「そっ、そんなんじゃないって!!ただ何となく思っただけだしっ。」


「まぁお前のブッ壊れた好みを抜きにしたってそれは流石にアウトだろ。貴重な取引品なんかに傷つけたら報酬貰うどころか処罰されることもあり得んだから。」


「だから違うって言ってんだろ!!全くお前等と来たらぁ!!」


「おい、切り刻まれたくなかったらそのハエの羽音以下の喚き合いを止めた方がよいぞ。」


「なっ!?なんだとぉ・・・テメェ、いい加減に・・・」


「だああ!堪えろって!!悪かったな、うるさくしちまってっ。」


「って、おいおい!離せよっ!これ以上言われっぱなしは我慢できねぇよ!!」


「でもやり返そうとしたってあんな強えんだから逆にやられるのがオチだってッッッ!!」


「ああ!!クソッッッ!!!あんなヤツとさっさとオサラバしてぇよ!!ったく!!!」


「でもなんかさっきのアイツの言い方、いつにも増して不機嫌そうじゃなかったか?」


「おそらく、()()のせいじゃないか?」


「アレ?」


「バレないようにこっそり見てみな。」


「アイツ、なんか眺めてないか?あれは・・・指輪?」


「ヤツの姉の形見なんだと。」


「アイツ、姉なんかいたんだ。」


「しかもただの姉じゃないぞ。“黎明の開手(ひらきて)”のメンバーだったらしい。」


「ホントかよ!?でもそれならさぞかし強かったはずだろ?なんで死んじまったんだ?」


「なんでも、吸血鬼の連中から“救世主”って崇められてるヤツに仲間全員で挑んだけどほとんど返り討ちに遭ってその姉もその中の一人だったらしい。ヤツはその日から戦場から帰ってきた唯一の遺品であるあの、結婚を目前に控えた姉の婚約指輪をああやって後生大事に持って時々眺めるようにしてんだと。」


「へぇ、あんなヤツにも亡くした家族を恋しがる子どもらしさがあるってことねぇ・・・」


「しっかし人間軍最強と謳われる“黎明の開手”のメンバーほとんどを逆に殺すってどんだけ強いんだよその吸血鬼?もしそんなヤツが実在してたら会ってみたいわwww」


「確かに、にわかには信じられないよなぁ。そんな人智を越えたバケモンがいるって。でもそいつもそいつで、そん時のケガが元で死んじまったって聞くぜ。」


「なぁんだ、勿体ねぇな〜どんなヤツか一目でもいいから拝んでみたかったよ・・・」


「実はさ、耳寄り情報なんだけどよ・・・そのハンパなく強い吸血鬼、女だったらしい。しかもとびきり美人の・・・」


「マジかよぉ〜!?ますます見てみたかったぜ〜願わくばベッドの相手もしてみたかったなぁ〜」


「お前だったらヤる前に(やら)れるだろうがwww」


「おっ、お前なぁ〜!!上手ぇこと言ってんじゃねぇぞ!!」


「「ははははははははははははははははッッッ!!!」」




◇◇◇




姉上・・・


見てて下さい。


必ず黎明の開手の一員に選ばれて、貴方の意志を継いでみせます。


そして、あの・・・


下等な吸血鬼の分際で、神に選ばれた“選者(せんじゃ)”たる貴方を殺した憎きあの、『救血の乙女』が命と引き換えに守り通そうとした同族(害虫)どもを、一匹残らず奴の許へと送ってやります。

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