150―明かされた目的
夜になり、あたし達はマースミレンの森精人達が用意してくれた晩御飯を食べていた。
どこぞのファンタジー映画にあったみたいに、野菜中心のご飯が出てくるかと思っていたけど、そんなことはなく、外の森で獲ったと思われる動物のお肉もちゃんと使われてて、ちょっと立派なフレンチみたいだった。
「あれ?」
「どったのソレット?」
「王様の姿が・・・見当たりませんね。」
そう言われてみれば・・・。
王子様であるプリクトスさんはちゃんといるのにおかしいな・・・。
「あの~プリクトスさん?」
「何ですか?」
「お父さん・・・いや、王様はどうしたんですか?お姿が見えないのですが・・・。」
「実はわたくしも存じなくて・・・ただ、“アルーチェ様とお話する”と言って・・・。」
あっ。
そういえばアルーチェさんもいないな。
あの王様・・・優しそうに見えてど~にもきな臭いんだよなぁ~
アルーチェさんの前で耳飾りの話になりそうになった時、無理やり止めたカンジだったし。
最近の異世界モノで、エルフは悪役キャラになるってパターン、意外と多いからな~。
カロガンスル様もその例に漏れず?
でもただ単に人の命を吸い取る耳飾りで一体何をしでかそうってんだ?
それが分かんないだよな~!
「アサヒお姉様、何か心配事ですか?何やら怖い顔をしてらして・・・。」
「えっ?あたしってそんな怖い顔してた?」
「ええ!まさに鬼の如し・・・!!」
「それは言い過ぎでしょちんちくりん!!」
「ともかく!何か悩み事があるのだったら遠慮なく申してみよ!我らはここまでの苦難をともに乗り越えてきた仲間・・・。ましてやアサヒ殿は我らを率いる役目を担う者ではないか!兵が将に隠し事をしてはならないのは当然だが、逆もまた然りだぞ。」
「ファイセアさん・・・。」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「あの~プリクトス様。こんなこと聞くの変だと思うけどさ・・・お父さんってどんな人?」
「父上・・・ですか?お優しくて清らかで、それでいて決断力に溢れた誇りある父にして、王であります。少々、荒っぽいところはございますが・・・。」
あっ、じゃあとりあえずは悪役キャラとは程遠い人柄ではあるんだ。
「どうしてそんなことをお聞きになるのですか?」
「えっ!いっ、いや~別に。ただ単純に、“どんな人なのかな~”って思ってさ。深い意味なんかこれっぽっちもありませんからね!!ハイ!」
「そっ、そうですか・・・。」
やっぱ・・・あたしの考えすぎだった、みたい?
そりゃ~そうだよね!
エルフが悪役ってのは最近のラノベの中の話であって、実際そんな展開あるワケがないよねぇ~!!
まぁこれも・・・純然たる異世界転生だけどぉ?
とっ、とにかく!!
ここでそんな展開あるはずがないってこと!!
気を取り直して森精人料理、ご堪能するとしますか~!
「あっ!こらソレット!!お肉ばっか食べて~!!野菜も食べないと大きくなんかなれないよ!?」
「知らないんですか?小さい頃から肉を多く食べた方が背が伸びるんですよ?」
「そっ、そうなの?」
「アサヒ様は小さい頃にお肉を摂らなかったから、そのような哀れな姿に・・・。」
「ナニ人の低身長憐れんだカンジでディスってんの!?ああもう怒った~!!アンタもあたしと同じで背ぇ低くしてやんよ~!!」
ソレットのお皿から無理やりお肉を取り上げて、その分こっちの野菜を入れるあたしを見て、他のみんなは少し呆れた感じで苦笑いした。
◇◇◇
「ここなら他の者の目も行き届かないだろう。」
王様に案内され、私は彼に個人的な来客が来た時にしか使われないという客間に案内された。
「それで、お話というのは一体何なのでしょうか?」
「すでにご承知していると思うが、アルーチェ殿にこちらの品を預かってもらいたい。」
王様がテーブルの上に置いた物を見た瞬間、私は絶句した。
何とそれは、伝説でしかないと思っていた、持ち主を魅了し、その命を奪う“魂喰い華の耳飾り”だったからだ。
「どうしたのだ?そんなに動揺して。ん?さては・・・。」
私が狼狽えていると、王様はまるで嘲るかのように「フッ。」と鼻で笑った。
「どうやら貴殿も、魂喰い華の耳飾りを運んできた者達と同じく、知る立場ではない・・・ということのようだな。」
「それは、一体どういう・・・。」
「ではそちらの導主殿に言伝を。“この耳飾りに秘められた真の力、我が一族の汚点たる吸血鬼どもの希望、ミラを討ち果たすべく存分にお使い下さい”と。」




