146―敵手との再会、再び
「よく来たな。ご客人。儂がこの国の王、カロガンスルだ。」
プリクトスさんに案内され、あたし達は彼の父にして、マースミレンの国王のカロガンスル様にお目通りした。
見た目的には息子であるプリクトスさんとあんま変わんない、大体25、6歳くらいだけど、話し方は威厳に満ちていて、頭には息子のよりよっぽど大きく、より金ピカに輝く冠を被っていた。
おそらく見た目と違って、何千年も生きてるめちゃくちゃおじいちゃんなんだろなぁ~。
「お久しぶりです陛下。相変わらず・・・ご健勝で何よりです。」
「ティスムドル、其方も息災のようだな。」
片膝をついて跪きながら、ティスムドルさんはものすごく緊張した声色で王様にご挨拶した。
そりゃ緊張するだろな~。
なんせ、およそ3000年ぶりに主君と再会したんだから。
「しかし驚きました。まさか、嫡男様がお生まれになっていたとは・・・。」
「ああ。妻には、先立たれてしまったのだがな・・・。」
「それは、心からお悔やみを・・・。」
「よい。500年も前のことだ。今更ほじくり返すつもりはない。」
ごっ、500年前!?
かなりの昔のことだけど・・・プリクトスさん、大戦後に生まれた人でわりかし若い人なのかぁ。
あれ?
なんか年代感覚がおかしくなってきたかも?
こりゃ~参った!
ははっ・・・。
「さて。挨拶はこれくらいにして、アサヒ殿。例のモノを。」
「あっ!はい!!」
王様のお膝元まで行ったあたしは、この旅をする切っ掛けになった物、魂喰い華の耳飾りを懐から出して、王様に差し出した。
「どっ、どうぞ・・・!」
「受け取ろう。」
あたしから耳飾りを受け取った王様は、指でつまみながらまじまじと見つめた。
「ほう・・・これが・・・。確かに強大な冥府由来の魔力を感じる。」
王様から受け取った耳飾りを目の当たりにして、その場にいた森精人全員の顔が凍り付いたように見えた。
ずっと持ってて忘れ気味になってたけど、やっぱり、すごく危険な代物だったんだな、魂喰い華の耳飾り・・・。
王様に耳飾りを手渡したあたしは、そそくさと元いた場所まで戻った。
「さっ、さて!あたし達のお役目はこれで終わりましたんで、ひとまずこれで・・・。」
「まぁ待てアサヒ。ヴェル・ハルドより参ったのだ。さぞ苦労を極めた旅路であっただろう。せめて2日ほど休まれてはどうだろうか?」
「え?いっ、いいんですか?」
「よいよい。心行くまで我が王国を堪能してゆけ。」
王様が笑顔でそう言うと、ソレットは「やった~!!」と飛び跳ねた喜んだ。
そんなソレットをリリーは「はしたないでしょ!」って言いながら頭をコツンとして座らせた。
いかんいかん!
あたしも嬉しさのあまりついジャンプしそうになった。
だって森精人の国だよ~!?
キレイなところがいっぱいあるだろうし、それに・・・美味しい食べ物も・・・♡
って、リーダーのあたしが浮かれてどうすんの!?
『“ただいま”って言うまでが遠足』っていうように、王国に戻るまでが旅なんだから、最後まで気を引き締めないとっ!
ああでも!
待ちきれないよぉ~!!
マースミレン観光・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
ちょっとくらい浮かれてもバチは当たらんよね♪
よ~し!
異世界初の森精人の国観光!
めいっぱい楽しむぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
「そっ、それではお言葉に甘えて、ごゆっくりさせて頂きます!」
あたしが満面の笑顔で返事すると、王様は微笑みながらウンウンと頷いた。
なんか・・・思ってたより穏やかそうな人だな。この王様。
「失礼いたします陛下。もうお一方の客人がお見えになりました。」
もう一人のお客さん?
誰だろ?
近衛の人に案内されて、王様の部屋に入ってきた人を見た瞬間・・・あたしはギョッとした。
「え・・・?マジで・・・?」
「紹介しよう。こちらは・・・黎明の開手が一人、使召雄のアルーチェ=オーネスだ。」
「そっ、そんなまさか・・・!」
アルーチェさんの顔を見た瞬間、ファイセアさんは立ち上がって、そのまま固まってしまった。
「あっ、あなた・・・。」
驚くファイセアさんを見て、アルーチェさんもまた、同じように固まったまま動かなった。
だけど、固まった2人は一斉に走り出し、ひしっと抱きしめ合った。
「ルーチェ!会いたかった・・・。本当に・・・会いたかったぞ!!」
「私も・・・ずっと会いたかったわ。あなたのことを考えなかった日なんて・・・一度もなかった。嬉しい・・・。嬉しいよ!ファイセア・・・。」
一度バチバチした敵と、また蜂合わす羽目になって、かんなりヒヤヒヤしちゃったけど、それも・・・感動的な夫婦の再会を目にして、すっかり吹っ飛んでしまった。
本当に仲良しなんだな・・・。
このカップル。




