145―黄金の森の国
ん?
あれ?
なんだか森の日差しの色が、変わってきたような・・・。
なんかこう・・・妙に金ピカになってきた、というか・・・。
「あの~ティスムドル様?」
「どうしたソレット?」
「森に差す光に、金色が混じってきたような気がするのですが。」
「ああ、そうだな。いよいよか・・・。」
「いよいよ?」
「見てみろ。木の葉の中に金色に染まるものがあるだろ?これが全ての樹々の全ての木の葉まで広がったその時こそ、マースミレンの領土に入った証拠だ。」
「ってことは・・・ティスムドルさん!!」
「そうだアサヒ。目的地は近いぞ!」
ゴールが・・・すぐ目前に・・・!!
ついに・・・ついにここまで!!
「ぃよ~しみんなぁ~!!旅もいよいよクライマックスだよぉ~!!ラストスパート、頑張ろう~!!」
「「「おお~!!!」」」
そっから私達は、今までの疲れがまるでウソみたいに森の中を駆け走った。
ソレットなんか「もう待ってなんかいられません!!」なんて言って、チーズ郎から飛び降りようとしたのを、ノイエフさんが手綱を引きながら必死で止めた。
そりゃゴール目前で事故られたでもしたら、たまったモンじゃないからな・・・。
森の中を進むにつれて、金色の日差しがどんどん強くなって、とうとうティスムドルさんが言った通り、森全体を金きらに照らしだした。
そのあまりにも圧巻な光景に、私達全員が見惚れてその場で止まってしまった。
「すごい・・・森全体が黄金に、輝いてる・・・。」
「ああ・・・。まさに壮観だな・・・。」
「あっ、アサヒ様・・・。わたくし達、ついに・・・。」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「うん!着いたみたいだね。でしょ?ティスムドルさん。」
「ああ。ここが俺の故郷・・・マースミレンだ。」
あたしは・・・いや、あたし達は感無量だった。
だって、ようやく旅の目的地に着いたのだから・・・。
いやぁ~ここに来るまでに色々なことがあった。
楽しいことも、辛いことも、ハラハラする戦いも、残酷な過去と向き合って、それを乗り越えたことも・・・。
その全てが・・・ついに報われた。
あれ?
なんか・・・泣きそうになってきた・・・。
「アサヒお姉様?」
リリーに声を掛けられて、あたしはみんなにカッコ悪いトコを見せまいと、袖で目をゴシゴシ拭った。
「みんな・・・今までご苦労様!!さっ!早く耳飾りを届けに行こっ!」
そうしてあたし達は、金色に染まる森の中をゆっくり進んだ。
国の中に足を踏み入れていく内に、ティスムドルさんが住んでたウチにみたいな、木をくりぬいてそのまま家にしたような住居が増えてきて、森精人の人通りも増えてきた。
なんかみんな、あたし達のことを、妙に怪しんでるような目つきで見てる気がする。
そりゃそっか。
本来だったら痩鬼種の乗り物である禍犬種に、人間と同じ森精人が乗ってるんだから・・・。
う~ん・・・。
『アイツ等魔族の回しモンじゃないだろうね!?」とか心ン中で思われてたらどうしよ?
そうこうしている内にあたし達は、橋が架かって、金色に照らされてるというより照らしてるという言い方が正しい葉っぱを付けた、幹に門がある、一際立派な大樹の前に着いた。
「アサヒ。ここがマースミレンの王が住み、この森を照らす聖なる大樹、“煌城樹”だ。」
ああ、やっぱそうか。
どうりでご立派ででっかい木なワケだ。
あたしが感心していると、門の向こうからぞろぞろ人を引き連れて、誰かこっちに歩いてきた。
それは、純白の衣装に身を包み、頭に小振りな、金の草を紡いで作られたような冠を戴いた、森精人の男の人、しかもバチクソなイケメンだった。
「ようこそお越し下さいました、アサヒ最高位魔能士殿。」
「あっ、あの~・・・あなたは・・・?」
「申し遅れました。わたくし、この国の第一王子のプリクトスと申します。今後、皆様をもてなすようにと父上・・・王から仰せつかっております。」
おっ、王子様!?
ほぇ~!!
やっぱ森精人の王子様だから、いい顔してるわぁ~!
「さぁ。騎獣の方はお任せして、どうぞ中へ。王がお待ちです。」
チョコ之丞達を、プリクトスさんが連れてきた兵士さん達に任せて、あたし達はこの国の城である大木の中に足を踏み入れた。
さぁ!
いよいよ王様とご対面だ。
気ぃ引き締めていくよぉ~!!




