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【完結】吸血鬼の救世主に転生した陽キャ女子が異世界で無双代行する話。  作者: ハニィビィ=さくらんぼ
第三章 : 耳飾りの旅
124/514

124―敗魔将の誇り

忘れもしない、あれは100年前のこと。


古き大戦で、俺様達魔族軍は他の種族を根絶やしにし、アルスワルドを征服するまで後一歩だった。


ところが・・・幻想大厄災ファンタズマ・カタストロフィのせいで、魔族は絶命寸前まで激減し、魔族軍(俺様達)は実に不愉快な不戦敗を味わうことになり、地下深くに潜るハメになっちまった。


だがしかし、それでも冥王は地上掌握を諦めておらず、陽が当たらぬ地の底で着々と再起を窺い、軍備を整えていた。


あの方の信念に、一度は何もかも諦めていた俺様も、深く感銘を受け再び立ち上がる決意をした。


完璧だったのだ。


()が、現れるまでは・・・。


「お前達の主の力を奪いに来た。」


そう言って、アイツは俺様達が潜伏している、滅びた岩削人(ドワーフ)の国に踏み込んできた。


アイツの前には俺様が率いる痩鬼種(オーク)軍およそ2万がいた。


それに対して、向こうはたったの1匹。


それも森精人(エルフ)の紛い物の種族である、吸血鬼。


しかも・・・女だ。


“気が触れて自分から死にに来た。”


そう思った俺様達は、腹を抱えて笑った。


その瞬間、女吸血鬼は痩鬼種(オーク)軍を薙ぎ払いながら国の中に突っ込んできた。


吹き飛ばされた瞬間、俺様は思い出した。


人間、森精人(エルフ)岩削人(ドワーフ)、それに俺様達のように幻想大厄災ファンタズマ・カタストロフィを生き残り、強大な魔能を持つ種族を手当たり次第に襲い、血・・・すなわち力を奪う謎の吸血鬼がいるという噂を・・・。


そして悟った。


奴の次の獲物が・・・俺様達の主である、冥王であることを・・・。


手傷を負いながらも、俺様は奴の企みを食い止めるべく、一刻も早く全軍を冥王の間の前に集めるよう命じた。


魔族達を蹂躙しながら突き進み、いよいよ奴は冥王と、その娘である冥府の姫がいる部屋まで来た。


俺達は全力で奴を殺そうと立ち向かった。


ところが奴は、冥王の間の扉に集まったおよそ2000もの魔族軍を、あろうことかまとめて燃やし尽くし、扉を吹き飛ばしやがった。


「人間を根絶やしにするのに、お前達の(魔能)は必要ない。」


それが、俺様が聞いた奴の最後の言葉だった。


気が付くと、俺様は瓦礫の中に埋もれていて、爆発により全身に火傷を負っており、痛みだけで意識が飛びそうだった。


それでも俺様は冥王と、姫の安否を確かめるべく地を這いつくばって部屋に入った。


そこで目にしたのは・・・首に噛み傷がある冥王と、胸に剣を突き立てて死んでいる姫の死体だった。


奴を止められず、主達を死なせてしまった俺様は、地に伏せたまま慟哭した。


生き残りの仲間に助けられた後、俺様を待っていたのは虚無に満ちた日々だった。


もう守るべき王も、果たすべき役目もない。


そんな俺様の許に、希望の光が差したのだ。


“人々を魅了し、最終的に命を奪う呪いの耳飾り”


耳飾りの特徴を聞いた瞬間、俺様は直感した。


・・・・・・・。


・・・・・・・。


姫は生きている。


奴に力を奪われる前に自害し、自分の耳飾りに魂を移したのだと・・・。


俺様は誓った。


どんな手を使ってでも、姫を・・・再び取り戻してみせると。


さすれば、あの方の父君の悲願だった地上掌握を、再び果たすことができるやもしれん。


だが、何故だ?


姫は目前だというのに、何故それを持つ人間を前に、俺様は怯えている?


これではまるで・・・あの時と同じではないか!!


俺様は・・・またしても惨めな思いをしなくてはならないのか・・・!?





◇◇◇





あっという間にドツボにハマってしまい、ゲブルは一切動こうとしなかった。


こりゃあ完全にビビっちまったかもね・・・。


「通じてるかどうか分かんないけど、逃げるんならお好きにどうぞ。どの道アンタらにはもう勝ち目なんてないんだから。」


{・・・・・・・。}


ゲブルは未だ何も話さない。


{頭、どうしましょうか?}


{・・・・・・・。誰が逃げるか。}


ゲブルは乗っていた禍狼種(ワガルフ)から降り、背負ってた大剣を抜いてあたしにそれを向けてきた。


{貴様らは下がってろ。俺様が・・・ケリをつける!!}


仲間を下がらせた?


まさか、あたしとサシでやるってこと?


{俺様は、もう負けぬ。貴様から、必ずや姫を奪い返してやる!そしてその暁には、姫を復活させ、俺様から主を・・・あの方から父君を奪ったあの吸血鬼に・・・必ず復讐してやるッッッ!!!}


何言ってるか全っ然分かんないけど、そっちがその気なら相手になってやろうじゃんか!


まぁでも、結果は分かりきってるけどね。


なんせあたしは・・・といってもホントのミラ(あたし)じゃないけど、冥王を倒すほどのチートキャラだったらしいんだからッッッ!!!

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