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第二話 暗黒女帝への長き道のり


 「ガチョウ歩き、終わり‼」


 「ぎええええええええええッ‼」


 エレクトラは片脚を抑えながら地面に転がる。

 一応、ドレスからトレーニングウェアに着替えたが辛いものは辛かった。


 「エレクトラ、大丈夫か?」


 しのぶはエレクトラをおんぶして椅子に座らせた。

 やる前は元気だったはずのエレクトラも今は死体一歩手前の状態だ。


 「しのぶさん。今のトレーニングは…ぎええええええええええッ‼足がまんべんなく痛いいいいッ‼」


 しのぶはエレクトラのズボンを脱がせて温かいタオルを当てる。

 当然パンツの部分が見えないように腰にはバスタオルを巻いていた。


 「これは暗黒の時代”昭和”の負の遺産、”ガチョウ歩き”だ。ハムストリングス、膝、アキレス腱を痛めつけるだけの拷問のようなトレーニングだ。正直、何もしない方が良い」


 しのぶはタオルで温まったエレクトラの足を徐々に冷やしてやる。

 エレクトラは少しずつ冷静さを取り戻す。そして疑問を口にした。


 「なぜそのような行為を、一時間も私に?」


 「お前に資格があるか試したまでだ。禁断の力、ワームホールマスターの…」


 「ワームホールマスター?それは一体どのようなクラスなのですか?」


 「その前に着替えてくれ」


 「えっ?…はい」


 しのぶはエレクトラにジャージのズボンを渡して部屋から出て行く。


 「どうぞ、しのぶさん」


 エレクトラは急いでズボンを履いてからしのぶを部屋に呼んだ。


 「ワームホールマスターについて説明する前にまずこれを見て欲しい」


 ズズズズ…シャキーン‼


 しのぶはズボンを履いたまま最終兵器を起動させた。


 「きゃあッ‼私、何も見ていませんでしてよ‼」


 エレクトラは思わず顔を両手で覆ってしまうが指の間からしっかりとしのぶの大きくなったチンチンを見ていた。


 「古来より人は前についている物を光の化身スーパーノヴァと呼んできた。これはウィキにも掲載されている事実だ。対して…」


 しのぶはエレクトラの前で後ろを向き、ズボンを下ろして生ケツを見せる。


 「…後ろについている穴を闇の化身ワームホールと呼んだ。わかるか、エレクトラ?人は生まれながらにして光と闇の化身を宿した罪深き存在なのだ」


 エレクトラはしのぶの逞しい”門”の奥に控えるワームホールを見つめる。


 「ピッカー!しのぶ、ようやくアルコール臭が抜けたぜー!…ってエレクトラ、しのぶのケツ穴なんか見て何をしているんだよ‼」


 そこにアルコールを抜いてきたピカ虫が現れる。

 

 エレクトラは驚いて部屋の隅まで逃げてしまった。


 「ピカ虫さん、違いますわ。これは私がワームホールマスターになる為の授業であって…」


 しのぶはズボンを上げると二人に向き直る。


 「要するにこのワームホールの活動を外部から制御するのが特殊職業ワームホールマスターだ」


 「しのぶ、ワームホールマスターとエレクトラの元カレと元ダチがどう関係するんだよ?」


 プシュッ‼


 ピカ虫は350mlの缶ビールを開けた。


 しのぶは頭上に腕を上げるとそのままピカ虫の脳天に肘を振り下ろす。


 ズガンッ‼


 脳天に肘落としを食らったピカ虫は涙目になりながら後退した。


 しのぶは缶ビールの上にラップをして冷蔵庫に入れる。

 結果的に炭酸は抜けてしまうのだろうが何もしないよりはマシだ。


 「もうお前はしばらく禁酒だ、このアル虫が‼泥酔したお前をサトシが見たらノイローゼになっちまうぞ。わかってんのか‼」


 「わからねえよ、しのぶ。俺だっていつまでも子供ガキ相手にハッスルできるわけじゃねえんだ」

 

 そう言ってピカ虫は頭の隅の方に出来たハゲている部分を見せる。

 ピカ虫は最近、元気すぎるサトシ(小学生)の相手をしていたので脱毛症を患っているのだ。


 「フン、私の知った事か。これでも読んでろ」


 しのぶはプチモン写真集をピカ虫に渡す。ピカ虫は満面の笑みを見せながらページをめくり出した。


 「うひょーっ‼このピ虫、たまんねー!今すぐ交尾したいぜええええ‼」


 ピカ虫は鼻息を荒くしながら写真集の虜となっていた。

 ちなみにピカ虫はこの写真集を編さんした人間がサトシである事を知らない。


 後でその事に気がついてガッカリするのはまた別の話である。


 「さてエレクトラよ。ワームホールとは闇のエネルギーを放出する為の器官だ。ワームホールマスターはワームホールを封印したり、解放したりして人間をコントロールする事が出来る職業でもある」


 「私がランドとアンナを…ですか?」


 エレクトラは責任の重大さに言いよどむ。果たし人間に他者の人格を操作する事が許されるのかどうかなど考えるまでもない。ちなみにしのぶ的には無問題。


 「結論から言って人の本心など知るべきではないし、知るに値しない物だ。エレクトラ、お前の抱くアンナとランドの人間像と彼らの本心が一致するとは限らないのだぞ。それでもワームホールマスターになりたいというのか?」


 今、エレクトラはランドとアンナと共に過ごした学園生活を思い出していた、全てが美しいだけではない、意見の食い違いで言い争いになった事もある。

 だが若いエレクトラにとってはそれが全てだったのだ。


 「でも私は知りたい。二人の本当の気持ちを、本当の友人になりたいから。しのぶさん、お願いです。私をワームホールマスターにしてください」


 「エレクトラ、お前の覚悟は確かに受け取った。これからワームホールマスターの奥義を伝授する…。そこに立っていろ」


 しのぶは微笑みながらエレクトラの肩に手を置く。

 エレクトラはしのぶの手を取り、愛おしそうに頬ずりした。


 「行くぞ、エレクトラ。お前に奥義を授ける。心をしっかりと保て…」


 「はい。コーチ‼」


 しのぶはエレクトラから離れると姿と気配を消した。エレクトラは目を閉じて全てを受け入れる決心をする。

 そしてしのぶは愛と慈しみを込めて、両手を組んだ。

 野太い人差し指を合わせ、一度しゃがんでから天に向かって両手を突き出す。


 狙うは清浄、神聖にして不可侵の聖域。


 「ぬんッ‼」


 「うぎょおおおおおおおおおおッッ‼」


 次の瞬間、エレクトラは電撃のような痛みとこの世の理不尽さを同時に知る事になった。


 「…。これでお前はワームホールマスターになった」


 「…ありがとうございます、コーチ。何て言うかと思ったか、ですわッ‼」


 エレクトラの平手打ちがしのぶの頬を張り飛ばす。


 しのぶは鼻血を流しながらエレクトラの門出を祝福する。


 彼女はもうか弱い少女ではない。立派な大人の女性になったのだ…。


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