第一話 クラスチェンジ
一時間後、頭に大きなたんこぶを作った悪役令嬢エレクトラはしのぶとピカ虫に事情を説明していた。
「なるほど。テレポートの罠にかかったお前さんが勇者学園に戻ると皆の態度がよそよそしくなっていて、話題の中心は元婚約者のランドと治癒魔術師のアンナの婚約発表で持ち切りだったってわけか…」
エレクトラはハンカチを目に当てながらうんうんと首を縦に振っている。
ピカ虫は大好物のイカのくんせいを食べながらカップ酒を呷っている。
「おい、止めろ。このアル虫が」
しのぶはピカ虫からコップを取り上げ、洗面台に酒を捨てた。そして蛇口をひねって水に流す。
「ピッカー…。しのぶぅぅ、俺の命の水に何をしてくれるんだよ。ここで戦争でもおっ始めるのか?ピカピカ?」
「いい加減にしろはこっちのセリフだ。こんな事がサトシにバレたら俺が怒られるんだよ」
ピカ虫の飼い主であるサトシはピカ虫が雷虫よりも逞しくなっている事を知らない。
さらに昼間からイカのくんせいを食べながらカップ酒を飲むようなやさぐれプチモンになっていた事も知らなかった。
「畜生。こんな時にサトシの名前を出すんじゃねえよ…。ちょっとミンティアを舐めてくる」
さしものピカ虫もサトシには弱かった。
「しのぶさん。どうすればランドとアンナは本心を打ち明けてくれるのかしら?」
エレクトラは真剣な眼差しをしのぶに向ける。
無理もない。勇者学園の女性徒の間では、美貌と堂々とした振る舞いから女王と畏れられていても中身は年相応の悩み多き年頃の女性である。
「ここまで用意周到な準備をしているという事はそれなりの覚悟があるに違いない。まずはクラスチェンジだな。アンタが一から鍛え直して強く無ければアンナとやらは見向きもしないだろう。いやもうそれしか考えられない」
「ク、クラスチェンジですって⁉まだ今のクラスの熟練度だって真ん中くらいなのに…」
しのぶの言葉を聞いたエレクトラはつい言葉を震わせる。
勇者学園で取得可能な職業は基本的に仮免のような物で簡単なスキルしか取得できない。
エレクトラの学園での成績はトップクラスだが、クラスチェンジをすれば今まで取得してきた技能経験値がゼロになってしまう。
最悪、次の学期末試験までに熟練度が一定まで達していないと留年、落第という可能性もあった。
「やはりお前の決意はその程度か、エレクトラ?」
しのぶは最終兵器を起動させた。エレクトラの熱い視線は逞しすぎる性のエンタシスに集中する。
「こうしている間にもアンナはランドを手に入れる為に自分のマンコに色々な物を挟んでマンコの筋肉を鍛えている事だろう。例えマンコが筋肉痛になって明日の体育の授業に出られなくなっても彼女はマンコを鍛える事を止めはしない。なぜだかわかるか?」
「ごめんなさい。(しのぶさんのチンコが気になって)わかりません…」
「アンナはランドを愛しているから、ランドに少しでも喜んでもらう為にマンコを鍛えているんだ。それをお前は自分の単位がどうとか面子にばかり拘っている。いい加減、目を覚ませ‼」
エレクトラはしのぶの言葉を聞いて、かつてアンナがダンスパーティーに参加する為に人形を相手に社交ダンスの練習をしていた事を思い出す。
アンナは地味な努力を続けて周囲に認められたエレクトラの自慢の親友だった。
(どうして今まで気づいてあげられなかったの?私のバカバカ…。アンナは努力家で、学園でも一度だって私を頼ろうとはしなかったのに…。きっとランドを好きになった時だって私の事を気にして言わなかったに違いないわ…)
エレクトラは顔を両手で覆って泣き崩れてしまった。
言いたい事も言えずに苦しんでいた親友のアンナの前でランドを侮辱するような振る舞いばかりしていた自分の愚かさを悔やんでいたのだ。
「エレクトラ。どうかそのままで聞いて欲しい。君は本当にアンナとランドの本心を聞きたいのか?もしかすると一生後悔することになるかもしれないぞ」
しのぶは最終兵器を小さくしてチャックの奥に引っ込めた。
一日に何度も大きくすると後で痛くなってしまうからである。
「しのぶさん。私、決めました。アンナとランドの為にクラスチェンジします」
「…そうか。ならばもう容赦はしない。今日から鍛えまくってやるから覚悟しろ。まずはガチョウ歩きだ‼」
「ハイ!コーチ‼」
こうしてエレクトラとふじわらしのぶは師弟の契りを結び、クラスチェンジの修行をする事になった。