2−2 ゲーミング☆タートル
と、言うわけでクエストを受けてきました。今回のクエストは『巨大ガメ“ホトバシルトクレーテ”の討伐』、そうですまた敵を倒す系のクエストです。ソフィーがどうせなら戦うクエストが良いって言ったんですよ。あの子の頼みが断れるかと聞かれたらその質問には私はノーと答えますよ。だから仕方がなかったんですよ。それに前回は討伐しに言ったと言うよりかは山を燃やしに行ったの方が正しいし。まぁそんなこんなでそのえーとなんだっけ? ホトバシルトクレーテとか言うふざけた名前の亀が生息している『鋸乃湖』と言う湖沼に2人で向かっているのでした。
「鋸乃湖でカメさんのモンスター。ですか……」
「ん? 何か引っかかることでもあったのか?」
「いえ──ソフィーはこう見えてテレビゲームが大好きなのですが……」
「いまなんて?」
「やっぱりリーダーさんでも意外だと思うんですね……実は今までゲームが好きだってことを言った時に驚かれなかったことが一度もないんですよ」
いや、もちろんソフィーがゲーム好きなことには驚いたけれど私が今一番驚いてるのは異世界にゲームがある事なんだよ。トランプだとかのテーブルゲームならまだしもビデオゲームってどうなんだよ。この世界、私が考えてた以上におかしいのかも知れない。
「実は私もゲーム好きなんだよね」
「リーダーさんもゲーム好きなんですか! ちなみに一番好きなゲームはなんですか?」
ちょー困る質問来たな。そんな簡単にThe bestは決められねえよ。ゲームだけに。と言うかこの世界にあるゲームが私が元居た世界のものと同じかどうかもわからないんだからもしも転生前に好きだったゲーム言ったとしても理解されない可能性もあるんじゃん。
「私が好きなゲーム言う前にソフィーが好きなゲーム教えてもらっていいかな?」
「もちろん良いですよ。ソフィーが好きなゲームはですねぇ……『New スーパーマリオブラザーズ』ですね」
バリバリ転生前の世界のゲームじゃねえか。
「それでそれでっリーダーさんの好きなゲームは結局何なんですか?」
「ふふっ、私が好きなゲームはね……『星のカービィ 鏡の大迷宮』だよ」
「あーあれですか! シリーズ本編唯一デデデ大王が全く登場しないやつ!」
「そーそれ。でもこれだけは言わせてほしい。私が一番好きなゲームキャラはデデデ大王だ」
「鏡の大迷宮が一番好きなのに、ですか?」
「そう、そうなんだよ。おかしな話だよな」
「確かにおかしな話だとは思いますが……でもデデデ大王って良いキャラですよね。スマブラXとかものすごーくかっこいいですし」
「わかる。すげーわかる。悪者のフリして暗躍してたってのが最高」
「はい! 趣旨が少し違いますがクッパ大魔王もいい悪役していますよね」
「クッパと言えばやっぱりマリルイRPG3だよな。あれはもうクッパが主役」
「あのゲームはマリオとルイージとクッパ大魔王の協力関係がいいですよね」
「イエロースターも忘れちゃいけないな」
「あの子とクッパ大魔王の会話もあのゲームの醍醐味ですよねー!」
「それなー!!」
あーこの子やばい。無限に話してられる。可愛くて私のことリーダー呼びしてくれて話が合うってマジでやばすぎるよ!
「と言うことは鋸乃湖で亀のモンスターに反応してたのってつまりそう言う事だよな?」
「そうです。そう言う事です」
「この名前、絶対意識してるよな」
「意識してなくてこれはあり得ないですからね……恐らく意識しているのでしょう」
「もしかしたら見た目が似てるとかあるかもしれないぞ?」
「いやいや、そんなことはないでしょう」
「二足歩行なのかも知れないぞ?」
「もうっ縁起の悪いこと言わないでくださいリーダーさんっ」
「じょーだんじょーだん」
「ソフィーがバカだからってからかわないでください!」
ははは、二足歩行で巨大な亀なんているわけないじゃないか。あははは。
自分で言うのもなんだけどフラグだな、これ。
鋸乃湖に着いてしまいました。さっき『ここから先キケン入るな』って書いてある看板がありました。私はここで死ぬのかもしれないと思って震え上がりました。
「このきれいな湖が鋸乃湖ですか……大きいですね……」
「ほんとだきれー……ってあれぇ? なんか水面が揺れてない?」
「あわもぶくぶくと出てきましたね。しかもおっきいあわ……」
バッシャーンと音が鳴り現れたのは、緑色の甲羅で体の色が黄色の巨大な二足歩行のカメだった。のこのこと、ノコノコそっくりのモンスター──と言うよりかは怪獣に近い亀が現れたのであった。
「ってデッッカアアアァァァ!!!!」
「ほんとに二足歩行のカメさんが出てきちゃいましたね……!」
言葉で表現できない大きな咆哮が響いた。おそらくコイツの中ではこれが戦い開始のファンファーレなのだろう。
「なっ何かくるぞ!!」
噛み付いて攻撃して来るのかなと勝手に思い込んでいたが、なんとこのカメは想像の斜め上の行動をとった。ノコノコみたいな見た目のくせに、甲羅に不自然にあいていた穴からカメックスの如く水を打ってきたのだ。こいつの名前は水がほとばしるって意味だったのだろうか。
「「ってそんなことされたらよけれないぃぃ!!!!」」
2人で思いっきり水にかかってしまった。夏のディズニーのイベント並に派手にかかってしまった。
「うぅ……びちょびちょです……」
これはこれでアリよりのアリかもしれない。ナイス、亀!
「……り、リーダーさん! これ以上近づかれたらカメさんに物理攻撃を仕掛けられるかもしれません! 下がりながら様子見をしましょう!」
「ああ、そうしよう!」
立ち回りが上手いなぁ。そういう系のゲームで鍛えられているのだろうか。
ここは私も何か作戦を言ってみようか。
「ソフィー! 私があの亀を引き付けるから、不意打ちで倒そう!」
「でもそんなことをしたらリーダーさんが危険です!」
「大丈夫。死んでも生き返れるかもしれないから! 多分!!」
「……そこまで言うならその作戦で行きましょう」
「よしっ、こっちだ亀!」
亀は狙い通りこっちに向かってきた。
「リーダーさん! カメさんがあたまから向かってきますよ!」
か、亀が頭から? 今この子無意識に卑猥なこと言っちゃったよ?
「ってつい無駄なことを考えてしまってる内にすぐそこまで亀が来てるぅ! ぶっぶつかる!」
「『回転斬り』! しぇあああああ!!」
「ソフィー!! ナイスタイミンッ!!」
回転斬りで斬りつけられた亀の頭はきれーに斬れた。綺麗さで言うとこの湖沼と同じぐらい綺麗に斬れた。DIYのプロがノコギリを使った時ぐらい、真っ直ぐにスパッと斬れた。….…強すぎだろ。
「無事ですか? リーダーさん」
「ああ、ソフィーのおかげで大事には至らなかったよ」
「それはよかったです!」
「──というかこいつ、頭ぶっ飛ばしたら動かなくなっちゃったな」
「ギルドまで持ち帰って調理してもらいましょうか」
「いやいや、こんなデカいの運べるわけないでしょ」
「流石に一部分だけですよ。亀の手足は食べてもおいしいし出汁にしてもおいしいと聞きます。手足だけ持って帰りましょう」
「だとしても重いんじゃ……」
「これぐらいならソフィー持てちゃいますよ。ほら」
(ひょい)
「軽々と持ち上がった!?」
「ソフィー、力にはちょっと自信があるんですよ?」
「自信とかもうそういうレベルを超えちゃってるよこれ!!」
「そ、そうですか?」
「うん! すごすぎるよ!」
「褒められるとソフィー照れちゃいます……えへへ」
やっぱりこの子はかわいいなあ。まぁでも今はでっけぇ亀の手足を持ちながら言ってるからだいぶ怖いけど。
「それじゃあまっすぐ帰りましょう、リーダーさん!」
「ほいよーっ」