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6−4 メイドインパレス

 前回のあらすじ、リサを生き返らせたら雑談することになった。


「てなわけで雑談スタート!!」

「で、何を話すんだ?」

「アタシの過去の話でもしようかしら。るりりには知ってもらっても恥ずかしくないし」

「なんだ? おもらしとかか?」

「ぜーんぜん違うわよ。もっとシリアスな過去編よ」


 過去編て言い方だと長そうに聞こえるけど、どうせ今回で終わるぐらいの内容なんだろうなと思いつつ私は耳を傾けた。


「アタシはこれでも昔は清楚で静かなお姫様だったのよ」

「嘘松乙」

「嘘じゃないわよう!」

「だって、それは無理があるだろ」

「真実なんだから無理もなにもないわよう! とにかく聞きなさい!」


 リサは1呼吸おくとまた話しはじめた。


「それでね、11歳ぐらいのときにリティニカが来たのよ」

「え? じゃあその前まで誰に面倒見てもらってたんだ?」

「お父様は仕事で忙しいし、知っての通りお母様はアタシがちっちゃい頃に死んじゃってるからひとりのことが多かったわね。大体のメイドたちはアタシを守るぐらいしか関わってきてくれなかったし」

「それで? リティニカとはすぐに仲良くなったのか?」

「いえ、最初アタシは拒んだわ。あのときあの人から殺意を感じたからね」

「さ、殺意!?」

「そうそう殺意殺意。しかもその勘は大当たり。彼女はアタシを暗殺しに来たスパイだったのよ」

「ちょちょちょっと待ってくれ、今あーんな関係なのにか!?」

「そうよ。リティニカはかなりやり手のアサシンなのよ」

「てか意外過ぎて受け入れちゃったけど、殺し目的で潜入するってなんか変じゃないか?」

「アタシは全く外に出なかったから簡単には出来なかったらしいのよ」

「おいおい、メイドの警備なんてたかが知れてるだろうし夜中に潜入すれば良かっただけだろ」

「あ、確かに。なんでリティニカはスパイみたいな感じで来てたのかしら」

「気にしたことなかったのかよ……」

「でも今はその話がメインじゃないのよ。リティニカとアタシが一緒に人生を110°ぐらい変えた話をしたいの」

「微妙だけど90°以上ではあるんだな」

「聞いてれば『それぐらいかも〜』ってなるはずよ。てなわけで、語りの権限貰うわね」

「へいへい」


 * * *


 あー、あー、マイクテスマイクテス。よしよし、ちゃんと出来てるっぽいわね。どうもアタシよ、リサ=セマームよ。

 それじゃ話しましょうか。まず、リティニカはさっき言った通りアタシを殺しに来てたのよ。理由は王族の血筋を消すこととかじゃなくて、強力な魔法が使えるからもしものときのためにって感じだったみたいなんだけど今思えばこれってほぼ同じね。騙された気分だわ。

 最初アタシの部屋に彼女が来たときはとんでもなく暗い空気になったわ。そう、まるで──まるで…………うーん、ま・る・で……


「無理に例えようとしなくていいんだぞ」

「アタシを気遣ってくれるのね。ありがとるりり」

「いや早く本題に入って欲しいだけだよ」

「ツンデレかしら」

「その質問にはノーとしか答えられない」


 まぁいいわ。それで最初に口を開いたのはリティニカだったわ。「姫様は何をするのがお好きなのですか」って聞いてきたから、アタシは「とくにない」って答えたわ。だってほんとにとくになかったんですもの。そしたらリティニカは不満げな顔しながら「ほんとに何もないのですか?」って聞いてきたわ。もちろんアタシはこくりと頷いたわ。そしたら哀れみとしがらみがぐちゃぐちゃになった様な複雑な表情になってたの。恐らくだけどリティニカはアタシのことが好きになっちゃってたんでしょうね。


「かなり自己肯定感高いな」


 そのあとリティニカは遊びとしてトランプを提案してくれたわ。王族にピッタリね。そういうのをやったことなかったアタシはババ抜き程度で負けちゃったわ。悔しかったから何度も挑戦したけど全然勝てなくて最終的に泣いちゃった。


「昔から負けず嫌いなんだな」

「昔から、というよりこのババ抜きをやってから、ね」

「それまでは負けと勝ちの価値も分かんなかったのか?」

「その通りよ。あとさりげなくダジャレを挟むなんてやるわね」

「今のはさりげなくではないと思うが……」

「そうなの?」

「そうだよ」


 そうやって数日間仲良くしてたら、いつの間にかリティニカの表情はやわらかくなってたし、アタシも楽しみなことが出来ていろいろ満たされてたわ。でもお父様はリティニカが暗殺しに来たっていう情報を聞きつけてアタシを安全な場所に隔離してリティニカに問い詰めたの。


「物騒な展開になってきたな」

「どうせならここは会話劇にでもしようかしら」

「今更何を言ってるんだ。さっきからずっとそうだろ」

「確かにそうなんだけどー、アタシが言いたいのはこういうのなのよ!」



 〜回想〜



「単刀直入に聞く、お前は我が娘リサを狙ってここに来たのだな?」

「…………はい」

「ここ最近、リサの強大な魔力を狙っている組織がかなり増えてることは耳に挟んでいる。お前もその類か?」

「その通りです」

「わしは争いは好きではない。もし、武器を持っておるなら、そこに捨てなさい」

「持っておりません」

「それは何故だ?」

「……最初と考えが変わったからです」

「ではその理由も聞こうか」

「姫様が、その……」

「リサがなんだ?」

「可哀想と言いますか……」

「……それは心からそう思ってるのか?」

「はい。実は────」


「────その話は本当のことなのか?」

「はい。それで姫様には遊び相手が必要と考えたので、殺すのを諦めました」

「は……? 貴様、わしの大切な娘を殺そうとしてたのか!? わし以外ではリサしか血を引くものが残っていないというのに!!」

「利用される前に殺せば世界の均衡が保たれると思いまして」

「確かに間違いではないが、貴様ふざけるのもいい加減にしろ!!! 『元々殺そうとしていたけど可哀想だから諦めた』なんて信じられるか!!!」

「…………」

「年端も行かない少女だからと油断していた。死刑と言いたいところだが、生憎本当に殺した訳ではないからそんなこともでき」

「お父様」

「リ、リサ!? どうやってここへ!?」

「ドア燃やして出た」

「全くメイド達は何をやってるんだ……」

「お父様、お姉さんはいい人だよ」

「リサ、どんな悪人でもいい人として振る舞うことは出来るんだぞ」

「ううん。お姉さんは他のメイドたちと比べても1番いい人だよ。だって、わたしのこと構ってくれたもん」

「姫様……!」


 リティニカは泣きながらアタシに抱きついてきたわ。あのときのアタシはなんでかよく分かってなかったけどね。


「リサ、今まで何もしてやれなくてすまなかった」

「どうして? お父様はわたしと国のみんなのために毎日がんばってお仕事してるよ?」

「っ!! 本当に……すまなかった…………」

「? なんでなでなでしてるの?」

「これが、わしにとって1番の愛情表現だからだ……」


 * * *


「てな感じのことがあったのよ──ってあれ? もしかしてるりり泣いてる?」

「…………(顔を横に振る)」

「涙腺よわよわねぇ。折角だし今のうちに語りの権限返しとくわね」


 お、返ってきた。


「で、るりり、どうだった?」

「リサにそんな純粋な時期があったって考えると涙が出てきた」

「も〜〜!! 茶化さないでよう!」


 彼女は><(だいなりしょうなり)みたいな顔で頬を膨らませた。こんなおてんばな姿を見てるとますます泣けてくる。確かにこれは110°だ。


「すまんすまん。てかあの人って思ったより真面目なんだな」

「そうよ! リティニカはアタシの自慢のメイドなんだから」

「そういやその後どんな感じでリティニカが城で正式に働くことになったんだ?」

「あぁそれは────」


 〜回想〜


「そういえばさっき君は利用されないようにと言っていたが、それはどこにも属してない中立ととって間違いないな?」

「そうです。私の望みは世界平和だったので」

「だった、か。つまりこの国に就こうと考えているんだな?」

「当たり前です。姫様の為になるにはそれ以外ありませんので」

「それでは君には城とリサを守ることを仕事としてもらおうか」

「有り難きお言葉です」

「つまりお姉さんはこれからも一緒なの?」

「そうですよ。姫様」

「わーい!」

「良かったな。リサ。ところで君の本名はなんなのだ?」

「リティニカ=シュレーターと申します」

「それではリティニカと呼ばせてもらおうか」

「光栄です」


 〜回想終〜


「─────こんな感じね」


 偽名がなんだったのかちょっと気になるけど、平和に解決したなら何よりって感じだ。


「王様結構甘いんだな」

「そうね。お父様は甘ちゃんよ」

「甘ちゃんはそういう意味じゃなくてだな……」


 そうこう話していると頭上にロープの様なものが落ちてきた。お、これはもしや──


「姫様ーー! いますかーー!?」

「リティニカぁ! ちょうど真下よー!!!」

「あ、マジですね。このままではルリア様を誤って踏んづけてしまうところでした」

「はは……そうですね……」


 助かったのはうれしいけど、なんだかなぁ。


「とりあえず早く地上へ上がりましょう。ロープに捕まっておいてください」


 私とリサがロープにしがみつくとリティニカさんが引き上げてくださいと叫び、引き上げられて行った。

 段々と光に近づいていき、あっという間に地上へ戻ってこれていた。セツナとソフィーの2人で引き上げたみたいだけど、やっぱりソフィーのパワーはえげつないな。


「ふぅ、無事でよかったです」

「お姉ぢゃん……良がっだ……」

「あ、また泣いちゃってるです。ふきふき」

「2人の前で“また”とか言わないでよぉ……」


 ハンカチに搾り取られなかった涙がセツナの頬を伝う。自分も泣いてるってのにそれを気にせずにセツナに気を遣うソフィー、静かに涙を見せるリティニカさん。私たちは自分で思ってるよりも大切にされているようだ。


「も〜みんな泣かないの。やんなきゃいけないことだって終わってないんだし、早く行くわよ!」

「待ってください姫様」

「どうしたの?」


 リティニカは何を思ったのか冷たい雪の上で土下座をし始めた。


「申し訳御座いません! 私がもっと入念に準備していればこんな事には……」

「何言ってんのよ。誰が悪いとか、そういうの無いわよ」

「ですが……」

「雪山に行くってのにこれといった準備しなかったってのは誰もつっこまなかったからだし、リティニカが城に戻ったのも効率のためだし、言ってしまえば単に全員ダメダメなだけよ。リティニカが謝る必要性はミジンコもないわ!」

「微塵もない、な」


 まぁほぼ同じだけど。


「それに戻ってなかったら仮に落ちたとしても今以上に助けるのに時間がかかってたわけだし。リティニカは今回活躍してる方じゃない」

「姫様……いっぱいちゅき♡」

「もうリティニカってばっ、絵柄が変わってるじゃないの〜」


 遂に文だけなのに絵柄とか言い出しちゃった。どんな絵柄かは想像つくけど。

 そんなアホみたいなことをしている間にセツナとソフィーは泣き止んだらしく、こっちに走ってきていた。


「置いてっちゃ()です〜!」

「リティニカさんが新しく埋める方は済ませてきてくれてるみたいだから、ちゃっちゃと終わらせちゃいましょ!」

「そうね! そうと決まればここからは競争よ! よーいどん!」

「知ってるヤツの方が有利じゃねーか! あとお前はさっき落ちたことをもう忘れたのかよ!」

「だいじょーぶよ! リティニカがいるもの!」

「確かにそうだけど、有利不利の話にも反応しろよ!」

「聞こえないわよー♪」

「逃げるなーー!!」

どーも、いつも通り僕です。今回はリサ回でした。個人的には今までで1番面白い回になったと思っていますがいかがでしたでしょうか。まぁそんなことはどうでもよくて、最近暑いですね。時間感覚がルリア達と一緒になってて書いてて気持ちいいんですけど、まずいです、このままのペースだと秋に水着回になっちゃいます。だからなんだって話ですが。

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