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6−3 女神様またあいました

 私は死んだ。


 3回目の出来事だった。


 いや──でも、今回は今までに比べて随分とマジメな死因だったなぁ。


『初投稿から1年くらい経ったからって、最初のシーンを無理に再現しようとしなくてもいいんじゃない?』


 あ、スノードロップ様の声だ。


「あれ、まりたんは居ないんですかー?」

『あ〜ごめんねー☆ あの子はまだ調整中なの☆』

「じゃあ今回はスノードロップ様だけですか」

『そそ』

「ところでさっきからなんで声だけなんですか?」

『なんでもなにも──』



「──こうやって突然目の前に現れたりとか、したいじゃん☆」


 (ちーん)


「ありゃ、気絶しちゃってる。ちょっと刺激が強すぎたかなー。でもね、語りがちゃんと語らなきゃ『どれくらいだった』とか『どんなタイミング』だとか、そういうのが分からなくなっちゃうから気をつけた方がいいよ。えいっ」

「え、え、今何が起きたんですか」

「キミの目の前に精神的ブラクラが如く突然現れてみたら気絶しちゃったから神の力で強制的に目覚めさせただけだよ☆」


 だけってなんだっけ。


「話は戻すけど、やっぱりコンテニューする?」



  [ はい ▷いいえ]



 お、ゲームでよく見るアレだ。はいを押せばいいんでしょーってあれ、触れないんだけど。


「これってどうやって『▷はい』にするんですか?」

「ハナから選ばせる気ゼロだから『▷はい』にはできないよ。この前『絶対に返す』って言った手前、後で返してはあげるからそこは安心してね」


 だったらなんで聞いてきたんだよ。


「いい質問だね☆ 折角ここに来てくれたのに早く帰ってもらうのは申し訳ないし、キミとちょっとお話したいって思ってたからってのが理由のはちょっとした遊び心ね」

「それで何を話すんですか?」

「なんも決めてないしキミが話題を出してくれたら助かるかも」


 このめんどくさい人は玉座から下民を見下ろすような体勢で空中に座っていた。偉そうなポーズではあったが、実際彼女は偉かった。偉そうなことにイライラするどころか、キラキラとした畏敬の念すらあった。だがそんな相手にでも、聞きたいことがスっと出てくることは無かった。うーんどうしようか……あそうだ。


「リサって無事ですか?」

「あの魔術師ちゃんなら体は無事。だけどキミが魔法で生き返らせないと、息を引き取ることになっちゃうかも」

「それってほぼ死んでるんじゃ」

「多分キミと一緒に落ちなければ彼女は帰らぬ人になってたね」


 あのときソフィーを退けてでも落ちて良かったことが分かると、私の背中を巡っていた緊張感はフェードアウトしていった。


「うーわ、さっきからなんかめんどくさい表現ばっか、やめてほしいな。なんか痛々しい」

「悪かったですね痛々しくて」


 露骨に嫌そうな顔がグサッときた。


「他に聞きたいこととかないの?」

「うーーん。そうですねぇ……」

「地の文であんな態度取ってるのにここだけ指摘するのは変だけど、流石に神様の前でうーんはダメなんじゃない? キミ、面接とか受けたことなかったりする?」

「今考えてるんです。あと受けたことないです」

「……意外とまりたんの言ってたことも一理あるかも☆ キミってすっごく失礼☆」


 うーーん(聞こえないフリ)。あ、そういえば私の身体って元々は私──じゃなくて僕とは関係ない他人のものなんだよな。前々から思ってたけど、どう考えても“僕”は“私”の立場を奪っちゃってるよな。あれ、だとしたらかなりヤバいことをしちゃっているのでは?


「いや、その辺は大丈夫。なんせルリア=シエスターの中に桜音ツバキを入れ込んだのはあたし。責任は全部あたしにあると言っても過言ではないからね、片付けはちゃんとしてるの」

「片付けって例えばどんなことを?」

「あの子をキミのいたあの世界に16歳の新しい生命として出来るだけ干渉少なめで転生させてあげたこととかかな☆」

「……でもルリアちゃん(自分のことちゃん付けで呼ぶの恥ずかしいな)はそれで満足してるんですか?」

「あの子ならバリ満足してるよ☆」

「でも私の仲間達はルリアさん(さんならあんまり恥ずかしくないかなって思ったけどこれでも恥ずかしいな)と冒険に出るはずだったのに……」

「その辺もオールオッケー☆ あたしが見える範囲のことはあの子にぜーんぶ話してあげてるから☆」

「……全部って全部ですか?」

「うん。夢の中で毎日報告してるよ。何を食べたかとか何の話をしたとかどこに行ったかとかぜーんぶね」

「私達のプライバシーないんですか!?」

「だって神様だもん。何やっても許されるの☆ それにあの子が“全部話せ”の一点張りだから仕方がなくってのもあるけどね」

「仕方がなくないですよー!」

「あの子、生粋の百合ヲタみたいでね。どんな話でも逃したくないみたいなの☆」

「私って百合ヲタだったの!?」


 人生で1度も言う機会がないセリフだなこれ。


「『自分が楽しむのではなく傍観者、つまり俗に言う壁として楽しみたい』とか言っちゃってるからね」

「想像以上にちゃんとヲタクなんですね……」

「この前なんか『やはり貴方様を信仰していて正解でした』なんて言ってくれちゃって☆」


 絶対あのエルフたちの話したときに言ってただろ。


「そうそう、確かそのときだったはず」

「やっぱりそうなんですね」

「てな訳であの子は大丈夫だから心配しなくてオッケー☆ それに考えすぎは体に毒って言うし、あんま悩まない方がいいよ☆」


 そこまで言うなら大丈夫か。


「んじゃ、ひと通り話し終えたしそろそろ返してあげるとしようかな☆」

「確か戻ってすぐにリザレクションすればリサは死なないんですよね?」

「もちもち☆ それじゃあね☆」


 前と同じ様に目の前がパッと変わった。そこは、暗い氷の壁に囲まれた場所だった。これ上に帰るの無理じゃないか……?

 周りを見渡しているとリサが倒れているのが見え、すぐに駆け寄って魔法を発動した。


「よし、待ってろよ。《リザレクション》!!」


 今まで使ってきた光魔法の強化版のような光がリサを包み込んだ。これで助けられたかな。


「ん……あれ、アタシ確かなんかに落ちて……」

「リサ!」


 私はリサに飛びついた。


「るりり……アタシは生きてるのよね?」

「そうだよ。助かってよかった……」

「るりりがいる限りアタシ達のパーティから死人は出ないわね」

「あぁ……」


 時が刻々と刻まれる。5秒経ち、3秒後には8秒経つ。そんな短く、細かく、私はその時間を噛み締めたかった。彼女といっしょに。


「るりり、これからどうしよう」

「とりあえず今はここで助けを待つしかないな」

「それじゃあヒマになっちゃうわね。そうね、雑談でもしましょう」

「んな唐突な」


 私はまた、話をしなければならないらしい。

「そういえばさっき川の向こうにお母様がいるみたいな夢見たわ」

「三途の川ってやつか」

「なにそれ?」

「アオイ辺りなら知ってると思うぞ」

「今教えてよー」

「そこまで言うなら簡単にでも言っとくか」

「うんうん」

「三途の川ってのは生死の境目の川みたいなので川の向こうに死者がいるんだよ」

「あぁ、だから『しっしっ』って追い払うような仕草してたのかしら」

「良い母親だったんだろうな」

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