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1−2 Morning sound

「ん……うぅ……」


 ここは──ファンタジーでよくある宿屋みたいなとこだけどこれは異世界に来れたってことなのか?


「ふわぁ………」


 あくびを出しながら僕は微かに違和感を感じた。


「なーんか変な感じ……あれ? ん? え?」


 声。声が高い、いや元々声は高い方だったのだけれど、今は高い声と言うよりも”かわいい声”と言った感じだ。


「……! いやまさかそんなわけないよな……」


 そう言いながら都合よく置いてある全身鏡の前に立ってみると──


「なっ! なななっ! なななな……!」


 ──そこにはピンク色の髪をした美少女が居た。



 〜5分後〜



 ふぅ…………。

 一応言っておくが事後ではない、一旦落ち着こうとしただけだ。

 どうやら僕は今、男の娘でも女装男子でも何でもない正真正銘の女の子ようだ。


 ……マジかよこれ。


 つまりこれからは美少女の姿で異世界生活が出来るってことだ。つまりもう人生勝ち組じゃないか。

 これは神さま仏さまに感謝しなければ──


 ──ホントにありがとうございまぁすっ!


 トントントン……


 と、お偉いさんに感謝してると部屋に一つしかないドアからノックの音がした。


「……お姉ちゃん居る?」


姉を呼ぶ可愛らしい声がした。どうやら今の自分には妹が居るらしい。

しかも呼び方がお姉ちゃんか……きっと姉思いのいい子なんだろうなぁ……。


「うん。いるよ〜」

「開けるね?」

「OK」


 ドアを開けて入ってきたのは今の僕にクリソツでツリ目気味、金髪に金目……分かりやすく言えば『黄色を基調とした僕の2Pカラーver.(ひんぬー)』と言ったような女の子だ。盗賊の様な服を着ているけど盗賊が職業なのだろうか。


「お姉ちゃんそろそろ出発しよ?」


 出発って事は冒険の途中だったのだろうか。


「わたしはもう準備できてるけど、お姉ちゃんはまだ着替えてないみたいだしわたしは部屋の外で待っとくね」


 彼女はそう言って部屋を出ていった。


 ……着替えるか。


 ムリだ。

 ムリだ、美少女の裸を合法的ではあるが見なければならないだなんて僕みたいな変態で童貞なヲタクにはムリだ、永遠にムリだ、きっとそうだ。だけど今は待ってもらってるのだ、これ以上待たせない方が良いだろう。それにこんな所で止まってたら華々しい異世界生活も出来ないのだ。よし脱ぐか。



 凄かった。普乳(※個人の感想です)と言ったところ……いやなんでもないです僕は何も言ってないしやってもいません。

 着替えててわかった事だが、どうやら僕は『プリースト』の職業らしい。まぁ要は後方支援系ってヤツだ。

 自分で職業が決められなかったのは少し残念な気もするが、後方支援は結構適任かも知れない。だって運動神経ゼロだもん。


 悲しくなってきた所であの妹ちゃんと合流するとしますか。ガチャりとな。

 僕がドアを開けると前から心配しているかの様な声が聞こえた。


「お姉ちゃん遅かったけど何かあったの?」

「ちょーっと着替えるのに手間がかかっただけだよ」


 そう言うと妹ちゃんは安心し、僕に手を差し伸べて近くの階段を降りようとした。


「じゃ、行こっかお姉ちゃん!」


 なんてかわいい子なんだろうか。こんな妹が欲しいランキングで今分かっている情報だけでも少なくとも8位ぐらい取れるのではないか? というか僕は妹ちゃんの名前を知らないのだがどうやって聞き出せば良いのだろうか。

 家族に『名前ってなんだっけ?』って聞くのはど〜考えてもおかしい。どうにかして聞く方法はないだろうか。


 そんなこと考えてるうちに宿屋の1階に着いてしまった。

 妹である彼女は宿屋で会計をしに行った。出る時にしか払ってはいけないルールでもあるのだろうか。

 よし、今のうちに名前を聞き出す方法を考えるとするか。


 ゲームだと必ずと言っていいほどある“ステータスが載っているプロフィール”的なのってやっぱりこの世界にもあるのだろうか? 仮にあったとしたらこっちもんだ。試しに自分で出せるかやってみるか……ええっとプロフィール! って感じで考えたら出るのかなってもう出てるじゃねぇか。


 僕の目の前には少し透けたプロフィールとしか言い様のないものがあった。

 名前、性別、年齢、職業、レベル、HP&MP、ステータスと本当にただのプロフィールだ。


 どうやら今の僕の名前は『ルリア』と言うらしい、性別は女の子で16歳、職業はプリースト……ん? このステータス、攻撃力、素早さ、体力、魔力、防御力、運全てが低い。そりゃもう異世界にわざわざ連れてきた意味あるんですかってぐらい低い。なんなんだよこれ! 転生前とほぼ同じじゃねぇか!


 一応そこまで頭が悪かったわけでもない普通の人間だったので知能のステータスは低くはなく、MP量は逆に結構というかめっちゃ多く見える。まぁそりゃ後方支援がMP不足とかシャレになんないからな。

 まさかステータスがほぼ同じ人の体に入れられるみたいな仕様なのだろうか。そうなんだとしたら勘弁してくださいよホントに。活躍できるかものすごーく不安になってきたんですけど。このままだとすぐ死ぬのが安易に予想できてしまう。


 と言うか妹ちゃんのプロフを見るのが本来の目的だろうが。なんで自分のプロフィール見て絶望してるんだよ僕は。

 とか考えてるうちに妹ちゃんは会計を済ませてこちらに向かってきている。


「あっお姉ちゃんプロフィール見てるの?」


 どうやら他の人にもプロフィールは見えているらしい。この流れで妹ちゃんのプロフィールを見せてもらえるんじゃないか?


 「ちょっと見てただけ。そういえば今のステータス気になるからプロフィール見ていい?」

 「うんおっけー」

 そう言うとプロフィールが出てきた。案外すんなり行けた。やっぱり姉妹には信頼関係とかそう言うのがあるのだろうか。


 どうやら妹ちゃんは『セツナ』と言う名前らしい、職業は『シーフ』、要するに盗賊らしい。歳は同じみたいなので双子なのだろう。そして素早さが群を抜けて高い、流石シーフと言ったところだ。


「やっぱりセツナは素早さが凄いなぁ」

「そっそれほどでもないよ。お姉ちゃんの方が凄いよ、あんなにMPが多い人なんて10年に1人いるかいないかだよ」


 MPめっちゃ多いとは思ったけどそこまで多いのかよ。


「そんじゃ行こっかお姉ちゃん!」


 そう言いながらプロフィールを消し、セツナは僕の手を優しく掴み歩き出した。

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