1−1 プ口口ーグ
僕は死んだ。
突然過ぎる出来事だった。
いや──突然過ぎたのは死んだことというより死んだ理由だ。僕の記憶が正しいなら、僕は雷に打たれて死んだ。こう、どかーんと来た。もう痛いだとかそういうレベルじゃないよあれは、こうして僕みたいな一般人が死んでるんだもん。
今はなんだかよく分からないんだけど果てのない穴に落ちて行ってるみたいにずーっと落ち続けてる。このまま僕はどうなってしまうんだろう? 天国や地獄に行かされるの? それともマンガやアニメなんかみたいに死んだから異世界転生~~だとかもあるのだろうか?
そう考えていると徐々に床のようなものが見えてkって床!? これヤバくね! あんなにずっと落ちてってたんだから絶対骨折するだろ!!! 死ぬぞ!!!! もう死んでるけど!!!!!
「ってそんなこと言ってる場合じゃねええええええ!!!!!」
(ぽすっ)
「なんだ今の音……えっ? あれぇ? 痛くない?」
どこかケガしていないかと確認していると暗闇の奥から人影が見えてきた。
「そりゃぁ桜音ツバキさん──ケガはしませんよ。死んじゃってるんですから」
その声の主は黒髪ツインテールで額にゴーグルを着けている少女だった。機械音の様な声だけどロボットなのか……? 桜音ツバキというのは僕の名前なのだけど何故彼女は知っているのだろう。
「一体あなたは何者なんですか?」
「私は簡単に言うと異世界へと死んだ人々を導く神の遣いでございます」
「えっえっっええ!?」
異世界転生!? しかも神の遣いって。いやよぉーく考えてみろ、死んで意識がある時点で現実じゃあありえない状況なんだよ──つまり何が起きてもおかしくないんじゃないか?
なーんか都合いい展開だなぁ……。
「まぁ都合いい事に越したことはないか!」
「失礼な事言いますねあなた……」
「いや僕結構こういう異世界転生モノとか好きなんですよ。あるある展開ですけど」
そういえば言ってなかったけれど僕は生前、どこにでもいるような普通のヲタクな高校一年生だったのです。
「ところで黒髪さんはなんて名前なんですか?」
と、突然名前を聞いてみる。
「死人にしては変にグイグイきますね──私の名前は『まりたん』ですよ。後あなたも黒髪です」
ふざけた名前のロボは心做しかニヤニヤしながら言った。
「先程も申した様に、私は死んだ人々を異世界へと導く……もとい転生させる役割を持つものなのですが……ふふっ……ふっ……ww」
「あのなんで必死に笑いこらえてるんですか? 僕なんか変なことしちゃいました?」
「いやぁ……ついつい36分ぐらい前の話なんですけど……プフッw元々転生時に何か持って行けたんですよ。概念とかアイテムとか……フッフッwそれで私の主が言ったんです『今更だけど【モンスターを消す】って感じの概念作る様な輩が現れたらおもんなくない?』と。なのでププッw規則が変わったんですよ」
「は?」
こいつずっと笑いこらえてやがる……すげー腹立つ。
「規則の出来た理由は百歩譲る。でもそんなタイミング悪い事あるか??? それに36分前ってなんだよ微妙過ぎだろ!!!!」
流石にこれはキレるわ。
「一旦落ち着いて下さい桜音ツバキさん。深呼吸、深呼吸」
すーーーーーはーーーーーー。
「どうです?落ち着きました?」
いつの間にか笑い終わってるクソロボは煽るように言い放ってきた。
「おいクソロボお前のせいで怒ってんだよ!」
そしてクソロボは少したじろぎながらもこう言い放った。
「だァれがクソロボじゃ表出ろ骨折るぞ!」
急にクソ怖い。情緒どうなってんの。(僕が言えた事じゃないけど)
「あーもう気が狂う! 桜音ツバキさん……あなたはとっとと異世界行け!!!!」
怖すぎ。
と言うか結局異世界には行けるのか。行かせて貰えなかったらどうなってたんだろうと思ってたけど──ん? 何か明るくない?
「なんか周りがすごい光ってるんですけどなんですかこれ」
「言ったじゃないですか、異世界に行くんですよ」
それにしては光すぎじゃないかって眩しっ。
「それじゃ良い異世界ライフを〜!」
「なんだ〜〜怖い人かと思ってたけど普通にいい人なんですね」
「あぁ?」
「なんでもないですすみませんでした」
「……」
「あの、何も仰らないのが一番怖いのですけれど……」
そして僕はそのまま光に包まれてしまった…………。