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魔王は勇者を猫可愛がりする。猫だけに(魔王が)  作者: 山吹弓美


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096.モノクローム

 魔法ビーム攻撃が終わったので安心、してたのがちょっとまずかった。


「っ!」

「危ない!」


 一瞬なにかの気配を感じて、とっさにそばの椅子を蹴り飛ばした……ら、グレーの影にぶつかった。

 グレーかよ。コクタンさんとこの影さんたちは真っ黒だぞ、お前何者だよ。


「アキラ殿、ロンカ姫!」

「うわっ」


 と、私たちとグレーの影の間にその黒い影さんがにゅっと出現した。おお、グレーがあからさまに敵意抱いたっぽいぞ。

 ということは敵か。餅の国か第二王妃か、どっちかから派遣されたな。


「影さん? こっちのだよね」

「まあまあ、お色が違うのですね」


 うん、たしかにそうなんだけどロンカ姫、今言葉で言うことじゃない。ま、大丈夫みたいだからいいんだけど。

 そうしてにゅにゅにゅ、と黒とグレーの影が次々に生えてくる。この部屋、クロさんの部屋よりは狭いんだからね? あんまり出てくるんじゃないよ、まったく。


「大丈夫でございますか」

「大丈夫。ありがとね」

「わたくしも、大丈夫ですわ」


 黒の影さんたちが、こっちを囲むように配置される。その周りをグレーの影が取り囲み……やっぱり狭いよ、この部屋。

 それはそれとして、私もやらなきゃいけないよね、この状況。ここに来てから、カレンさんにちゃんと剣を教えてもらったんだから。


「私はいいから、お姫様中心で」

「承知」


 影さんに短く言うと、黒の影さんたちは頷いてロンカ姫の方を手厚く守ってくれた。お姫様はおとなしくしててくれれば、きっと大丈夫だから。


「あ、アキラちゃん……」

「大丈夫」


 涙目になってるロンカ姫に頷いてみせて、この部屋に置いてあった木刀を手に取る。机のそばとか扉の裏とか、実はあちこちに仕込んであるんだよねえへへへ。


「クロさんもリューミさんもいないからって、狙ってきたわけかあ。冗談じゃないわよ」


 ひとまず睨んでやると、グレー軍団が一歩後ずさった。いやいや、何でそこでビビるのよ。襲ってきたの、そっちのほうじゃないの。

 まあいいけどね、こっちがあんたたちより上だってところを見せてやらないと。一応私、勇者らしいしさ。


「私、戦闘には慣れてないからね。逃げてくれないと、変なとこ殴るわよお!」

「ぎゃあっ!」


 黒の影さんの間から割って出て、おるあーと勢い任せに木刀振り下ろす。あれ、見事にグレーが一人沈んだぞ。

 狭くて避けられないのか、私が早いのか。どっちでもいいけど。


「うわああっ!」

「はいもーいっちょお!」


 今度は突きで、もうひとり沈めた。ああ、どうやら私が早いらしい。比較対象がカレンさんだから、まるで気づかなかった。

 いつの間にか、それなりに戦えるようにはなっているみたい。実戦が初めてだから、そこだけが不安なんだけどさ。


「こいつを先に潰せ!」

「そうは参りませんぞ!」


 いきり立ったグレー軍団に対し、ロンカ姫を守る数名を残して黒軍団も突っ込む。一応お互いに武器持ってるみたいなんだけど、黒は黒だしグレーはグレーだしで見分けがつかないんだよな。そういう武器なのか、持ったら同じ色になるのか。

 いずれにしろ、影のひとたちがこういうお仕事する理由がいくつも見えてきてこわいなあ。つか、どっから入ってきたこんちくしょうめ。


「お手伝いします!」

「あ、助かる!」


 と、ここでドーコさんが参戦してきた。武器は持たず、両手を地について……ああ、めっちゃ犬が喧嘩する態勢だ。そりゃドーコさん、犬だけど。クロさんが猫なのと同じくらいには。


「がああっ!」

「こんのお!」


 とはいえ、メイドさんにばかり戦わせるわけにもいかないので私も再び木刀を突き出し、横薙ぎにし、ついでに大上段から振り下ろし。

 グレー軍団も応戦してくるんだけど、何かゆっくりとした動きが見えるんだよなあ。これも、カレンさんの修行の賜物ってやつか。


「はあっ!」

「こちらに来るな!」


 グレーと黒の影同士の戦闘は……何と言うか、影絵にしか見えないわけで。たまに火花散ったりするから、武器はやっぱり金属製とかなのかね。出てくる血も黒いし、グレーだし。


「不味いですね!」

「いや食べなくていいから!」


 一方ドーコさんは犬の闘い方してるから、つまり敵に飛びかかっては引っ掻いたり噛んだりしてるわけだ。で、今のは噛み付いたときの感想。

 不味いって、そもそも影って味するんだ? まあ、一応実体のある種族だしなあ。っていやいやそうじゃなくて。


「姫様、ここから動かないでください!」

「皆さん、大丈夫ですか? ごめんなさいっ」

「というか、手応えイマイチ!」

「ですよねー! やっぱ美味しくないです!」


 何とか全部叩き潰すのに、ちょっと時間がかかったかもしれない。あとこちらのメイドさんたちは、必死にロンカ姫を守ってくれてた。後で褒めて傷の治療とかしてあげないとな。

 それと、なんだかんだ言いつつじっととどまって邪魔にならなかったロンカ姫にも。いや、だって非戦闘員に下手に動かれるとほんと、邪魔でしょ?


「あ、アキラちゃん!」

「え」


 そんな事考えてたから、一瞬反応が遅れた。

 こっそり隠れてたグレーの小さな影が突き出してくる、グレーの鋭い先端に。

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