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魔王は勇者を猫可愛がりする。猫だけに(魔王が)  作者: 山吹弓美


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090.細巻きの山

「勝利ー!」

「勝ちましたー!」

「しゃーい!」

「皆様、すごいですわ! マスダくん、よく頑張りました!」


 みんなで拳突き上げて、勝利のポーズなど取ってみる。ロンカ姫は手のひらに載せたマスダくんを、よしよしとしてるんだよね。ああ可愛い。

 二人と一匹で、えーと都合十五人の敵は叩き潰すことができた。どこから生えてきたんだこの人数、途中で追加があっただろ絶対。

 獣人メイドさんたちが見事に巻き上げてくれたせいで、何というかお寿司の細巻きが山積みになってる状態。笑えるー。


「にしても、ビーム出せるの大きいのだけじゃなかったんだ」

「ビーム?」

「あ、いや、魔法」


 ついついマスダくんの方見て言ってしまったけど、ビームって知らないみたいだな。魔法の光、とでも言う感じなんだろうか。まあいいや。

 でもほんと、カレンさんとこのでっかい君たちがぶっかますのならともかく、この小さいマスダくんが魔法出すなんてねえ。しかも、ダメージがビームとかで出るやつじゃなくて殴りで出るやつ。しかし、何であんなのが出るんだろう?


「魔法を吐き出すのは、主とある程度仲良くなれた伝書蛇なら結構可能って聞きましたけど」


 ミカさんがそういう事を言うんだけど、その言い方からするとセンダくんはできないみたいじゃない? ご主人か伝書蛇のどっちかか、相性とかの関係もあるのかしらね。


「そうすると、ロンカ姫とマスダくんってえらく仲良くなったんだねえ」

「そうですわねえ。ありがとうございます、マスダくん」

「しゃしゃい」


 うん、にこにこ顔のロンカ姫と上機嫌のマスダくん、すっかり仲良くなっちゃってる。というか、会話成立してる気がする。横から見てるとわかんないんだけどね。


「失礼する」


 こここん、と素早いノックの直後に扉が開かれた。あ、全身真っ黒人型、ひと目で分かるコクタンさんだ。


「コクタンさん?」

「あら、こちらの方は」


 おっと、ロンカ姫は初対面か。急いで「クロさんの補佐役の一人、忍びのトップやってるコクタンさん」と紹介する。


「まあ。スメラギ・ロンカですわ。お世話になっております」

「は。失礼させていただいても」

「ええ、どうぞ。今、アキラちゃんとミカちゃんとマスダくんのおかげで助かったところですの」


 ふたりともマイペースだな、おい。まあ、事態も収集したところだしいいけどさ、と思ってコクタンさんを室内に招き入れる。

 細巻きの山を見てコクタンさんは、呆れたように肩をすくめた。表情とかわかんないもんなあ、この人。


「これは……何というか」

「コクタンさん、状況説明は必要ですか?」

「一応、確認のために頼む」

「了解」


 ざっとした説明を、ミカさんがコクタンさんにしてくれる。それを聞いて、コクタンさんはうーむとうなりながら腕を組んだ。多分、細巻きの刺客軍団を睨みつけてたりするんだろうなあ。何本かビクッと震えてるから。


「外面が良い者ばかりを選んだのでしょうね。コクタン様、後はよろしくお願いできますかしら」

「おまかせを。連れて行け!」


 ロンカ姫のお願いを受け入れて、コクタンさんが鋭い声を上げた。次の瞬間、コクタンさんよりも小柄な真っ黒軍団がどこからか湧いて出て、細巻きを二人で一本ずつ担ぎ上げる。


「!??」


 えっほ、えっほと運ばれていく細巻きを、私たちはぽかーんと眺めている。マスダくんまで口開けてぽかーん、ってこういうところは人間も蛇も一緒なのかな。蛇が大口開けてるのって、冗談抜きで顎外れてるんじゃないかな、あれ。

 と、コクタンさんがこっちの間抜け顔に気がついた。首を傾げて尋ねてくる。


「ああ、我が配下を見るのは初めてだったか」

「こういう人たちは初めてだね……なるほど、忍びにはぴったりだよねえ」

「私も、ちゃんと見るのは多分初めてです。そうそうお目にかかる機会、ないですし」


 いやもう、いきなりどこからか湧いてくるのはすごいよね。というか、敵のメイドさんたちもそうだったんだけどそれまでどこにいたんだろ、って感じだった。

 その割に、全部終わってから現れたのはちょっとアレなんだけど……まあ、そこら辺はクロさんとかリューミさんが突き詰めればいいことだ。私たちは、後で話を聞けばいいしね。


「理解してもらえて何よりだ。配下は少し残しておく、済まなかった」

「いいえ。国から連れてきた信頼する者たちが、このような動きをするとはわたくしも思っていませんでしたもの。お手数をおかけしましたわ」

「そう言っていただけると、こちらもありがたい。では」


 それより何より、狙われた本人であるロンカ姫がああ言ってるんだもんね。私たちがとやかく言うことじゃない、と思う。

 深々と頭を下げて去っていくコクタンさんと、その部下たちが細巻き運んでいく様子を私たちは、ぼーっと見送ってしまっていた。その後部屋片付けが大変になったことはまあ、言うまでもないよね!

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