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魔王は勇者を猫可愛がりする。猫だけに(魔王が)  作者: 山吹弓美


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087.会議はもめたらしい

「うにゃーん」


 会議から戻ってきたクロさんは、ひと目で分かるレベルのお疲れ様だった。具体的に言うと、私もリアルじゃ見たことない虎の敷物みたいな感じでベッドにうつ伏せ木の字である。尻尾も耳もしおしおと垂れてるし。


「俺は疲れたぞー、もふれー」

「はいはい」


 そのしおしおの尻尾をぱったん、と一度だけ強く打ったので、しょうがねえなーと思って枕元に入り込んでやる。もふもふ、うむこの耳の薄い皮膚の感触が冷たくていい。ここ熱かったら、単純にクロさんが熱出してるわけだけど。


「疲れたってことは、会議揉めたんですか? クロ様」

「おう。古株の連中がな、何でさっさとモイチノを攻撃しないんだとうるさくてよ」


 お茶を運びながらのミカさんの質問に、クロさんはもう一つ尻尾を揺らしてから答えた。あー、餅の国絡みの会議だったんだ。ほんとお疲れ様。

 というか、こちらから餅の国攻撃するの? それ、危なくない?


「それやったら、餅の国が魔族は横暴だーとか言って逆に攻め込んでこない?」

「おお、さすがはアキラ。よく分かるな……ま、こっちの推測だが」

「いや、餅の国ってそのくらいするでしょ」


 クロさんの推測が、外れてるとは全く思ってない。何しろ、横暴なのは私をよその世界から引っ張り込んできて以下略、の悪行を働いた餅の国の方だ。


「イコンの過激派とか、シロガネの第二王妃一派とかが便乗して来そうですしねえ」

「そうそう。その前に叩き潰せるほど、俺の軍隊は強くはないしな」

「カレンさん一人放り込んだら、終わらない?」

「終わるがな、その後が問題だ」


 ミカさんの意見に答えたクロさんに、ついついいきなり最終兵器始動について尋ねてみる。終わるのは餅の国だろうけど、その後って。


「おそらく、シロガネ第二王妃勢力とは争うことになる。連中、モイチノ贔屓なのは間違いないからな」


 なるほど。シロガネ国の中にいる敵、ロンカ姫の敵でもある連中か。


「俺は、シロガネとまで喧嘩はしたくない。国王と仲が悪いわけではないし、第二王妃の勢力を排除できればどうにかなるはずだしな」


 その相手に対してクロさんは、そう考えているらしい。うんまあ、第二王妃周り以外は悪い人たちじゃない、らしい、し。それに、ロンカ姫の祖国だもんね。多分お姫様、凹むよね。凹むだけで済むわけないんだけど。


「ガチで戦争になった場合、どちらが勝つにせよ被害が大きすぎる。その後の復興が面倒だ」

「そうなんだ」

「国同士の戦争って、始めるのは意外と簡単ですけど終わらせるのと後始末が面倒、という話は聞きましたね」

「最低でも、責任問題とか賠償とかあるからな」


 うわ、まじか。さすがにミカさんはそういうこと知ってるみたいだけど、私は知らなかった。そういうの、授業とかでもないと縁ない話だし。ああ、でも負けたら領地取られたりお金取られたりってことはあるんだっけ?


「モイチノ王国がこそこそとこっちにちょっかいを出してくるのは、こちらが先に手を出したことにしたいからだよ。さっきアキラも言ったが、魔族の暴力性を周辺国にアピールして排除する理由付けをしたいんだ」


 伸ばしてきた手の肉球をもふもふさせてもらいながら、私はクロさんの話を聞く。何しろ当事者だし、国王陛下だ。こういうお話には詳しいし。

 で、餅の国がせこい真似する理由はそこらへんか。私使ったりスパイ使ったり、ほんとこすいやり方だよねえ。

 でもまあ、自分が悪くないと主張したいからのやり方なんだろうけど、悪いのそっちじゃないか。腹立つ。


「だから、こっちは必死で我慢してる。カレンがシロガネや他の国に対して逆アピールしてくれてるのも、モイチノの思惑をかわしたいからだしな」


 うわあ。

 つまり、お互いに早く相手が手を出すことを狙って煽り合いしてるわけか。我慢比べともいう。

 カレンさんが自分でシロガネ国まで顔見せに行ったのは、ラーナン魔王国が悪いわけじゃないってアピールをしにいったのもあるんだろう。それを、第二王妃の目の前でやったんだろうなあの人。


「いい加減じれて、手を出してくれるとありがたいんですけどねえ。隠密部隊ごときじゃ、彼らは該当部隊の独断とか言ってかわすでしょうし」

「ガチの部隊連れてきて暴れてくれると、助かるわけかあ」

「少数のスパイでも、隠密部隊でも無理だったわけですからね。そろそろブチギレてくれたほうが、話が早いです」


 地味にミカさん、武闘派かもしれない。確かに、さっさと餅の国が逆ギレかまして戦争だー、って攻撃してきてくれればクロさんも、よし反撃だーって行けるんだろうしなあ。

 ……戦争、か。

 テレビやインターネットの向こう側でしか見たことがない。私、そのときになっても平気なんだろうか。


「心配すんな。お世話係は城にいろ」


 ふに、と私の両頬を肉球で包み込んで、クロさんはそう言った。いつの間に仰向けになったんだ、この猫魔王。

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