086.女子会
「どう思う?」
「どう思う、って聞かれてもねえ。私じゃないですし」
クロさんとの今後の付き合い方について、ミカさんに相談してみたらこんなふうに言われた。
なお場所はロンカ姫の執務室であり、クロさんはただいま会議中なので留守。というわけで、私たちくらいしか部屋にいないので相談できたわけなんだけど。
「……というか、いい加減はっきり考えてくださいな。というか、自覚しましょうよ」
「自覚?」
え、いや、何でその単語が出てくるんだミカさん。自覚ってことは、私無自覚でクロさんのこと気に入ってるってことか?
でも、それなら何でミカさんはそういうことが分かるんだろう?
「アキラさん、クロ様なでもふしてるときのでれでれ顔、すごいんですから」
「え、そんなに顔崩れてる?」
「はい、それはもう」
「まーじーかー」
そこかあああああ!
いや、猫もふってるときに顔が崩れる自覚は少しあったけど、どうやら少しじゃなかったらしい。
外から見るとクロさんラブラブ、とかそういうふうに見えるくらいでれでれしてるんだろうか、私。
「わたしは、お仕事中のアキラちゃんのお顔は存じ上げませんけれど。でも」
ほにゃ、と笑顔を見せながら部屋の主であるロンカ姫も参戦してくる。う、これはどう考えてもミカさん側だな。親戚だからとか、そういうこと関係なしに。
「クロ様のお話しておられるときのアキラちゃんのお顔ってとってもふわふわ幸せそうで、ああ好きなんだなあと」
うわあやっぱり、と私は自分の顔を抑える。多分真っ赤になってるんじゃないかな、こっ恥ずかしさで。
「ロンカ姫にまでそんな事言われた!」
「だって、そういうふうにしか見えなかったものですから」
「ほらね。私より会う機会少ないロンカ姫にまで、こんなこと言われてるんですから」
「あがー」
何だこの親戚コンビ、もしかして私より私のこと分かってるんじゃね? いや、好意とかってそういうものなのかもしれないけどさ。
というかマジか私、あの猫好きかー。いや、猫は大好きだけどその好きとは違う意味で、うん。
「てゆーかさ、どうすればいいと思う?」
「どうすれば、とは?」
「今後、どうやっておつきあいすべきかとか」
実際のところ、今後どうすればいいかわからん。わからんので、ミカさんやロンカ姫に聞くわけだ。
この好きの方向性、自分で見定めるのにまだ時間かかりそうだしさ。それまで、さて私はクロさんとどうやって向き合うべきか。
「え、普通にいつものようにもふもふふにふにふわふわすればいいのでは」
「ミカちゃんがちょっと遠慮するだけですよねー」
「そうそう、私は部屋の掃除とかしてますんでごゆっくり」
「なさってることは、いつもと変わらないですしねえ」
「クロ様のお手入れとかマッサージとかですもんね」
それに対する親戚コンビの答えは、つまりいつもどおりにしやがれってことかよ。確かに、いきなり態度変えたらおかしいけどさ。
ミカさんが遠慮するってことは、クロさんのもふもふを私が独占しろってこと?
え?
「く、クロさんを独占……」
「アキラちゃん、目がキラキラ輝いてますよ」
「わかりますけどね。お気に入りのあのふわふわ長毛種を一人でもふれるわけですから」
「いや、あの毛皮を独占できると聞けば悪くはない……悪くはないけど」
ミカさんが何か言ってるけど気にしない。そうか、あの巨大もふもふふわふわふにふにふかふか長毛種黒猫魔王を、私が、独占できるのか……いやほんと、周囲の目さえ気にしなければ悪くない、むしろ最高。
ところで、私……とミカさんとロンカ姫が勝手に盛り上がってるけど、これ大丈夫なのかな?
「リューミさんはともかく、他のひとたちはどう思うんだろ?」
「いや、大丈夫じゃないですか? 今までクロ様、浮いた話なかったですし」
「そうみたいですわね。それに多分、クロ様もまんざらでもないと思いますから」
「うにゃっ」
あ、何か外堀ガッツリ埋められた上に踏み固められたっぽい。あと猫魔王、仮にも魔王ならハーレムの一つも……ないな、うん。
強いて言うなら私たちお世話係がそれに近いんだろうけど、本気でお世話係だからな私たち。毛づくろいしたりマッサージしたりおやつ一緒に食べたり一緒に昼寝したり……あれ、お世話かこれ?
「こういっちゃアレですけど、魔族の種族の中からお妃様選ぶとどうしてもその種族を贔屓したりとか、そういう疑惑が出てきちゃいますからね。過去の国王には露骨にそういう方もおられたとかで」
「わたしも、そう言ったお話は伺っておりますわ。最近の歴代ラーナン国王陛下におかれましてはそう言ったこともなくなってきた、と伺っておりますけれど、アキラちゃんが選ばれれば少なくとも種族間の抗争は収まるかと」
ミカさんもロンカ姫も、結構能天気な考え方するんだなあ。
私が選ばれたからって人間贔屓になるんじゃないか、って考える人もいると思うんだけど!




