表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王は勇者を猫可愛がりする。猫だけに(魔王が)  作者: 山吹弓美


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/101

085.副官は煽る、魔王の恋心を

「うにゃー!」


 報告のために執務室を訪れた私の前で、魔王様はとんでもなくでれでれなお顔を晒しておられた。あー、これは何やら良いことがあったな? 主に、トモドー・アキラ殿関係で。


「浮かれ過ぎです、魔王様」

「これが浮かれずにいられるかー」


 ぱったん、ぱったんと尻尾がリズミカルに椅子を叩く。うむ、猫獣人である魔王様の上機嫌顔は大変愛らしいものであるが、あまり人前に晒すのもいかがなものかと思う。いや、この室内には私と魔王様しかいないけれど。


「だってだって、アキラが俺のことちょっと気にしてくれてるんだぞ!」

「はいはいわかりましたから」


 ああ、やはりアキラ殿絡みだったか。しかし、ここまで上機嫌になる理由が『ちょっと気にしてくれた』からというのはどうなのだろう。それより何より。


「というか、いつの間にそこまで気になさってたんですか」

「いや、あいつ喉ゴロゴロとかもふもふとか上手いんだよ。それでつい」

「そこですか」


 それは好かれたと言うよりは手懐けられた、と言ったほうが正しいのではなかろうか。考えるだけで、口に出すことはないが。

 アキラ殿がもともとおられた世界には動物としての猫はいたようだし、それらと扱いが同じであれば……いや、考えるまい。


「何を言う。グルーミングは重要だぞ、特に俺みたいな長毛種には」

「まあ、たしかに」


 ……よもやアキラ殿、元の世界で動物の猫のグルーミング経験があるのであろうか?

 魔王様の毛並みは長く、扱いを一つ間違えるともつれたり絡んだり切れたり……先代陛下などは晩年、枝毛が増えたとおっしゃっておられたっけ。


「魔王の毛皮がボサボサだったりもつれてたりしたら、大変恥ずかしいですからね」

「だろ」


 そう言った外見が恥ずかしいのは代々同じようで、魔王様は私の言葉に真面目な顔をして頷いてくださった。人前に出るときは基本的に鎧兜で全身を覆われるのだが、それでもその下の毛並みが整っていないのはやはり嫌であるらしい。きちんと風呂も入られるし。

 さて……アキラ殿の意思はどうかわからないが、念のためこちらの方はいろいろと進めておこう。主に、魔王様のお考えなどにそって。

 それと、だ。


「王妃を娶られても、お世話係は続投ですからね」


 実のところ、『魔王様のお世話係』には『後宮の構成員』という意味合いもある。故に女性を基本とし、長の意向があれば男性やその他の者を係につけることになっている。そういうしきたりらしいが、あまり細かいことまでは覚えていない。

 これまでのお世話係がどうあったかはともかく、今のラーナン魔王国の長は魔王クロ様であり、彼のお世話係は彼の意向に沿うものであるのだから。

 そして、お世話係の中から王妃が選ばれた場合、それ以外の者たちとの関わり合いに問題が出ないか、ということになる。いやまあ、アキラ殿であれば心配はないと思うのだが。


「そこも大丈夫だろ。アキラはなんだかんだで皆と仲いいし」

「カサノ殿やユーア殿とも交流がありますようで」

「ああ」


 魔王様のご意見も同じようである。

 自分と同じ昼当番であり共に仕事をするミカ殿やハナコ殿とはもちろん、本来であれば交代時に情報交換をする程度である夜当番のカサノ殿やユーア殿とも仲が良いアキラ殿は、お世話係から一人選ぶとすればもちろん彼女であろうと思える人物だ。

 それに人間であるゆえに、種族間の争いの引き金にはなりにくい。そもそも我が国では人間の地位はそれほど高くなく、それ以前に数自体が少ないからだ。


「人間だし、そもそも異世界の存在だ。俺の毛づくろいは上手いし、他のお世話係とも仲がいい。そんでもって、肉球でふにふにしたときのとろけるような笑顔がな、とっても可愛いんだぞ」

「……最後のそれだけを理由としてあげられたほうが、きっとアキラ殿は納得してくださるかと」

「そうかー?」


 ああ、魔王様ってきっと女心とか理解しておられない。いや、そういうふうに育ててしまったのは我ら配下か。済まないアキラ殿、この巨大黒猫魔王様相手に今後も苦労されることと思う。頑張れ。


「そうですよ。笑顔が可愛いと素直におっしゃれば、アキラ殿は喜ぶか顔を真っ赤にして照れるかです」

「む。照れる顔は見てみたいぞ俺」


 おお、ひげをひくひくと震わせて魔王様が興味を持たれたようだ。よしよし、少しは普通に仲を進展させることができるだろうか。……いや、何というか魔物が飼い主になつく感じというか……声には出すまい、魔王様に失礼だ。


「なあ、手のひらに額ぐりぐりしたらアキラは喜ぶと思うか?」

「……喜ぶんじゃないですかね。ただ、魔王様は力がお強いので加減なさらないといけませんよ」

「だよなあ。普通の人間って、力ないんだよなあ」

「その代わりに、数と頭で生き延びてきた種族ですからね」


 魔王様は、アキラ殿やロンカ姫にお会いする前に知っていた人間がカサイの当主だったりミカ殿だったりするせいで、人間だって自分に太刀打ちできる力の持ち主なんだと思いこんでいたフシがある。

 んなわけあるかい、とカレン殿にしばかれミカ殿にお説教されて認識は改まりつつあるが、その最たる理由がアキラ殿、その人である。あれが基本……よりももうちょっと強いですが、ええ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ