079.報告待ちの休憩中
「徒歩で半日かかる距離に魔法ビーム攻撃」
「まあ、そういうことだ。びーむとやらが何かわからんが」
クロさんが教えてくれた話を、私なりにまとめるとそうなる。
というか、大砲とかが弓なりに飛んでいくのは何となく分かるんだけど、ビームもそうなんだ?
「アキラさんの世界、そういうのあったんですか?」
「ないないないない、そもそも魔法がない世界だし」
「ほえ?」
ミカさんは私の元の世界なんて知らないけど、さすがにこっちと違うことは分かるみたい。なので、魔法がないことを言うと目を丸くされた。「それでどうやって生活してたんですか?」って言われても、私も詳しい原理とか知らないから困る。
「ただ、物語の中でそういうのはたくさんあったから。だから何となく、魔法がある世界ってのも理解できるし」
「なるほどねえ」
小説や童話ならともかく、テレビとかインターネット配信とか言ってもわかんないだろうからひっくるめて『物語』。そのくらい考えることは私にだってできるから、そうやって説明するとミカさんが頷いた。よしよし。
さて。
「それで今、リューミさん以下バタバタしてるわけだ」
「そういうこと。俺はいても仕方ないしなー」
「なんてーか、さすが王様だよね。お疲れ様」
鎧兜を脱ぎ散らかした我らが猫魔王様は、ただいまベッドの上でうつ伏せ木の字である。尻尾がばったんばったんと、めっちゃ不満表明中だ。いやまあ、味方の偵察部隊送り出した直後にいきなり遠くに敵が出ましたちゅどーん、だしなあ。マジおつかれ。
「調査報告は早くても数時間後ですものねえ。その間は少しでも休んでおかないと、後に響きますし」
ミカさんの言う通り。何でもカレンさんが……というかサンジローがビームぶち当てたその場所までグリフィンやワイバーンで往復しても、そのくらいかかるらしい。まあ、現場検証とかしなくちゃいけないもんな。往復するための時間だけで、調査報告が来るわけじゃないんだから。
「というか、攻撃した場所大丈夫だったの? 街とか村とか、田んぼとか」
「この国、あまり耕作には向いてないんだよな。あまり広い田畑は早々ないし、攻撃後に確認したが荒野らしいぞ」
「というか、荒れ地にいるところを狙って撃ち込んだんでしょう?」
「おそらくな。カレンのことだ、そのくらいは考えてるだろう」
「そっか。よかった」
もう一つの心配は、どうも大丈夫っぽい。そうだよね、カレンさんが何も考えずにぶちかましたわけないよね……多分。
サンジローだってカレンさんの伝書蛇なんだし、それくらい考えてくれてる……のかな? ん?
ま、いっか。終わったことだし。実際被害が出てたら多分、クロさんが怒るだろうからね。
で、クロさんは知らないだろう情報を、私から流す。私たちが、ロンカ姫のところに行ってたときにあった出来事だから。
「ロンカ姫のところのメイドさんが連れてかれたけど、もしかしてその関係?」
「お、捕まえたのか」
うん、ほんとに知らなかったみたい。
お姫様のところに最初来たときからいたメイドさんが、いきなり入ってきた兵士さんたちに連れて行かれたんだよねえ。「情報漏洩の疑いがありますので、ご同行願います」だったっけか。私たちお茶会トリオや当のメイドさん以外の使用人さんたちは、目を丸くしてそれを見送るだけだったな、うん。
「あれらもスパイだろーなあって踏んでたんだが、引っ張ってったってことは多分証拠が取れたんだろ。それも後で報告が来るはずだ」
「まあ、ロンカ姫をこっちに送り込んできたのが第二王妃、みたいですもんねえ」
なるほど、確証がなくて泳がせてたと。刑事ドラマで見たような展開の気がするなあ……これは現実だけどね。
ああ、でも第二王妃がお姫様をこっちに放り込んできたんなら、そのお供につけた連中が第二王妃の手の者ってのは十分あることだよね。それで、スパイだと見当付けて証拠を探っていたってところか。何かお疲れ様。
そういうのを最終的に取りまとめるのがリューミさん、そしてクロさんなんだよなあ。
「細かい作業は配下に任せるさ。俺の仕事は、国の者がやったことの責任を取ることだからな」
そして国王、魔王であるクロさんは、その責任をしっかり果たしている……と思うんだよな。いや、私の知ってるクロさんって基本的にリラックスのんびり大型猫だからさ。でも、鎧兜つけた正装スタイルはめっちゃかっこよかったぞ。
その分、今毛並みが乱れてるので二人でブラッシング中なんだけど。あ、またもつれてる。これ、切らなきゃいけないかもなあ。
「それまでは、のんびりしててくださいね。クロ様」
「そうそう。クロさんのお仕事は報告書をしっかり読んでそこにサインすること、だしね」
「うにゅー」
……だーかーらー、猫がのびーっとしてるの見るとかっこいいが全部吹き飛ぶんだってば。伸びてぶるぶる震えてベッドに寝直す猫なんて可愛い、その一言でしか表せないんだから。




