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魔王は勇者を猫可愛がりする。猫だけに(魔王が)  作者: 山吹弓美


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078.副官は思う、国の護りの強さを

「……では、諸君らの健闘を祈る」

『はっ!』


 数多くの兵士たち、そして貨物輸送用の大型魔物や馬車の部隊を前にして、我らが魔王様はお言葉をくださった。それは兵士たちの士気を上げ、そうしてこれから向かう任務を遂行するための力となったであろう。

 出発する部隊を見送りながら、私は私のすぐ側におられる魔王様に声をおかけした。


「ご足労いただき、ありがとうございました。魔王様」

「これで、兵士たちのやる気が出るなら安いもんだからな」


 ああ、見える。兜の下で、愛らしい猫の姿をした魔王様がドヤ顔しておられる様子が。

 しかし、本音は透けて見えますぞ? ズバリ申し上げてしまいましょう。


「でも、お世話係たちには面倒くさいとかおっしゃってたのでしょう?」

「え、いつ見た」

「見なくとも分かります」

「うにゃー」


 そら見ろ。おっと、失礼しました。

 マントの下にある尻尾がしなしなと力を失うさまが、マントの動きでわかる。


「まあまあ。めんどくさいとか言いつつきちんとお役目は果たしておられるんだから、いいじゃないですか」


 我らの背後を守るように歩いているカレン殿が、何が面白いのかとても楽しそうな笑顔でそう言ってくる。いやまあ、役目を果たしていただければ確かに問題はない、うむ。


「確かに、それはそうなのですが……」

「しゃあ」


 なのでそう答えようとしたところで、カレン殿の伝書蛇が遠くを見つめながら息を吐いた。この個体は確か、サンジローだったな。

 彼らは、人の目どころか魔族の目でも届かない遠い遠い気配を読み取ることができる、という。何を見つけたのかは知らないが、サンジローのまとう気配は剣呑なものだ。すると、味方ではないな?


「良いわ。一撃食らわせて差し上げて」

「きしゃー」


 彼からの報告を受けたであろうカレン殿の目が、鋭く細められる。これは間違いない、サンジローが見つけたのは、敵だ。


「ここから撃てる位置なのか?」

「王城への潜入を目的とした部隊かと。徒歩では後半日程かかる場所ですが」

「なるほど」


 魔王様の問いに、カレン殿がよどみなく答える。徒歩で半日かかる距離にいる敵部隊の気配を察知し、そうしてどうやらこのまま攻撃もできるらしい。カサイの当主とその使い魔の力を、私はこの目で見ることができるようだ。

 ややあって、カレン殿がすっと右手を上げた。


「てー!」

「しゃあああああああああああああああ!」


 その手を振り下ろすと同時に、サンジローが光の束を吐き出した。空を駆け、虹のような弧を描いてその光は、遠い遠い大地へと降り注いだのだろう。

 ほんの少しの間を置いて地の揺れと、それからズズズという地響きがここまで戻ってきた。私は急いで、近くにいる者に指示を出す。


「今、カレン殿の伝書蛇が一撃食らわせた場所を即刻調べよ! ここより徒歩で半日ほどの地点、地面に大きなダメージが出ているはずだ!」

「はっ!」

「証拠の物品、及び生存者の確保を優先しろ! 即刻近くの砦まで送り、調査を急げ!」

「はい!」

「グリちゃん、ヒッポちゃん、ワイたろーの使用を許可する! 急げよ!」

「ありがとうございます、陛下!」


 私の指示に続いて、魔王様がペットたる魔物たちの出陣に許可を与える。徒歩で半日、さすがにその距離をひとの足で急がせるには無理がある。

 その点、魔王様の飼っておられる魔物たちであればほんの数時間で往復も可能だ。そうして今撃破されたであろう敵部隊の正体を掴み、そして周辺諸国に知らしめるのが我々の今なすべきことだ。


「偵察部隊はそのまま出せ。別ルートから侵入を試みている可能性もあるからな」

「承知しております」


 即座に飛び出していく者を見送り、他の配下には別の指示を下す。モイチノか、イコンか、それ以外の勢力か。いずれにせよ、この状況に応じて我が国へ侵入しようとしているかもしれないからな。


「どこらへんだと思います? クロ様」

「単純にモイチノかな。うちに潜り込ませたスパイからの連絡も乏しいだろうし、シロガネ第二王妃周りもカレンに睨まれて後がない」

「まだ潜んでいるスパイがいる、と?」

「一人だけなわきゃねーだろ」


 カレン殿と魔王様の会話に、すこし頭が痛くなった。

 偽メイドの捕縛以降、魔王城内の『掃除』はこまめに行なっているつもりなのだがな。それでも魔王様は、まだ城内にスパイがいるのではないか、とおっしゃっておられるのだ。

 ……ロンカ姫の連れてきた使用人、かな。できればあの辺りに手は出したくなかったのだ、そうすると第二王妃が自分の国の者に何をするなどと言い出してきそうで。


「どうせ、ロンカ姫に何か問題があったら消せとか言われてるぜ。その前に抑えりゃ勝ちだ」

「なるほど。確かに」

「わたしの愛弟子が一緒にいるから、大丈夫じゃないですかねえ」


 しかし、魔王様もカレン殿もえらくのんきに物事をおっしゃるものだ。確かにカレン殿の愛弟子、すなわち勇者トモドー・アキラ殿であれば大丈夫ではないか、と私も思うがな。

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