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魔王は勇者を猫可愛がりする。猫だけに(魔王が)  作者: 山吹弓美


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076.最終兵器

「あなたが動くのはほんと、最終手段としてよね」

「ですよね、ガチの最終手段師匠」

「それは自覚してる」


 お世話係の仕事がオフだった今日は、朝からカレンさんのところで木刀を振っている。いや、基礎体力つけるためのランニングとかもちゃんとやってるけどさ。

 私はクロさんのお世話係でずっとお城にいるから、そこまで餅の国が来たときの最終手段。

 カレンさんは剣の腕やら魔法の腕やら伝書蛇軍団やらの実力が積み上がった結果としての最終手段。

 方向性が違うんだけど、どちらも出陣した時点でいろいろ終わりなので最終手段、という自覚がある。ま、私の場合はこの国が終わりっぽいけどさ。


「さすがに、モイチノ軍が挙兵したとしても一気にここまで来るのは無理よ。ぶっちゃけ、防寒と飯に手間がかかるし」

「山越えて来ないといけないんでしたっけ」

「そうそう」


 いくら何でもそれはないだろう、という理由をカレンさんは分かりやすく教えてくれる。

 他の国ではあまり扱いが良くない魔物、魔族たちが集まった国であるこのラーナン魔王国は、その立地もあって他の国とは行き来がしにくい。シロガネ国との間にはちゃんと道があるんだけど、それだって山越えはあるしね。


「だから国境近くの辺境地に拠点を造って、まずはそこまでやってくるわけ」


 くるり、と立てた人差し指を回して、カレンさんは私に教えてくれる。だってこういう話って元の世界じゃ必要ないものだったから、私は知らないもんね。


「そこに荷物とか食料とか運び込んで、その先に攻め込むためのベースキャンプにする、わけですね」

「そういうこと。大昔に貿易路として使われた古い道が残ってるから、それを使って運び込むんでしょうね」


 ご飯重要、軍隊ってことは武器とかあるもんな。私にとっては必要ない話だったけど、時代劇で中国大返しだっけ、あれは見たことあるから大人数で移動するって大変なんだな、って思ったことはある。

 しかし、空飛ぶ魔物って一応いるんだけどな。


「グリフィンとかワイバーンとかは使わないんですか、餅の国って」

「ちょっとは使ってるみたいだけど、そもそもあの国に近寄る魔物は少ないわよ。自分たちの扱いが酷いの、知ってるもの」

「住んでるどころか近寄る、ですか」

「野生動物は普通に住んでるけど、知性のある魔物はさっさと逃げ出すわね」

「なるほど」


 ははあ、ざまーみろってか。

 そりゃ魔物たちだって、自分たちが酷い扱いされるの分かってて餅の国なんかにゃ近寄らないよねえ。それがきっと、代々続いてるんだ。いいですか、悪い人間がいるからあの辺りには近づいちゃいけませんよって。


「だから、空を飛ぶ手段としては翼を切ってない馬くらい。でも、馬は荷車引かせないと貨物輸送にはねえ」

「あー。それで、空から来るってのはほとんどないわけですか」

「そうそう。山越えたところに拠点を造れば、そこで馬を集めて出兵するわけね」


 この世界の馬って、鳥の頭しててペガサスみたいに背中に翼があるんだよね。でも、荷馬車引かせたり農作業とかに使ったりする馬は小さいうちに翼を切っちゃうんだって。人が乗るのは半々、とかだったかな。

 でもまあ、空飛ぶ馬に荷物乗せるったってたかが知れてるもんな。それなら、地面の上で荷物積んだ馬車引っ張らせたほうが、たくさん運べるってもんだ。


「でまあ、クロ様やワイたろーとか私がこまめに動いて、そういう拠点を潰すわけ。そうすると、モイチノはまた新しい拠点を造らなくちゃいけないでしょ」

「時間かかりますもんね」


 ネット通販の拠点とかと考えれば、それくらい私にも分かる。確かニュースでそういう倉庫が火事になったってのを見たことがあって、在庫の品物は燃えるわ発送遅れるわで大変なことになったんだっけな。

 でも、造るのが面倒なら他にも手段はある。


「……それで、私が連れてこられたときはクロさんの秘密基地、だったわけだ。最初から造ってあるもののリサイクル」

「そこをちょうどクロ様が見つけて、アキラちゃん以外吹き飛ばした。これでモイチノは戦力……部隊に加えてこの場合、アキラちゃんまで失った。戦力ガタ落ちよね」

「ですね」


 その手段が、もとからあったものを再利用するってことだった……んだけど、それをクロさんに見つけられた結果がこれまたざまーみろ、であった。私も助けてもらったしね。

 とはいえ、その結果も一長一短をもたらした、らしい。


「それもあって、シロガネの一部と手を組んだ。第二王妃一派には当然彼女に連なる貴族もいるから、そちらの私兵を動かすことができるかもね」

「そーすると、そこらへんで空の魔物使えますよね」

「そうね。多分、貨物の輸送に使ってると思う」

「うえー」


 やめろ、ややこしいことになったじゃねえか。まあ、協力者をあぶり出して潰せば、ロンカ姫も危機から遠ざかれると思うんだ。


「リューミ殿やコクタン殿が調べておられるはずだから、私たちが気にすることじゃないわ」

「そうですけどねえ」


 カレンさんの言う通り、だよね。リューミさんたちは第二王妃一派、つまりクロさんの敵になるであろう人たちを探り出して、シロガネのみかたと一緒に叩き潰すつもりなんだろう。

 ロンカ姫がこの国にしろシロガネ国にしろ、のんびり暮らせるようになったらいいなあ。うん。


「さ、使わないこと前提で修行続けるわよ」

「はーい」


 そうして、私の修行が無駄で済みますように。

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