074.つなぎましょう
「お二方は陛下のお世話係やさかい、多少は教えとかんとあきませんわな。陛下をお部屋から引きずり出すのに、ご協力いただきたいですし」
「我々は、アキラ殿の素性については陛下より伺っている。同じ境遇の者が他にもいるかも知れない、という可能性を調査することもあってな」
ホーさんとコクタンさんが私たちと顔を合わせてくれた理由を、それぞれに語ってくれた。ああ、私のこと、ふたりとも知ってるんだ。ま、この様子なら大丈夫だろうな。
そうして、私の境遇に関係あるどこやらの話が出てくるわけよ、うん。
「確かに最近、モイチノの部隊が国境付近うろちょろしとるんですわ。ただ、アキラはんみたいに呪いの鎧とか、そういうたぐいのもんつけてるんは見当たりませんなあ」
「単純に弾切れ、という可能性もあるが」
「その辺かなあ。呪いの鎧が量産されてたら、しゃれにならないもん」
クロさんの言う弾切れ、ってのは多分呪いの鎧。何か、アレ着てた私結構強かったらしいから、たくさんあるならてきとーに着せてるんじゃないかと思うのよね、餅の国。
そうして、もう一つの弾の可能性もある。つまり、別の世界から召喚されてきた私のような人間だ。
「ちゅーかですな、わざわざ別の世界から誰ぞ召喚してくる意味が分かりませんわ」
「そりゃあれだ、シロガネ国の建国伝説にあやかったんだろ」
「あー。建国王のお母上とお妃が別世界からの召喚者だった、つーあれでっか」
……ホーさんとクロさん、漫才コンビに見えるんだけどまあいいか。そういえばそういう話、聞いたっけなあ。ミカさんだかロンカ姫だか、まあどっちかからだろうと思って、ミカさんにちらりと視線を向ける。
「それは私も一応聞いてます。ご先祖さまのことですし」
ま、ご先祖様が国一個造ったお話だもんなあ。そりゃ聞いてるだろ、子孫だし……とは口には出さないけど、でも。
「でも、何でそれにあやかるの?」
そういう疑問は持ってもいいよね。
シロガネの第二王妃様ならともかく、餅の国はシロガネ国とは別の国なわけだもの。シロガネのほうが、餅よりずっと大きくて立派な国……だという話だ。私、どっちも知らないし。
「シロガネ国は、世界でも最大級の権力を持つ国だ。モイチノは、それと同じように権力を増大させたいんだろうさ。俺たちラーナン、いや、魔族を排除してな」
「……それでモイチノは、シロガネの第二王妃と組んだのか」
クロさんの言葉と、その後に続くコクタンさんの言葉。私とミカさんはああそういうことか、と同時に頷いた。
むかしむかしのシロガネ国建国神話にあやかって、餅の国は自分たちを立派な国、世界のトップに押し上げたかった。
シロガネの第二王妃は、多分自分が権力者になりたいんだろうな。そのためには、いろんな邪魔を排除しなくちゃならない。
で、利害が一致して組んだ、と。
「ま、そうだろうな。今のシロガネ王は、どちらかといえばモイチノよりもうちに近い。第二王妃は、魔族を嫌っているし」
「ロンカ姫のこともあるしねえ」
というか第二王妃、ことが露見したらあれじゃん、国家反逆罪とか何とか。
シロガネのお城にコクタンさんの配下でも放って、証拠かき集めたほうがいいかもしれないな、これ。
……まあ、第二王妃や餅の国と同じことをこっちからやってどうする、って感じか。
「そのあたりはコクタン、重々気をつけてくれよ」
「無論だ」
「ホーも辺境の警備を怠るなよ。一応、部隊を増派しちゃいるが」
「おまかせあれ。ワイたろーやグリちゃん、ヒッポちゃんたちも協力してくれてはりますし」
「頼むぞー」
クロさんが実際どう考えていたかはわからない。けれど、さすがにスパイ出せという指令ではなくごくごく普通の指令を、二人の補佐役に出してくれた。うん、さすがクロさんだ。
「昼間で俺が忙しいときは、この二人やハナコにつないでくれりゃ何とかなるだろ」
「そりゃ、何とかするけど」
「お仕事ですしねえ」
そうして私たちは、せっかく補佐役たちと顔合わせたということでつなぎ役もやることになった、わけか。まあ、何か問題が起きたらリューミさん含めて三人の誰かに助けを求めればいいんだから、ラッキーとか思っておこう。
というか、ハナコさんとは面識あるのか。そりゃそうだ、多分あの亀姉さん結構年齢行ってる可能性があるし。
前の世界でも、ああいった大きな亀さんは人間と同じくらいかもっと長い寿命があったわけだけど。この世界だと、魔族だからもっともっと寿命長いだろうしなあ。
「そんなら、今後ともよろしゅうに。そのうち、お菓子でも差し入れしますわ」
「そうだな。陛下のお相手は大変だろうし、軽食でも差し入れるとしよう」
「俺の相手、そんなに大変じゃないぞ?」
ホーさん、コクタンさんの気遣いがとってもありがたい。あと、差し入れは食べ物と決まっているのか。いや、美味しいものもらえるなら嬉しいけどさ。ロンカ姫からもらったお茶とかもあるんで、しっかり消費したいし。
というかそこの黒猫魔王、あんたの相手は物理的に大変なんですからね。でっかい猫の相手って撫でる面積広いし、長毛種だからブラッシング苦労するし、もふもふふにふにだからすぐ眠くなるし!




