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魔王は勇者を猫可愛がりする。猫だけに(魔王が)  作者: 山吹弓美


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071.副官は組み上げる、国の護りを

「隠密部隊か」

「はい」


 ひとまず、手に入れた情報を私は魔王様にお伝えする。まったくモイチノめ、ついに動いてきたか。面倒な。

 しかも、隠密部隊というだけあってその構成がな、腹が立つ。


「人間の司令官数名と、奴隷化したコウモリ、猫などの獣人十数名の部隊だったようです」

「なるほど」


 モイチノ王国は、獣人やその他の魔族を人とは考えていない。故に幼い魔族を人間に従属するように調教し、奴隷兵士として戦に駆り出す。そういうこともあり、我がラーナン魔王国とは全く反りが合わないのだが。


「司令官一名、獣人は六名を確保しております。現在、都まで輸送中とのことです」

「残りは探索させているか」

「やっております。追加の部隊も出発させました」

「それでいい。変なところに潜り込まれちゃ、たまらんからな」


 この国は、特に辺境はそもそもあまり気候が良くない。人間にはもともと暮らしにくい環境であり、故に魔族が集まって国を作ることができたのである。だから、人間の司令官が生き延びる確率は低い……が、奴隷として教育された魔族たちはそうでもないからな。

 モイチノの『常識』を刷り込まれた彼らの都への潜入は、なんとしても防がなければならない。姿形で判別はできないだろうからな。


「間違いなく、我が国の領土内だったんだな」

「はい。国境の山脈を越えて、高原の方まで入り込んでおりましたようで」

「分かった」


 そうしてこれが腹が立つ。我が国は四方を山に囲まれており、ほんの少しだけある平地の国境はシロガネ国との間にあるものだ。

 モイチノとの国境は特に山が多く、よくもまあそれを乗り越えて来られたものだと思うのだが……魔族を使い潰した、その可能性もあるな。そうでなくとも、何らかの手段を使って移動してきたことは間違いない。馬、馬車、伝書蛇など。

 少なくとも……大昔に魔王様自ら建てられた秘密基地、あの場所までは来ることができたのだから。


「モイチノを批判する声明を出す。シロガネを中心とした周辺国に送れ」


 突然そう申された魔王様だったが、それも私は予測済みだ。こちらが一方的に領土侵犯を受けたのだから、それを世に知らしめモイチノ王国の真意を問うのは当然のことだからな。


「準備を進めております。清書でき次第、使者に持たせて発送する予定です」

「さすがに、伝書蛇どころじゃねえか」

「ええ」


 こういう非常事態の声明を運ぶのには、さすがに伝書蛇では略式にすぎる。人の使者を立て、各国に送り出した上で先方の返答を頂かねばならない。

 それに、伝書蛇には伝書蛇の役目がある。そうでしょう、魔王様?


「カレンとカレンの伝書蛇は、いつでも出せるように待機。ロンカ姫の護りを固めろ」

「城まで攻め込んでこられるとは思えませんが」

「暗殺者が一人いれば、首一つは取れるからな」


 ほら、思ったとおりだった。

 カサイ・カレンと彼女の使役する巨大伝書蛇は、単体で敵の部隊を簡単に掃討することのできる強力な存在だ。ある意味、最終兵器と言ってもいいだろう。

 故に、そうそう表舞台に立たせるわけには行かない。周辺国にも、ラーナンはカサイの当主に守られているなどと吐く口さがない者共はいるのだ。それは、ラーナンの名誉にも関わる事態であるからして。

 襲ってくる敵は、まず我が国の部隊で叩き潰さねばならない。カサイ・カレンに出陣を願うのはもう、最終手段として考えたほうが良い。

 ……モイチノが異世界から召喚した『勇者』トモドー・アキラについては、カレン殿の剣の弟子でもありその戦闘力の伸びは眼を見張るものがあるという。ただ、彼女についてもそうそう表に出すわけには行かないだろうな。

 魔王様が、彼女に対して少なからず好意を抱いていると、私は考えているからだ。

 だから、彼女たちの出陣はひとまず、思考から外すことにする。我がラーナン魔王国軍が、その実力をいかんなく発揮すればよいだけのことだからな。


「例のスパイから、侵入経路や方法などは聞いているな?」

「無論です」


 モイチノといえば、がーすけに魅了されて全てをぶちまけたあの間抜けなスパイだな。彼は現在も拘束中であり、自身が知る全てをどんどん吐き出しているという。その情報の中にはどうやって身分詐称できたか、外部との情報交換のやり方なども入っている。

 既に彼の使えた手段は封鎖、改良してあるが……さてさて。


「人事や警備には犬獣人とコウモリ獣人を配置、匂いや声の癖などを確認するようにしております。それと人間もですね」

「細かい手の癖とか視線の向きとか、人間でないと分からないこともあるからなあ」


 その一つが、配置転換と警備の増強だ。と言っても今までいた人員に加え、彼らではできない警戒をすることのできる能力の持ち主たちを新たに加えたわけだが。

 犬獣人は匂いに敏感、コウモリ獣人は音に詳しい。その彼らに普段と違う匂いや音を探し出してもらい、その元を捕縛する。

 まあ、即座にできる対策などたかがしれているからな。今後は、もっと考えなければならないな、と思う。


「部隊については、モイチノ国境手前の平原に配置。グリフォンやヒポグリフなどの空中部隊も動員してくれ」

「は。モイチノも空中部隊を派遣する可能性はありますしね」

「それでも、一気に国境の山を飛び越えてくるのは無茶だろ」

「巨大伝書蛇クラスならできない芸当ではありませんが、モイチノにそのあたりがいるという情報は入っておりません」


 部隊配置は、自分も考えないではなかったが魔王様から直接のご指示をいただけると私も命じやすい。ありがたいことだ。

 今のところ空中部隊が来襲したという情報はないが、モイチノも考えているだろうからな。

 ともかく、今は我々にできることをするだけだ。

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