068.ねこにもふられる
「ふー」
カレンさんが帰ってきて一安心……と思いきや、クロさんはあんまり安心できていないようだった。おかげで私、今クロさんの膝の上でもふられています。逆なら良かったんだけどなあ、クロさん大きいから膝の上に載せたら私が潰れる。
「なんか大変そうですねえ、クロ様」
「まあな」
今日はミカさんがロンカ姫のところに行っている関係もあって、一緒にいるのはハナコさん。いや、他にもお世話係っているんだけど相性とかいろいろあって、私は大体ミカさんかハナコさんと組むことになってる。そろそろ、他の人と組んでも大丈夫だと思うんだけどなあ。
ま、それはそれとして。あー、クロさんの肉球の感触がふにふに気持ちいい。
「グリちゃんやヒッポちゃんが、モイチノ領とのちょうど境あたりでモイチノ軍が動いてるらしいっていうんだ。警備部隊をそっちに派遣することにしたんだが、うっかりすると戦争の火種にされそうでなあ」
「しそうですねえ」
まーたー餅の国かー。って、動いてる場所って私が最初に送り込まれた砦のあたりじゃないの? いい加減しつこいよねえ、あいつら。
というか餅の国の部隊、国がこっちに喧嘩を売ってくるためのネタにされようとしてるわけか。うわーかわいそ、と棒読みで哀れんでやる。つーか、私も似たような扱いされたわけだしね。何で本気でかわいそうと思ってやらなきゃならないのか、ねえ?
「んで、クロ様としては部隊派遣だけで?」
「いや、シロガネや周辺国には既に使者を出してある。モイチノにもいいかげんにしろと通達を出したが、それで聞くわけないからな」
「言った、という事実は重要ですけどね」
私はひたすらもふられつつ、クロさんとハナコさんの会話を聞いている。こういうのって、どうも話に入りにくいんだよなあ。ちょっと難しくて。
あ、でも、餅の国が悪いと他の国に示す手段はいろいろあるよね。例えば、伝書蛇に証言してもらうとか。
「カレンさんに頼んで、伝書蛇の誰かを派遣してもらうのはどうかな?」
「一応、話はまとめてある。オトジローが隠密行動が得意らしくてな、頼むつもりだ」
あー、私が考える程度のことはやってたか。そうだよねえ、クロさん王様だもんね。
でも、そんな事考えてる私の頭をクロさんは、優しくなでてくれた。
「気にかけてくれてありがとうな、アキラ」
「あ、うん」
「クロ様、人間はあんまり喉を撫でられたがりませんよ?」
ハナコさんがしれっと突っ込む通り、クロさんは私の喉をごろごろごろと撫でている。いや、私が猫ならごろごろ言うんだろうけどさ。
「え、そうなのか」
「そうですよー。基本、頭を撫でてあげるのが一番かと」
「そ、そうなのか? アキラ」
「まあ、そうだねえ。クロさんは肉球が柔らかいから、頬に当ててくれてもいいんだけど」
というかハナコさん、人間の扱いそこそこ心得てるっぽい。今まで大変だったのかな、と思うんだけどまあいいか。
で、肉球に関しては私の願望を素直に口にした。ほんと、クロさんの肉球ってふにふにふわふわの感触がいいんだよなあ。
「こんな感じか?」
あ、ふにっと肉球が頬にあたった。そうそうこれこれ、ふわふわふにふにもふもふ最高。
「うん、こんな感じー」
「そ、そうか」
「ほらね」
ハナコさん、ものすごく達観した顔でこっち見てる。いやごめん、傍から見たらこれってペット可愛がってる魔王様、だよねえ。遠い目になるのも無理ないわ、うん。
「まあ、プライベートの間はあまり悩まれても大変でしょうから、アキラちゃんで癒やされてくださいな。一応、お世話係の仕事の一環でもありますし」
「おう、そうする」
「私に拒否権ないもんねえ。あっても使わないけど」
と言うか、全くの第三者から見たらこれ、どんな構図だ。でっかい黒猫が人間の小娘膝に乗せてもふもふふにふにしてて、それを大きなリクガメがため息つきながら見てる図だぞ。
……私の考え方じゃさっぱり分からないけど、もしかしたら何の問題もないのかもしれない。この国はクロさんみたいなひとや、ハナコさんみたいなひとが当たり前に生きている国だから。
「でもまあほんと、今は私もふってのんびりしてね。これからも大変そうだし」
「……だなあ。大体の仕事はリューミに振ってるが、最終的な結論は俺が出すわけだし」
「そりゃ、国王陛下ですからね。こういう制度の国じゃ、クロ様のサインや一言が一番力を持つんですから」
「がんばるー」
ハナコさんの言葉に返したクロさん、本気で頑張る気あるのかな。いや、実際は頑張るんだろうけどね、王様だし。
でも、いつもいつも王様だとどっと疲れるだろうから、私で癒しになるなら存分にもふってくれ。私も逆もふを存分に楽しむから。
しかし、猫が人間をもふって気持ちいいものなのかな。もふられてる身で言うのも何だけど、ぶっちゃけ逆のほうがいっぱい癒やされると思うんだ。私がクロさんの喉をごろごろとか、お腹もふもふとか。
まあ、私は猫じゃないからそういう感覚は、全くわからないけどね。




