065.敵は吹っ飛ばせ
「カサイの当主様、まだお戻りでないのですか」
「うん」
今日も私は、ロンカ姫とお茶を一緒に楽しんでいる。今日はミカさんも一緒で、そのせいかお姫様は幾分リラックス気味だ。
まあ、遠いよその国なんだし親戚がいるってのは心強いよねえ。
で、話題は五日経っても帰ってきてないカレンさんのことである。割とサクサク片付けて戻ってくるかなあ、と思ってたのでちょっと心配である。……どっちかというと、シロガネ国のほうがだけど。
「何か知らないけど、時間かかってるんだろうねえ」
「まさか、御身に何かあったのでは」
『それはないない』
ロンカ姫はカレンさんを心配してるんだけど、私やミカさんはついつい手を振って答えた。うん、カレンさんの身に何かあったりしたら、洒落にならないってことは噂で知ってる。
「そんなことしたら、シロガネの国土が吹き飛んでてもおかしくないもの」
「……国土?」
その代表をミカさんが言葉にしてみせると、ロンカ姫は目を丸くした。もともとくりくりっとした可愛い目だから、余計に丸くみえるなあ。
「お城ではなく、ですか?」
「うん」
「カサイの当主だからね。そのくらいはできるらしいという噂」
国一つ分の土地を、綺麗さっぱり吹き飛ばす。実際できるかどうかは知らないし、やられると多分すっごく困るので見たくもないなあ。
で、ミカさんが私に続いてくれた。
「少なくとも、城を更地にはできると本人がおっしゃってましたよ」
「……更地? 瓦礫ではなく?」
「まっ平らで草一本も生えてない更地、と」
「……」
ぽかーん、と口まで丸くなってるよ、ロンカ姫。うんまあ、分かるけど。
シロガネ国のお城がどれくらいの大きさなのかは知らないけれど、今私がお世話になってるクロさんのお城がもしふっとばされてなにもない綺麗な平らな土地になったら、と思ったらゾッとするもん。
「まあ、威嚇がてら近くの山くらい吹き飛ばしてそうなものですが」
「威嚇で吹き飛ばせるんだ……」
「そのくらいは、今シロガネにいる当主代理でもできるそうですよ」
「まあ」
相手を脅すために山を吹き飛ばすなよ、と思うんだけど。でも、そのくらいのパワーを見せつけてやらないと相手はビビらないんだろうなあ。そうして、向こうよりこっちのほうが強いんだって見せつけてやらないと、相手が交渉に乗ってこない……と。
ていうか、カレンさんの代理してる人もできるレベルなのか。……ということは。
「代理ができるんなら、本物の当主がその上を行っててもおかしくはないわけか」
「そういうことです」
うわあ。本気で国一つ、吹っ飛ばせるかもしれないんだカレンさん。剣もめちゃくちゃ強いのになあ、あの人。
……いや、魔法で吹き飛ばすとは言ってないな。案外、剣を振るって……そっちのほうが怖いわ、と自分の中だけで突っ込んでおく。
「あとカレンさんの場合、伝書蛇たちも強いので」
「まあ」
「へ」
おっと、ミカさんの話はまだ続いてた。って、伝書蛇ってあのでっかい子たちか。サンジロー、オトジロー、セージローだったよね。何この日本人ぽい名前。ま、トップが黒猫のクロさんだけどさ。
あの三頭、めちゃくちゃ大きいしたしかに強そうだけど……ガチで強いのか。
「でっかいだけじゃないんだ?」
「あのクラスになると、多分一頭でお城が以下略」
「……更地か……更地?」
いやいや待て待て、たしかにあのサイズの大蛇が単純に大暴れしただけでお城なんて潰れそうだけどさ!
でもそれだと瓦礫の山ができるだけで、更地にはならないと思うんだけど!
「ああ。伝書蛇って、主との相性とかの関係で攻撃魔法吐けたりしちゃいますからねー。建国王のお妃様が使っておられた伝書蛇、普通のサイズだったのにとてもすごい魔法を吐かれたそうですよー」
「いや、あれはさすがにおとぎ話じゃない?」
それもものすごく待て。
サンジローオトジローセージローみたいな超特大サイズじゃなくて、今そこにいるセンダくんくらいのサイズの子が城ふっとばすような魔法使うとか、いくらなんでもないわー。
それこそ、ミカさんの言う通りおとぎ話なんだろうと思う。建国王のお妃様、とか言ってたから、シロガネ国ができたときの神話みたいなもんなんじゃないかな。いや知らんけど。
「……まあ、つまりはカレンさん本人が帰ってくるか、シロガネ国からのお知らせでお城が吹っ飛んだとか、そういうのを待つしかないんじゃないかな?」
「それもそう、ですね……」
「普通にお戻りになれば、それが一番ですよねー」
あはははは、と三人で笑い声を上げてこの話題を切り上げることにした。だって、どっちにしろ私たちにはどうしようもないことだもの。
どうにかできるのはカレンさんと、もしかしたらクロさんとかくらいだと思うから。私はカレンさんの弟子だけど、まだまだあの領域までは達してないから絶対無理だって。うん。




