063.お世話係の真実
「……むーん」
「どうされました?」
仕事と夕食が終わって自分の部屋でのんびりしてると、ドーコさんが尋ねてきた。彼女が淹れてくれるお茶も最近、ミリコのものになったらしい。ロンカ姫と一緒に飲むのとはまた別の銘柄で、これはこれでさっぱりしてて美味しいんだな。
ま、それはそれとして。
「私って、クロさんと仲が良く見える?」
「もちろんです」
尋ねたら即答された。ドーコさんとかベルミさんは、私がお世話係してるところはあんまり見てないはずだよね。そのドーコさんが即座に答えたってことは、私とクロさんが仲がいいってのはほぼ周知の事実ってことかよ。うわあ。
「どういう意味で、仲良く見えるかなあ」
「アキラ様のお仕事中を拝見したことはほとんどないので、伺ったお話などからの推測になりますがよろしいですか?」
「うん。お願い」
ああ、やっぱり見てないよね。伺ったって、メイド仲間とかから話……まあ、やり取りするか。お世話係だし、クロさん専属のメイドさんたちも私のこと知りたいだろうしね。
さて、ドーコさんの推測は。
「では。どちらがどちらとはとても申せませんが、飼い主とペットのような感じではないかと」
「うわー」
どういう情報を入手してたんだろうと思うけど、考えなくても間違ってないもんなあ。お腹もふもふとか肉球ふにふにとかやってるのって、どう考えてもドーコさんの言う通りだもの。
「いや、どっちがどっちでも心当たりあるわ……」
「まあ、大変に仲がよろしいということが分かりやすいですが」
「ですよねー」
ソファに座ってたので、置いてあったクッションに顔を埋める。うわあ恥ずかしいと言うか、何というか。
よく考えなくてもさ、一国の王様相手にもふもふふにふにって今更どうなんだ、自分。いや、あの感触は最高なんだけど。
……ふと、ドーコさんが口調を変えた。分かりやすく、シリアスぽい感じに。
「ですが、おそらくそのままでおられるのはちょっと問題ではないかと」
「何で?」
「男性であらせられる陛下のお世話係が全て女性である、その理由がおわかりになりますか」
ん?
言われてみれば。
私、ミカさん、ハナコさん、カサノさん、ユーアさん。その他にも何人かお世話係っているけれど、みんな女の子だ。
「……えーと」
クロさんの面倒見るのが女の子。……相手は国王。男。独身。
ん、と思わずクッションから顔を上げた。一番手っ取り早い理由って。
「もしかして、お妃様探し?」
「はい」
「まーじーかああああああ」
勢い良く、クッションに顔を突っ込む。本当にそれかい。
いやいやいやいや、普通王様のお妃様っていい家とか、よその王様んとこからとか来るもんじゃない?
シロガネ国の第二王妃だっけ、そいつもそれ狙いでロンカ姫放り込んできたんじゃないの。
「そこら辺、どうなの?」
「陛下を始めラーナンの王族の方々は、配偶者のお家柄はあまり気にされません。お互いの相性が悪ければ、それは不幸でしかないからと」
「ふむ」
ああ、そういうこと。あんまり気にしないのか。まあ、クロさんが分かりやすく猫なんで、今までのお相手も猫とか虎とか豹とか、そのあたりで決めてたかもしれないけど。それとももしかしたら、遺伝子はめちゃくちゃいろんな動物とかが混じってるのかな。
「ですので、周囲の貴族や様々な種族としましては自身の種族から王妃を出したい、ということで」
「それでいろんな人がいるんだ!」
「そういうことです」
誰でもいいけど、王様やその一族と仲良くできればお嫁さんやお婿さんになれる。そこで、あちこちの種族がお世話係として色々送り込んでくるってことか。……シロガネ第二王妃と、やってることはそんなに変わらないや。
「アキラ様に関しては少々例外ですが」
「ああ。私はクロさんが自分で拾ってきたんだもんねえ」
「はい」
そう、私には一族とかそういうのはいない。ミカさんと同じ人間、ってくくりになると思うんだけど……あ、もしかしてミカさんがこの城にいるのもミカさんの家族とかの意向が働いてるんだろか。うわあ、嫌だなそれ。
でも、それぞれの種族のひとたち、あんまり思惑通りには行ってないよね。それはドーコさんも分かってるみたい。
「ですがまあ、陛下はああいう性格でいらっしゃるので、あんまりお妃選びが進んでいないというか……」
「みんな仲いいよね、たしかに」
「まあ、一夫多妻制度ですので全員面倒見てもよろしいかとは思われるのですが」
「ミカさんあたりがツッコミ入れそうだけど」
「既に拳で一撃ならずかましておられる、というお話です」
「やってたかあ」
そうだ、シロガネ国もそうだけどこっちの国も……クロさんだけかどうかは知らないけど、奥さんいっぱい持てるんだ。跡継ぎ問題とかあるしね、大変だなあこういう一族って。
「一応、そういうわけですのでアキラ様にもそれとなくお考えいただきたい、とはリューミ様からの言伝でございます」
「は」
で、ドーコさんにそんな事言われて思わず目を丸くした。考えとけって、クロさんとのことか。
「選択権は陛下の方にございますが、心持ちとして、ですね」
「あー」
ま、そりゃそうか。一応王様なんだし、こういう国では王様に選ぶ権利があるよね。
ただクロさんの場合、ごめんなさいと断ってもしかたない、って受け入れてくれそうだけど。
……んー。




