061.私にできること
お鍋をほとんど食べ終わり、締めとしてうどん……ぽいものを食べた。あー、鳥のだしが効いててうまー。
そうしてその後に、本当の締めというかスイーツ見参。私はフルーツパフェ、クロさんはプリン。ハナコさんは……メロンぽいフルーツのシャーベットだな。
「あんまーい」
「だろう? ミカもお気に入りなんだ」
「あー、なるほど」
フルーツは私の知ってるものと色とか違うんだけど、それぞれちゃんと果物っぽくて甘かった。クリームはちょっと薄い目かな、うんまあ美味しいからいいや。
クロさんは、大きめのマグカップくらいのプリンをスプーンですくってぱくり、と口にする。あ、目が細くなった。猫がふにゃーん、ってする顔ってなんて平和そうなんだろう。
ちなみに、このプリンにも私のパフェに乗ってるのと同じクリームが乗ってる。今のふにゃーん目細めは、そのクリームごとプリンを食べた感想だ。
「ハナコさんはシャーベット?」
「ああ。これは食べやすくてさ、いいんだよねえ」
シャーペットと言うか、どうやらフルーツまるごと凍らせたものっぽいんだけど。で、ハナコさんはそのまるごとをそのままぼりぼりと食べている。そか、スプーンとかいらないから確かに楽だ。
それぞれがそれぞれのスイーツを半分くらい食べたところで、不意にクロさんがスプーンを下ろした。
「アキラ、ハナコ」
「はい」
「何でしょう?」
真剣な声で名前を呼ばれて、思わず背筋が伸びる。返事した声、ちょっと震えたかもしれない。
私たちをまっすぐに見つめるクロさんは、とてもキリッとしていてかっこいい。猫だけど……猫だから、かもしれない。
それで、そのクロさんは私たちに頼んできた。
「俺が留守にすることが増えるかもしれないが、その間は俺の部屋やロンカ姫のことを頼む。彼女も、お前たちやミカとは仲がいいんだろ?」
「あ、はい」
「そりゃもう」
クロさんのお部屋を守るのは、私たちお世話係のお仕事だ。今も、ミカさんや他のお世話係がせっせとお掃除なり点検なりしているに違いない。
ロンカ姫とは、たしかにお茶会とかしてるから仲はいい、といっても問題ないよね。
で、わざわざそんな事を言うのは何でだろう。
「……そのくらい、留守にするかもしれないってことですか。クロ様」
「相手の出方次第だがな」
「シロガネとモイチノですね」
「まあな」
ハナコさんがずばずばと言ってくれたことで、その理由がわかった。
カレンさんを通じてお手紙を出した先であるシロガネ国、それと今んとこどう考えてもこの世界のトラブルメーカーでしかない餅の国。
その二つの国が、今後面倒なことになるかもしれないから、だ。
「……えと、それでクロさんがお城を留守にするって、つまり」
「主にシロガネとのやり取り、モイチノに睨みを効かせるとかだな。最後の手段は、本当に最後にしたいんだが」
「うわあ」
シロガネ国が餅の国寄りにならないように、カレンさんを通じてやり取りする。
餅の国には色々とちょっかい出されてるから、いい加減にしやがれ証拠は上がってるんだぞとこっそり通達する。表立って言うと、きっと面倒なことになるから。
最後の手段って多分、国を上げての戦争だろうしね。そんな事になったら、どの国もきっとただじゃ済まないもの。
「それでも、お前たちには迷惑はかけないつもりだ。頼むぞ」
「……わ、わかりました。クロさんがそういうなら」
クロさんは王様だから、一応国民の端くれでもある私にもそんな事を言ってくれる。私はクロさんに助けてもらったんだから、できることなら何でもしたいんだけど……そのできることが大したことないものね。
剣術だって、まだまだカレンさんには及ばない。もうちょっと強くなれれば、クロさんの護衛としてやってけるかもしれないのにね。
カレンさんが帰ってきたら、しっかり訓練付けてもらおう。その前に、自習もしっかりやらないと。
「ハナコ」
クロさんに名前を呼ばれてハナコさんは、「お任せあれ」と笑ってみせた。……いつの間にか、シャーベットは器ごと綺麗になくなっている。全部食べちゃったのか、すごいな。絶対冷たいのに。
「このハナコはこれでもゲンブ様に連なる者、仰せとあらば城ごと守ってみせましょうぞ」
「それを言うなら、俺だってビャッコ様の末裔だからな!」
……あ、そういうことじゃないという発言したのはいつものクロさんだ。何となくほっとした。
でも、そっか。クロさんは、この国を戦争にさらさないために頑張ってるんだ。だから、これから忙しくなる。
それなら私たちお世話係は、ちゃんとバックアップしなきゃね。それぞれのできることで。
あと、ロンカ姫のお世話も頼まれたわけだから、そっちも時々気にしないと。お茶会、ぼちぼちやるかなー……お茶菓子美味しいもんなあ。
「ん、でもこれもおいひ」
たまにはお姫様連れてきてもいいかな、と思いつつ私はパフェを平らげることにした。




