046.お仕事とお話と
「戻ったぞー」
昼過ぎ、おやつタイムの直前にクロさんが帰ってきた。
「お帰りー」
「おかえりなさーい。お疲れさまでした」
「留守番ごくろー。ほれ、土産。お茶も連れてきた」
「ありがとうございますー」
お土産、てシロガネ国の人が持ってきたのかな。それと、お茶「一式を載せたワゴンを押すメイドさん」も連れてきた、ってところを省略するなよ猫魔王。
ま、それはそれとして点検済みのプライベートルームに入るやいなや、クロさんはばばばっと鎧を脱ぎ捨て……ようとしてもたついてるた。うん、多分重いんだろうねえ。とりあえず外してあげた手甲、結構ずっしりきたし。
「昼はシロガネのと会食してきたから、この茶菓子はお前らで食べてくれ。俺は腹いっぱいだ」
「それはありがとうございます」
「やった、らっきー」
手渡されたお菓子は、チーズケーキっぽいな。しっとりした感じで、重みがあるから確かにご飯食べてきたクロさんには重そうだ。
とにかく、ミカさんと一緒に鎧だけでも全部急いで外して、置き場所に置いといた。後でお手入れするらしいんだけど、これも専門の人いるからね。
私たちはチーズケーキをいただくことにして、鎧外して身軽になったクロさんはお茶をいただくことにして、皆でテーブルについた。
「はー……」
お茶を一息に飲み干したクロさんの第一声、というか大きなため息。そのままソファの背もたれに倒れ込んでしまって、顔が向こう向きになってる。
「シロガネの連中は悪いやつじゃないんだが、何か疲れるな」
「そりゃクロさん、ここでごろごろふにふにやってるのが一番楽だろうし」
「それは確かに楽だなー。けど、そうしてると仕事できねえしな」
「国王陛下ですからね。地味にお仕事が積み重なりますよね」
ま、そりゃ疲れるだろう。いくら友好国でも、他所の国の人なわけだし。
言っても腹の探り合いとか、自分たちに有利なように話を進めたかったりもするだろうしね。
でもまあ、これが国王のお仕事ってことか。
「基本的にはリューミ以下、専門の連中に任せてるから、俺は書類読んでサインするだけの仕事が多いんだけどな」
「ま、知りもしないことを偉そうに指図されるよりはよほどマシだよ、それ」
本音をぶっちゃけてみたら、クロさんはふにゃんと目を細めてくれた。うんうん、専門家がいるならそっちに任せればいいもんね。それでそいつらが悪事働いたら首切れば……なんか、この世界だと物理的に切りそうだな。想像するのやめとこう。
「今はそこそこ平和だからいいけどよ、緊急事態とかなったら俺が司令官だからな。あーめんどくせ」
「そういうこともありますから、平和なときに気分転換がてら視察に出るのは悪くないですよね。たまに拾い物してこられますけど」
「私とかね」
城の中だけで仕事してたら、ストレス溜まることもあるだろうしな。私はそれほどでもないんだけど、たまに建物の外に出て散歩したりしてるし。
そういえば私、クロさんに拾われてここに来たんだなあ。……あれからえーと、一ヶ月はもう経ってるっけ? ま、いいけど。
「あれは、俺の秘密基地にモイチノ王国が勝手に入ってきたから悪いんだ」
「その秘密基地、自分で吹き飛ばしたんですよね?」
「……つい」
ミカさんがツッコミを入れると、クロさんはとってもバツが悪そうにふいと視線をそらした。子供か……猫だな。
子供が大昔は空き地、最近は家の中とかそういうところに作るかもしれない秘密基地。クロさんは国の外れの山の上に作った上、ちゃんと砦として使えるレベルに作っていたらしい。で、その砦を餅の国が占領したんで吹き飛ばした、と。
……何考えてんだろな、餅の国。でもまあ、そういう事情もあってクロさんの国はシロガネ国とか、他の仲のいい国とのやり取りが活発化してるとのこと。今度餅の国が何かやってきたら、返り討ちにしたいらしいね。
で、今回シロガネ国の人が来たのはその関係の話だった。
「こっちにな、シロガネの王族が遊びに来ることになった」
「うえ、マジですか」
「安心しろ。このご時世、現国王や跡継ぎは来ないよ。第二王女のロンカ姫だとさ」
「あがー」
シロガネ国の第二王女ロンカ姫。
その名前を聞いた途端、ミカさんが頭を抱えた。
「……親戚、ってことだよね。ミカさん、そのお姫様と仲悪いの?」
「逆」
逆、ということは仲良しってことか。何で頭抱えるのかな、この子。
仲が良すぎてべったりとか、性格が微妙とか、そういう感じかな?
「あー。あいつ、遊びにというか厄介払いされて来るんだと……」
「厄介払い?」
「そりゃ、聞き捨てならねえな」
ミカさんの言葉に私も、クロさんも身を乗り出してきた。
シロガネ国とラーナン魔王国とは仲がいいし、国としてはお付き合いしたい相手。だけれど、内部はまあ色々あるってこと、みたいね。
王族の中でも、多分勢力争いがあるんだろう。うわあめんどくさ。




