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魔王は勇者を猫可愛がりする。猫だけに(魔王が)  作者: 山吹弓美


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037.留守の間のご報告

「今回は何も拾ってこなかったぞ!」


 魔王が胸を張っていばるところじゃない、そこは。

 と心の中だけでツッコミを入れてしまうようなセリフを吐いてクロさんは、きっちり十日後に戻ってきた。うむ、たしかに何も増えていないようだ。


「まるで、何か拾ってくるのが恒例になってませんかそれ」

「といっても、前回? その時は私が拾われてきたわけだし」

「うっ」


 お迎えの担当となったミカさんが思わず突っ込むので、私が一応フォローを入れてみる……あれ、フォローになってなかった? ま、いいか。


「……そ、それで伝書蛇とマタタビが見つかったって?」

「あ、はい」


 リューミさんから報告は受けてるだろうけど、一応私たちからもクロさんに報告する。私がマタタビを見つけた場所を指し示すと、クロさんは思いっきり首をひねった。


「しかし、俺はそんなところにマタタビをしまった覚えはないぞ」

「ですよねえ。あんな中途半端に見えにくいところになんて」

「二重に包まれてて、匂いも微妙だったらしいし」


 いくらクロさんでも、私たちの目からマタタビを隠したいならもっとうまく隠すはずだ。こんなところに置いておかれたのは、奥までしまい込む暇がなかったか、わざと見つけさせようとしたか。

 どちらにしても、それ以外の理由にしても、そのマタタビを置いた人はまあ。


「あの偽メイドだろうねえ」

「でしょうね」

「だな」


 私の推測に、ミカさんもクロさんも頷いてくれた。あ、タカダくんもセンダくんも頷いてる。

 まあ、そうだよねえ。というか彼女、今どうしてるんだろ。多分尋問だか拷問だかの真っ最中だとは思うけどさ。


「偽メイド、リューミやその配下の尋問にも耐えてまだ黙秘してるらしいぞ」

「根性ありますねー」


 えー、まだしゃべってないのか。クロさんが行って帰って来たんだから、もう十五日とかそのくらい経ってるんじゃないの?

 ほんと、根性あるなあ。リューミさんたちの尋問に耐えるなんて……ん?


「ところで、リューミさんとかどういう尋問してるの?」

「今はもふもふお預け地獄とか言ってたが」


 クロさんの出した答えに、私はとてもショックを受けた。

 もふもふお預け地獄。

 クロさんだけじゃなく、このお城にはもふもふな方々や魔物がたくさんいる。猫、犬、羊、鳥、ウサギ、蛇だってタカダくんみたいにふわふわな子がいるわけで。

 きっと、それを目の前に色々出されてお預け、ということなんだろう。もしくはリューミさんがもふもふふわふわしてみせるか。


『まさに、地獄』

「だろ?」


 何か、ミカさんと声がダブってしまった。そうね、ミカさんももふもふは好きだもんね。

 もふもふは正義。……なんだけど、敵は正義ではない、と思う。


「あ、ねえねえ」


 ふと、思い立ったことを口にしてみる。


「ラーナン魔王国の国内をよく知らない者が派遣したのであれば、例えば蛇やドラゴンが平気な者を差し向けてきた可能性がないですか?」

「む」

「……そうか。私にとっても、センダくんは特別ですしね」

「しゃあっ」


 あ、ミカさんにそんな事言われてセンダくん、嬉しそうにゆらゆら揺れてる。でもそうか、この世界って鱗系平気なひと、私が考えてるよりきっと多い、伝書蛇がいるんだから。

 そういうところにクロさんも気づいたのか、瞳孔が開いた。いや、猫の瞳孔だからこう、丸くなったわけだけど。


「では、我が城にいる魔物たちを片っ端から試すとするか」

「逆に苦手が出てきて吐いてくれる、かもしれませんしね」

「そうだな、ミカ」


 ふっふっふ、と笑うクロさんのマズルがぶわっと膨らんでる。ああ、絶対楽しそうだな猫魔王。

 さて、あの偽メイドさんはどこまで保つことやら。好きなものに屈服するか、嫌いなものに屈服するか、さてどっち。


「しゃーあ」


 と、不意にセンダくんが声を上げた。なんかソワソワしてる感じだけど、ミカさんなら分かるんだろうな。


「あの、クロ様。センダくん、あの伝書蛇のことが気になるらしいんですが」

「リューミが保護しているあいつのことか……まあ、毛のないタイプはこのへんだと珍しいしな」


 ああ、あの緑色の伝書蛇のこと。そっか、センダくん心配してるんだ。優しい子だなあ、と思う。

 対してタカダくんは……ああ、会ってないせいか平然としてるな。自分の翼噛んでるけど、もしかして羽繕いとかいう?

 タカダくんはマイペースにやってるからいいとして、センダくんに対してはクロさんが言ってくれた。


「大丈夫だ。寒くないように考えているそうだぞ、リューミが」

「しゃ?」

「蛇もおとなしくしているらしい。時間を作るから、会いに行ってやったらどうだ」


 おお、そうなるか。いや、たしかに心配してるんなら会いに行くのが一番だろうね。預かってるのはリューミさんだから、何かあっても多分大丈夫だろうし。


「いいんですか?」

「センダくんが気にしているんだろ? 会わせてやれば、少しは気が済むかもしれんしな」

「ありがとうございます」

「一応、他の者も連れて行くようにな。保護しているのがリューミだから大丈夫だとは思うが、お前たちに何かあっても俺は悲しい」


 クロさんも同じことを考えてたみたいだ。でも、他に誰か連れて行くってのがすぐに出てくるのはさすがというか。

 ……そうか、あの子どうしてるんだろ。私も会ってみたいな。


「あ、じゃあ私、行こうか?」

「いいんですか?」

「まあ、私もあの子気になってたし。いいよね? クロさん」

「ま、よかろ」


 だから立候補したら、クロさんは頷いてくれた。ホントなら別の種族とかがいいのかもしれないけど、私も会いたいし。


「リューミには俺から言っておくが、いつ行く?」

「明日オフですから、早速行きたいんですけどいいですか?」

「ん、昼過ぎなら大丈夫だと思うぞ。タカダくん」

「しゃーい」

「今言ったことをまとめるから、それ持ってリューミのところに行ってくれ」

「しゃ!」


 そんな感じで、さくさくと手配は進んだ。こういうところ、クロさんは決断が早くて助かる。

 でも、それで疲れてマタタビに走ったのなら、ちょっとはお休みさせてあげないとなあ。

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