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魔王は勇者を猫可愛がりする。猫だけに(魔王が)  作者: 山吹弓美


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032.のんびりプライベート

 まあ、なんだかんだ言っても今の私たちにできること、といえば。


「うー、にゃー……」

「うん、いい感じにブラッシングしやすいですね」

「クロさんの開きって感じだねー」


 プライベートでくつろいでるクロさんのお相手、である。具体的には、ただいま腹のブラッシング中。

 普通の猫だと背中の方を主にやるんだけど、クロさんの場合猫とは言っても直立してるからねえ。人に見せるとしたら腹のほうが多いわけで、そっちの毛並みのほうが本人としても気になるらしい。

 結果、ベッドの上に大の字になった猫魔王の腹を私とミカさんでブラッシングしてるわけだ。あ、ベルト当たるところこんがらがってる。丁寧にやらないと。


「長毛種だから、お手入れ大変なんですよね。このへんは寒いからいいんですけど、外交とかで暑い場所に向かわれるときはカットしないといけませんし」

「あ、そうか。やっぱ暑いよね、このままだと」

「俺も暑いけど、見る方も暑いんだよな」

「なるほど。確かにこの毛皮見たらくっそ暑いわ」


 クロさんは王様だから、仲のいい国に行くこともある、らしい。餅の国には行かないんだろうな、きっと。

 で、行き先が暑かったら大変だもんねえ。さすがに、見た目に暑いからって全部剃ってしまうわけにもいかないし。帰ってきたら寒いもんね。


「寒いところで生きてるんだから、これは必要不可欠なんだけどなあ」


 うにょーん、と寝たままで背伸びしながらクロさんが言う。ちょうどいいから脇もブラシかけておこう、人間と違って脇毛が特化してるわけじゃないけどさ。


「だから、タカダくんも毛が生えてるんですよね。私のセンダくんは、祖国から連れてきた子なんで違うんですけど」


 あ、そうなんだ。そういえばタカダくん、蛇なのに毛が生えてて、翼も生えてて……これはセンダくんもそうか。

 でも、センダくんは毛が生えてなくて、普通の蛇の背中に可愛い翼が生えてるんだよね。どうやら、こっちのほうが本来の姿みたい。タカダくんは寒冷地仕様ってことかあ。


「それで、服着せてるんだ。寒いんだよね?」

「しゃあ」

「そうですね」


 センダくんは全身を使う勢いで大きく頷いて、それに同調するようにミカさんも頷いた。そりゃ蛇でも寒いわ。……あれ、蛇って冬眠するもんじゃないの? この世界だと違うのかな。ま、お城の中は暖かいけど。


「伝書蛇は冬眠はしないんだけど、さすがにあまり外には出さないです」

「この前は、しょうがない話だったからな。すまんな、手数をかけて」

「しゃっしゃっしゃ!」


 ああ、冬眠しないんだ。それもそっか、お手紙運ぶ役割の動物が冬眠したら、冬はお手紙出せないことになるもんなあ。あとセンダくん、仮にも王様相手に『そうだよたいへんだったんだよ』って感じで息吐くのは程々にしようね?


「……そうだな。お礼として、タカダくんと一緒に俺の腹の上で昼寝することを許す」


 そして王様もそれに答えるとか。というか、その言い方って。


「クロさんが仰向けになって昼寝する前提だよね、それ」

「ま、せっかくですから国王陛下のお腹の上を使わせてもらいましょうね。センダくん」

「しゃあ!」

「しゃー」


 まあ、いきなり餅の国が攻め込んできたーとか他所の国の王様がやってきたー、みたいな重要な話が舞い込んで来ない限り何の問題もないか。

 ミカさんの声とともにセンダくんと、枕の上でとぐろ巻いてたタカダくんがぱたぱた飛んできてクロさんのお腹の上にふわりと降りた。そのあたりはブラッシング済みだから、ゆっくりすればいいよ。

 ……その後、手足のブラッシングもしてたらクロさん、すっかり爆睡モードに入ってしまった。うんまあ、気持ちよかったんだなあ。そりゃいいことだ。


「うにゃー……すー……」

「しゅー……」

「……しゅう……」


 お腹の上で、伝書蛇二匹も中途半端なとぐろで寝ている。しゅーしゅー言うのがいびきのようで、聞き慣れればなんてことはない。

 で、私とミカさんはブラッシング道具を片付けてお茶で一服……ふう、ひと目を気にせずのんびりできるって最高。何しろ、国王陛下のプライベートルームだし。

 ……ああ、そういえばそうだよね。


「よく忘れるんだけど、クロさんって国王で魔王だよね?」

「お世話係は皆そう言いますよ。表に出ると違うんですけどね」

「表の顔があるだけマシかあ」


 ミカさんは、国王をやってるクロさんの姿も知ってるらしい。私は基本的に、この大猫スタイルくらいしか知らないんだけどね。

 でも、表向きちゃんと国王、そして魔王をやってるんなら特に問題はないよね? あ、魔王を倒せなんて敵が出てくる場合はともかくとして。


「まあ、そういう切り替えがあるから私たち、必要なんだろうなあ」

「そうですね。オフの時間を、クロ様にはゆっくり過ごしていただきたいですし」

「私たち、年がら年中ゆっくり過ごしてない?」

「刺客が来なければ、こんなものですよ」


 お茶を飲みながら、ミカさんは笑う。そうだ、私たちはクロさんのこのぐーたら猫っぷりを守るためにいるんだよねえ。

 いや、正直私たちがいたところで守ってあげられるかどうか分からないけど、さ。

 まあ、リューミさんたちが来るまで時間は稼げるか。ねえ?

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