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魔王は勇者を猫可愛がりする。猫だけに(魔王が)  作者: 山吹弓美


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028.現実的にどうなのか

「な、なるほど。そういうことがあったのか……済まぬ」

「あとは、リューミ様が色々してくださるはずですのでそちらの報告を待つとしましょう」


 とりあえずクロさんには掃除の終わったソファに座ってもらって、この部屋であったことをざっと説明した。ハナコさんが。

 私もちょくちょく、横から口挟んだけどね。偽うさ耳の一件とか、いろいろあるし。


「……で、クロさん」

「はい」


 なんか、説明してる間にクロさん、膝の上にちょこんと両手を揃えてた。……猫の膝ってどこだっけ、まあいいや。


「クロ様。説明していただけますね?」

「は、はい」


 座ってるクロさんと視線の高さを合わせて、ハナコさんがにっこり笑った。あ、でも目の奥が笑ってない。なんというか、嫌だと言ったら腹に足の裏が食い込む気がする。そうでなくても、クロさんは首を横に振れないと思うけどね。


「うんまあ、疲れてたのは事実なんだよな。アキラの一件からこっち、モイチノ王国の動きが活発になってきててなあ」

「なら、医師に頼めばよろしいではないですか」

「それがな。あのメイドが頼んでくる、って言ってくれてな」


 ああ、一応お医者さんに頼もうとは思ってたんだ。その前に偽メイドさんが絡んできたのが問題で。


「それで持ってきたのがあれ、と」

「まあ、クロ様がすべての人員の顔と名前を覚えられるわけはありませんからね」

「一緒に来たメイドさんも、気づかなかったもんね」


 このお城、国王の自宅兼政治の中枢兼裁判所なり何なり、いろいろ集まってるらしいのよね。それだけ働いてる人も多いわけで、全員をクロさんが知ってるわけじゃない。リューミさんや裁判官さんとか、それぞれの部署を統括してる人が働いてる人を取りまとめてるけど……どうしても、漏れは出てくる。顔認証とかないもんなあ、この世界。

 ん、認証といえば……ハナコさんもクロさんも、私より鼻いいよね確か。


「クロさんなら、匂いで気づきそうなもんなんだけど。どうだったの?」

「いや、普通にウサギ種族の匂いだったからなあ」

「そっか」


 匂いまでうまくごまかされたら、気づかないか。ふーむ……あれ。


「つけてたうさ耳、種族の毛皮から作ったみたいなこと言ってたよね。リューミさん」

「おっしゃってましたね」


 ハナコさんと、顔を見合わせる。改めて、その言葉の意味合いを考え直す。いや、あんまり考えたくないんだけどね。

 だって、毛皮ってさ。


「毛皮から作った、ということは剥いだということだ。つまり、犠牲者が存在する」


 そう、はっきり言ったのは私でもハナコさんでもなく、クロさんだった。きっと、一番現実の辛いところを見てるひと。魔王様なのに。

 猫の目、瞳孔がきゅっと細くなる。ふむ、とひとつ息をついて、クロさんは言葉を続けた。


「死骸から剥いだ可能性もあるが、少なくとも我がラーナン魔王国にそのような種族は存在しないはずだ。他の国でも、そういった行為は禁止もしくは自粛されている。病を広げる可能性もあるからな」


 病気で死んだひとの身体をむやみに触ると、病気が伝染るかもしれないってことね。

 この世界の医療ってのは魔法や薬草に頼ることが多いらしくて、それで治らない病気のひとはあまり多くないお医者さんに見せる。場合によっては……他所の国に移送することになるかもしれない、ってハナコさんが言ってたことがあるんだ。


「にもかかわらずそんなことをやるなんて連中は、黒の過激派かモイチノ王国くらいしか俺には思いつかん」

「そうなると、モイチノですかね。黒の神の過激派は、最近おとなしいですから」


 それで結局餅の国が出てくるのかよ! ああもう、思わず全力で突っ込みそうになったよ。

 どこまで意地悪をしてくるんだ、あの国は。いい加減潰れてくれないかなあ、できれば自滅で。

 イコンの人たちとは違う、過激派連中は今の所、動いてないのか……あ。


「……両方で手を組んだりしてない?」


 ふと、そんな言葉が口をついて出た。途端、クロさんとハナコさんがこっちを見る。しばらくしんとした後、先に答えてくれたのはクロさんの方。


「一部ではそういう噂も出ているな。裏が取れていないんだが」

「この国は太陽神様を信仰しておりますからね。黒の過激派もモイチノ王国も、敵ではありましょう」

「もうちょっとしっかり調べてもらうか……リューミなら、既に動いてそうだが」

「……あるかもしれないのか」


 なんというか、めんどくさい状況になってないか? とはいえ、そういう状況があり得るなら調べてもらったほうがいいし。

 ついでに、敵をまとめて倒せるかもしれない状況だしね。


「とりあえず、アキラ」

「はい?」


 いきなり、クロさんにがしっと両肩を掴まれた。爪出さないようにしてるみたいで、肉球もふもふが大変に心地いい。


「お前は何があっても、この国で守ってやるからなあ?」

「……あ、ありがとう」


 突然何を言うんだと思ったんだけど、考えてみたら私がこの世界に連れてこられたのは餅の国のせいで、クロさんに保護されるまでは結構シャレにならない状況だったのを思い出した。そうだそうだ、私はクロさんに保護してもらったんだよな。

 それで守ってくれるんなら、とってもありがたい。


「守られるからそのかわり、肉球触らせて」

「にゃ?」

「あと、今度ブラッシングもさせてね! 全身、腹もしっぽも!」

「お、おうかまわんぞ」


 うん、つい欲望が口をついて出てしまった。いやだっていいじゃないの、私はクロさんのお世話係だもん。ブラッシングはお世話の一環だと思うんだ。肉球はともかくさ。


「あたしはできないから、頑張ってねー」


 ハナコさんに能天気に応援されるのも、まあ悪くはないね。うん。

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