018.ご近所さんと仲がいい
ふっかふかのお布団、毛布に包まれてとっても良い心地。あーもう、起きたくない、眠い。
ふとん、ふとん……あ、ふとんがうごいた。
「うにゃ?」
いやいやちょっと待て私、布団が動いてどうする。
と言うか、今まで何してたっけ……あ。
「うわわわわ! 寝落ちしてたあ!?」
「んぁ?」
慌てて跳ね起きると、私の横で毛皮に顔突っ込んでたミカさんがのそりと起き上がった。やべえ、国王の腹布団で寝てたのかよ私たち。不敬とか言われても仕方なくね?
「ははは、やっぱり人間には評判だなー」
当の国王にして魔王様は、顔見たら目を細めた上機嫌の笑顔だった。うう、猫の姿でその笑顔は反則だこんちくしょう。後、このサイズの猫腹もな。
しかしそれはそれとして、お世話係が世話する相手の腹で寝落ちなんて洒落にもならないので謝ろう。ほらミカさん、一緒に。
「ご、ごめん! 一応護衛も兼ねてるんだよね私たち!」
「気にするな。昼間は人も多いし、実はちゃんと忍びだっているんだぞ」
ミカさんは横で大あくび……謝れよおーい、とか思ってる私の頭に特大肉球がぽむっと乗せられる。ソファの上に起き上がってるクロさんが、頭をなでてくれているんだよなあ。
……というか、忍び。
「あ、やっぱりいるんだ」
「そりゃいますよ。私たちはある意味、最後の砦みたいなもんですから」
「俺も爆睡してたから、おあいこだ」
ミカさんが謝らないってことは、これはいつものことらしい。あとクロさんまで寝てたってことは、全部その忍びさんたちとかに丸投げしてたってことか、クロさんの警護。うわあごめんなさい、どこに向かって謝ればいいのやら。
「特にアキラは武術の練習してるんだろ? ちゃんと休めよ」
「は、はーい……どっから聞きました?」
「あのな、俺この城のトップ。だから、どこからでも聞けるぞ」
そのとおりでございます申し訳ない。ぱったん、と一つ揺れた長いしっぽがちょっと不機嫌そうで、まずったかなと思った。
どこがまずったのかは、自分でもわからない……ごめん。
と、ミカさんが空気を変える意味でなのか私に質問を投げてきた。
「アキラさんだと、多分基礎からですよね。進んでます?」
「えーと。体幹? あれがちょっとずつ安定してきたみたいです」
「ほんと、基礎の基礎からですよね。大丈夫、すぐ先進めますから」
「先生もそう言ってるんですけど、難しいですねー」
ふふふ、なかなか先に進まないよう。実はミカさんも同じ先生に武術とか教わってるそうなんで、地味に彼女と比較されてんだよね。あ、基礎から始めた頃の彼女との比較だからまだいいんだけど。体幹、意外にしっかりしてるって言われたしね。
「そう言えば、誰に習ってるんだ?」
ぴるんと耳とひげを震わせたクロさんに、尋ねられた。あ、そこまでは話聞いてないんだ。
「カサイ・カレンさんって言う人です。魔法使いの家柄なのに肉体派ー、って言ってましたねえ」
「あー、カサイの異端児な。あやつの訓練なら問題ないだろ、頑張れよ」
「ありがとー」
おう、魔王様からOKが出た。良かったよかった。
細マッチョ、と言っていい感じのかっこいいお姉さんただし年齢不詳、というカレンさんは、魔法も使えるけど拳こそ最強、らしい。既にわけわからんけど、とにかく強い上に教え方がうまいと思う。
「カサイの家系もシロガネ国由来なんですよね、クロ様」
「あ、そうなの?」
「ああ。そもそも建国王の懐刀としてシロガネ建国に貢献した魔法使いの家系、なのだな」
「へえ」
あ、また出てきた、シロガネ国。よく出てくるけど、この国とは交流があるだけではないのかな。ふむ。
ミカさんはそこの王家の血筋だからともかく、クロさんも国の名前口にするの嫌じゃないみたいだな。もともと、クロさんの国とは交流あるって言ってたけど、結構仲いいんじゃないのかな?
「意外と仲いいんだ?」
「行き来がしやすいということもあるんだが、俺の先祖であるビャッコ様が建国王に世話になったこともあるからなあ」
「なるほど」
そっか、クロさんのご先祖様がお世話になった国なのか。そりゃ、あんまり嫌いになれないよねえ。でも、その後も特に問題とか起きなかったから、今でも交流してるんだろうしミカさんみたいな国の関係者も受け入れてるんだろう。
「シロガネ国はイコンとも交流があってな。仲がいいと言うなら、そういったこともあるだろう」
「あれ、そうなんだ」
国々の関係って、いろいろあるんだねえ。
イコンの人たちは黒の神とやらの穏健派信者さんたちだから、シロガネ国が普通に受け入れててもおかしくはないわけか。自分の国に迷惑かけられなければ問題ない、クロさんと同じ考え。
そして、餅の国とはきっと、相容れない。だからこそクロさんのこの国と、シロガネ国は仲良くやっていってるんだろう。
……いい国がご近所で良かったね、クロさん。




