014.二日目にして分かったこと
「アキラさまーあ、おっはようございまーす!」
「んおあっ」
わおーん、という遠吠えのノリで名前を呼ばれて目が覚めた。くそう、今日の担当はベルミさんか。ドーコさんならもうちょっと優しく起こしてくれるんだけど。
「お、おはよう」
「起きましたねー。昨夜はよく休めましたかー?」
「あーうん、もうぐっすり」
「それは良かったですー」
にこにこ笑いながらベルミさんが、お湯の入ったたらいを乗せたワゴンを固定してくれる。ベッドから起き上がったところで顔洗うなんて経験、こんなところでもなきゃできないわー。
……しかし私、昨夜いつ寝たっけ。部屋に戻ってきて、ドーコさんが用意してくれた晩御飯食べたのは覚えてるんだけど……あれー?
「お姉ちゃんが、デザート食べたところで力尽きたからベッドに放り込んだよって言ってましたよー」
「マジかー。ドーコさんには迷惑かけたかな」
「だいじょぶー。そういうとこまできちんと面倒見るのがメイドですしー」
「……そか。でもごめんねって伝えておいて」
「わっかりましたー」
ははは、ベルミさんが明るく言ってくれるのが救いだわ。しかし、お姉さんと同じくドーベルマン系なのに行動パターンが柴とかそっちっぽいってのは気のせいかな? やたら人懐こい感じでしっぽぶんぶんぶん、だし。
「ていうか。自分としては疲れてるとは思わなかったんだけど、あんなによく眠れるとは思わなかった」
「だってアキラ様、クロ様やあたしたち以外の者と顔を合わせたんですよー。多分、無意識の内に緊張してたんじゃないですかー」
「あー、それはあるかも。カサノさんやユーアさんとも会ったし」
そうか、言われてそうだったのかと気がつく。緊張してたのか、私。
まあ、ミカさんや伝書蛇たちはともかく関西弁の吸血鬼と熊さんはなあ。
「夜当番のひとたちですねー。他にもいますから、しばらくそんな感じだと思いますよー」
「ああ、毎日じゃないんだね」
「入って五日間は一応続けてやることになってますけど、その後はシフト組まれますよー。クロ様だって、一応五日に一日はお休みありますしー」
「あるの!?」
「毎日やると飽きてふて寝しちゃうそうですー。かーわいい!」
配下はともかく、王様自身にもお休みちゃんとあるんだ。しかも理由が飽きてふて寝するから……うん、毎日会議だ書類だやってたら絶対飽きるな、あの猫魔王。しかしふて寝モードも一度見てみたい。確かに可愛いだろうし。
……私やミカさんみたいな昼当番は自分で仕事したから分かるけど、夜って何やってるんだろ?
「そう言えば夜当番って、何してるの? 夜まで遊んでるわけじゃないよね、クロさん」
「主にクロ様の寝かしつけしてー、あとは寝ずの番ですねー。国王で魔王なんで、身の危険はそこら辺に転がってるんだそーですう」
「え」
もしかして、身近で警備してるってことか? だから夜行性の種族が入るのか、夜通し起きていられるから。
「じゃあ、私とかミカさんも」
「お昼当番もそうですねー。でも、お昼だと他に使用人さんいますしー、警護はそっちがメインじゃないかなー」
「……ああ。あちこち移動するもんね、クロさん」
「留守の間にお部屋に爆弾とか毒とかー、仕掛けられないように留守番するんですよー」
「うおう」
あ、それで私たちってクロさんの部屋にいっぱなしだったのか。何か変なもん仕掛けられないように……爆弾あるんだ、この世界。確かに仕掛けられたら怖いなあ。
「……そんなお役目に、新参者の私突っ込んで大丈夫なわけ?」
「夜当番の方々に、匂いを嗅がれませんでしたー?」
「あー、がっつり嗅がれた」
うん、ユーアさんやカサノさん、私の匂いしっかり嗅いでたよね。そして、私がまだ体調万全じゃないってこと見抜いて……ん、嗅ぎ抜いて? ともかく、しっかり分かっちゃったというか。
だからそう答えると、ベルミさんは大きく頷いてくれて、説明してくれた。
「それで警戒されてなければ、大丈夫ですよー。あたしも鼻利くけど、アキラ様から危ない匂いしませんでしたしー」
「あぶないにおい?」
「はいー。なんかね、そう言う匂いするんですー」
よく分からないけれど、彼女たちは彼女たちなりの方法で私が危険人物じゃない、と信じてくれたっぽい。
まあ餅の国なんぞに帰る気はないし、だったらこのお城でちゃんと居場所を作らないといけないよね。
よし、がんばろう。
「あ、今日はアキラ様お昼当番二日目でしたよねー。朝ご飯持ってきますねー」
「そっか、先に食べとかないとね」
「当番の時間になったら早めに行くと、クロ様がベッドの中で丸まってることがあるらしいですよー」
……なぬ?
あのでかい猫が、でかい猫用ベッドの中で丸くなって寝ている、とな?
「……そんな面白いものはしっかり見てこないと。すぐ着替えるから、ご飯持ってきて!」
「わっかりましたー!」
ふふふ、そんなものが見られるなんて良い世界だな、ここは!




